人気ブログランキング | 話題のタグを見る

その男、薮の彼方に消ゆ

imalp.exblog.jp
ブログトップ
2010年 01月 03日

唱えよ南無阿弥陀佛

この正月の黒豆は、地元の【信濃黒】という品種を炊いたものをいただいた。

黒豆を煮るのに、古釘を用いる。化学式では理解できていないが、酸化第二鉄か何かが豆のタンニン成分とどうにかなって、豆が黒く艶やかに煮上がるからだと聞いた。数日前。暮れも押し詰まって、一昼夜水に浸けた豆を火にかけてから、あわてふためいて古釘を探しまわる。マンション暮らしでは、ふつう釘を使わない。やむなく近所に貰いにいこうと着替えはじめたら、汚れたビニルにくるまっている錆びたハーケンを見つけた。亡くなった僕の親父のものである。息子の大豆が、砂遊び用に欲しいと言うので与えておいたのだ。このハーケン、どこの山で使ったのかは今となっては伺い知れぬが、リスに打ち込んだあとで引き抜いたと思われる跡が数条、そこから広がったものか、鉄の木の葉は見事に錆びていた。それをさらに、大豆が砂遊びに使ったものだから錆びはアゴからリングにまでまわり、それこそ真っ赤っかだったのだ。


ハーケンで炊いた黒豆は、僕のはらわたよりもくろぐろと光沢を放っていて、かざしてみるとジャンダルムのようだ。ちと大げさか。とにかく、そんなぬるやかな三が日が終わろうとしている。お世話になった皆さま、本年もよろしくお願い申し上げます。


我が家、家族そろっての初詣は、安曇野のさるお宮と決まっていた。それこそ数十万人が訪れるような由緒あるお宮である。嶺宮(みねみや)は、上高地の正面の岳沢を登り詰めた吊り尾根を西に進んだ高いお山のてっぺんにある。このお宮、信州の真ん中あたりにありながら船にまつわる神事や祭が知られており、船という交通手段から転化して、乗り物すなわちクルマの安全を祈願する。だから僕も、そうしていた。しかし、これは決して大きな声ではいえないことだが、僕は昨年交通事故にあっており、崇敬者としてはご利益のほどを判じかねていた。うむむむ。神様の軽重を「効き目」で測るような気がしてならんのだが、今年はお寺にしよう。



唱えよ南無阿弥陀佛_c0220374_19461773.jpg

そんなこんなで、善光寺さんへ詣でることになった。僕はお宮では、神事の際も柏手を打つ際も所作を心得ているのだが、お寺はさっぱりわからない。とりあえず、いや、とにもかくにも南無阿弥陀佛、南無阿弥陀佛と繰り返して、境内を後にするのであった。平成二十二年。これが吉と出るか凶と出るか。いまから雲行きは怪しいのである。



唱えよ南無阿弥陀佛_c0220374_19555852.jpg







...おまけ。

今朝、2010年1月4日の槍初め。この三が日、山脈を隠していた雲が消えると、常念岳に槍ヶ岳(左奥の鞍部にちょこんと)。

唱えよ南無阿弥陀佛_c0220374_831922.jpg



ちょいと北の方に眼をやると...
唱えよ南無阿弥陀佛_c0220374_834719.jpg

餓鬼岳も真っ白(トリミング)。もやがかってるのか、不鮮明で申し訳なし。



唱えよ南無阿弥陀佛_c0220374_845344.jpg

常念山脈に残る月。中央は黒沢山、右奥の稜線は大滝山南側のスカイライン。お山は標高800mぐらいから雪だらけである。

by yabukogi | 2010-01-03 19:07 | 書くまでもないこと


<< お山に雪、里も雪      書くことが何も無い >>