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その男、薮の彼方に消ゆ

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2010年 12月 19日

彷徨える冬の魂

バイク屋に向った。歩いて、10キロほど離れた遠くの町まで。


あるとき愛車のカブ(リトル/C50LX)がパンクする。自宅ガレージで修理しようとホイールを外し、ついでにブレーキパッドを見たら、だいぶ減ってる。ならば、ワイヤー替えたりスパイクタイヤに履き替えたり、ひととおりやってしまおうと、馴染みのバイク屋に持ち込むことにした。もう25,000キロも走ってるから、持ち主と同じで相当くたびれてるのだ。バイク屋は遠く、松本市街地の反対側にある。そこでリトルカブをモビリオスパイク(普通車)に積み込み、運ぶ。余談だが、座席を倒したりすれば楽勝で車載できる。載せたらザイルとシュリンゲで数カ所巻いて確保してやれば、走行中に揺れることもない。


とにかくメンテに出したカブを取りに行く。これを、歩いて歩き通してみることにした。


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市街地を歩くのが嫌いな訳ではないが、どうせなら森の小径を歩きたい。自宅から果樹園に沿って森の方へ抜け、城山公園というところに向う小径を選ぶ。ここは晴れていれば西に安曇野と常念山脈を眺められる、いいみちなのだ。





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風がびろびろ鳴るような日。仰げば森の梢には、もう葉がなかった。



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森の急斜面を降りて行くと、国道に出る。しばらく舗装路を歩こう。やがて奈良井川の畔に立つ。風が凄い。



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上高地線の鉄路を跨ぐ。この線路が果てるのが、上高地へのバス乗り継ぎ場でもある新島々の駅。正面に聳えているのは鉢盛山2446.4mではなくて鍋冠山2194m。(たっつー様ご指摘に感謝致します)



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ときおり川べりを歩いたり、住宅地を抜けたり、南へ南へと進んで行くと、立派な欅の立つ小さなお社があった。巨樹の幹の左に顔を出しているのは天狗岩という常念山脈南端近くの山。



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上流に向っているのに、却って川幅が広くなってくるようだ。正面やや右の遠い山並みは、中央アルプス。



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さらに進むと、南アルプスが見えてきた。この日は30ミリの単焦点レンズしか持っていなかったので、ズームはなし。



もういい加減に「タクシーまだー?」とでも言いたくなる頃、バイク屋の看板が見えてくる。見えてくるが、だだっ広い田園地帯を抜けて行かなければならない。ちくしょう、やっぱり車で送ってもらえば良かった。



ぼやきが出たころで、ようやく、到着。



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おや? シャッターが閉まってる。あぁ.............


【定休日】だって。



3時間も歩いて来たから腹ぺこだよ。背中のザック、MILLETのジョリィ22にはヘルメットやグローブが入っていて、あいにくクッカーもトランギアも持ってきてない。とほほ、田んぼ道をてくてく、とぼとぼ戻りながら昼飯のことに思いを巡らせる。あぁ... あっついラーメン... そうだ!狼煙へ行こう。松本駅の前にも美味い豚骨屋の【狼煙】があるのだ。しかし駅まで6-7キロはある。



ぼやき、豚骨への愛、通り過ぎるマクドナルドへの浮気心、後悔、吉野家をスルーして良いものかの迷い、いろんな感情がないまぜになって錯乱状態になった頃、ようやく松本駅に着いた。駅構内を抜け、駅前の繁華街に入り、【狼煙】のドアを開ける。もう午後遅い時刻、誰も居ない。座り、注文し、箸を手にし、なんだかよくわからない一日を振り返る。


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ほんなこつ、うまかー!


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もちろん替え玉はデフォルトで。


さて、自宅まではあと4キロほどあるのだ。歩いて帰ろう。


 ◇◆◇


翌日、バイク屋にはちゃんと電話を入れてから、ふたたび歩く。また10キロを3時間ほどで歩き、メンテの終わったリトルを受け取る。しかし帰りはほれ、ぶいぃん! とね。


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前の日にここをスルーしてしまったことが悔やまれて、悶絶するほど苦しかったのだ。彷徨える冬の魂のおきどころ、それはやはりどんぶりの中しかないのか。



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湯気と鼻息でレンズが曇っていたようだ。

by yabukogi | 2010-12-19 09:34 | 書くまでもないこと


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