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その男、薮の彼方に消ゆ

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2013年 07月 22日

稜線に蒲焼きの香る夜


みなさん、お元気ですか。


もうみなぎってらっしゃるご様子、伝わってくるようです。
ええ、土用丑の日にはたっぷりとニホンウナギを召し上がって、それもひと切れふた切れとかみみっちいことおっしゃらず、まるまる一尾、お愉しみになったんでしょうなあ。



え?
二重載せ三重乗せ?

....都市伝説かと思ってましたよ。




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僕のところでは、一応は国産表示の小さいやつを一尾。
これで家族五人で分かち合いました。
正確には豆どもふたり(大豆10歳小豆7歳)の兄妹で貪り尽くした感が否めませんが。



家人とばぁ様に喰われてしまうと、大切な豆どもの取り分が減ってしまいます。
そこで僕は、秘策を温めておりましたので、これを実践することにしたのです。



ふっふっふ。
北アの小屋番時代に教えられた、驚愕の秘策ですよ。
いまからこれを、ご紹介してしまいましょう。




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ニホンウナギで国産表示のあるものを購入すると、小振りなもので1,980円とか2,480円とか、その辺のラインかと思います。ですから素直に、ひと袋4本入り100円の【ちくわ】を購入する訳ですよ。その時に鰻の蒲焼きのタレも、山椒の粉もお忘れなきように。

この竹輪をですね、開くんです。



そして、酒をふりかけて小麦粉をまぶしておくんです。
もちろん溶き玉子にくぐらせて粉を着ければモアベターですよ。
これ、重要。



ふっふっふ。
裏側、白い方には松かさ状の切り込みを入れておきます。
切り裂かない程度に細かく細かく。これも重要。


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焼くんですわ。
カツレツを作る時の揚げるような焼くような感じです。
油はサラダ油ですが、ラードがあれば少し混入してください。
偽装がより確かなものになります。これも重要。



さて、焼き目が着きましたか?
なるべく均一に、箸で押し付けて。


ふっふっふ。ここで蒲焼きのタレですよ。

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しっかりと馴染ませてください。焼きながらですよ。
ただ、焼き過ぎると硬くなってパサパサします。
タレを絡めるぐらい、がちょうど良い。


このタイミングで、キッチンとダイニングルームには激しい動揺が起きるはずです。
まさかのウナギキターーーー!的な。


手際よく、ささっと焼くんです。
タレを絡ませ、染み込ませて。時にはラードを少し足したり。


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ほうら。



え?
セレブな我が家ではこんなもの喰わない?



すいません。おいら、しがない職人なもので。

しかしアレですよ、皆さんのお屋敷の明るいダイニングルームではバレバレかも知れませんが、ヘッデンひとつで飯を喰らうお山のテン場では、絶対ばれませんって。おまけにだいぶ飲んでからでしょう。

竹輪って、保証はできませんけど半日−1日ぐらいは常温携行可能なんです。冷凍して行っても良いし。んでテン場で飲んでて、そろそろ飯でも炊くか、ってタイミングを見計らって、これやるんです。で、タレの匂い振りまいて粉山椒とか振り掛けちゃうと、もうみんな「ウナギモード」に入っちゃうんですよ。

あなたヒーローですよ。
人数分、竹輪持って行けば良い。4人パーティーだって、100円ですよ。



みなさんの夏山。蒲焼きの香りに包まれて、素晴らしいものになりますように。






偽装は上手くいったか?
いえすぐにバレました。反省してます。

# by yabukogi | 2013-07-22 00:00 | 喰い物のこと
2013年 07月 20日

峠の一夜

夏の一夜を、峠で過ごした。

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あの山の裏側にある、小さな峠に向う。そこで眠るために、僕は荷物を担いで信州まつもとを離れたのだ。





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僕を乗せた列車は、歌の文句とは違って信州から甲州路へと走る。



甲府駅では、しばらく会えずにいた友が迎えてくれた。そして可愛らしいお嬢さんも。芦安でバスに乗り換え、揺られ揺られ久々の広河原。さらに、違うバスで北沢峠へ。

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あの年、冬の小梨平で酌み交わして以来。まずは乾杯。




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すぐる年、残雪の八ヶ岳以来の乾杯。そして乾杯。また乾杯。





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晩ご飯はうどん。お揚げが乗ってるのは、松本の美味い豆腐や【田内屋】さんの筑摩揚げというものを炊いたもの。



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メインディッシュは、途中のコンビニで調達した絹豆腐。



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夜の帳(とばり)が降りて、尽きぬ話を無理矢理切り上げてテントに潜り込む。みんなグッナイ。






朝。
稜線へ、山頂へと向う仲間を見送って、僕はテントをたたんだ。装備をまとめ、山を後にする。

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またバスに揺られ、バスを乗り換え、長い時間を狭い座席で過ごし甲府駅へ。



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遠ざかっていく南アルプスの山並みを肴に、ちび、ちび。



諏訪を過ぎて松本平に入れば、今度は北アの山々に出迎えられて、ウイスキーを飲み干す。
山の神さま、ありがとう。
山の仲間に、ありがとう。




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家に帰って洗濯しながら、庭の菜園から季節の恵みを頂く。
季節の恵みと言えば、そうだ、梅を干し上げねば。



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あれ。

  あ れ れ 。

何故か、このビジュアルが......

いや、去年の梅干づくりとかそういう引っかかり方じゃない。もっと直近、昨日今日の出来事と関わってる。奇妙な既視感に捕われながら、僕は数秒で凍り付いた。










 け、今朝の、峠のテント場....






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完全に一致。

# by yabukogi | 2013-07-20 13:44 | ぶらぶらと歩くこと
2013年 07月 14日

らっきょうの歌を聴け



その男、らっきょうが好きである。

椎名誠さんのものがたりに「ねぎ臭い男」というのが出てくる。文字通りねぎ臭い息を吐きながら、はぁはぁ言っている気持ち悪い男なのだろう。その男、実在モデルか? 

そう思えるほどに、葱の仲間のものを好む。行者にんにく、にんにく、ねんぼろ(のびる)、にら、新玉葱.....
ようするに、ねぎ臭い男なのだ。葱坊主みたいなくだらない男なのだ。

しかし、その男、売り場でらっきょうのパッケージを前に、硬直している。ほとんどが中国産なのだ。喰える訳が無い。できることなら「チャイナ・フリー」であり続けたい。チャイナ・フリーとは、赤い帝国・中共で生産されたものとは無縁で暮らす、という意味である。粉ミルクにメラミンを混ぜ込む国である。そんな国で作られた食品が、喰える訳が無い。


やむなし。手ずから漬け込むしか道は無い。





こうして、その男、国産(鳥取産)の泥付生らっきょうを手に入れ、漬け込むことにした。毒も共産主義も中華思想も入り込まない、美しくピュアならっきょうを目指して....



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粒の大きなものを選んだ。巧く漬かるのか。



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球根の上下をカット。そして泥や余分な皮を取り去る。べとべとした汁が流れてくるので、塩をまぶして一晩放置する。




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漬け込むらっきょう酢に、問題があるのだ。市販の、あんな甘くてべたべたの汁では、喰えたものではない。これがあまりに不味いので、砂糖を抑え、もっとさっぱりと漬け込もう。酢を選び、たかのつめを加え煮立てる。酢の半分は生のまま、昆布を加えて使おう。




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塩漬が足りないような気がしたが、水気を絞って自作の漬け酢に浸す。一週間後の味見では明らかに塩分不足を感じたが、しばらくこのまま様子を見ることにしよう。

# by yabukogi | 2013-07-14 20:15 | 喰い物のこと
2013年 07月 06日

梅仕事、続編

一週間前に仕込んだ和歌山県産南高梅は、24時間を待たずに梅酢を上げてくれた。一番てっぺんの梅が梅酢に浸された瞬間、カビ発生のリスクは大幅に低減される。ここまでくれば梅干づくりは半分成功、あとは土用干しまで瓶の中に寝かせ、お陽さまを選んで干し上げてやるだけ。

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僕はすっかり調子に乗ってしまって、さらに梅を漬け込むことにした。

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近所の八百屋で求めたのは、群馬産の10kg。安いだけあって、痛んだものもあり、1kgはロスとなった。梅ジャムに挑戦してみようか?



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小さな傷があるものが上段の方に漬け込まれると、梅酢が上がるまでのわずかな時間、空気に触れてしまう。これがカビを発生させる原因になるだろうと、難ありのものから下の方に並べていく。こうすれば、数時間以内に梅酢の中に浸され、カビから逃れられると思ったからだ。




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丁寧にていねいに、すき間無く並べながら詰め込んでいく。体積を節約すれば、それだけ早く、梅酢に沈むことができるのだ。塩分量16%。吉と出るか凶と出るか。





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樽を台所の隅に設置。重しには、2.7Lの水を4本、1.8Lを1本、その上に4.5kgの漬物石。合計17.1kg。これなら明日には梅酢が上がるだろう。

しかし、すこし前に「ウイスキーをペットボトルで買うんだ」とカミングアウトして恥をかいたのだけれど、ペットボトルでなければならない理由に、こんな合理的な要素があったなどと、誰が想像し得ただろう。僕に死角は無い。

# by yabukogi | 2013-07-06 16:42 | 喰い物のこと
2013年 06月 30日

梅仕事、2013

梅雨、と書いて「鬱陶しい」と読むのだろう。


けれど、こんな手づくりの季節と思えば、降りけむる雨も嫌じゃない。


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今年は少し、奮発した。例年、キロ400〜500円ぐらいの「白加賀」あたりで漬け込むことが多いのだけれど、今年はやわらかな果肉を楽しめる「南高梅」の4Lと2Lを求める。




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4Lサイズを漬け込むのは初めて。立派なものだ。




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ほら。プラムとかそんな感じ。




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「づく」の要る仕事は、豆ども(こどもたち)に委ねる。嫌がらず、毎年ちゃんとやってくれる。もちろん、爪を切らせて手を洗わせて。ご褒美に、明日は父親から何か買って貰うのだ。

づく、とは信州のことば(概念)で、やる気や根気に近い意味を成す。やる気と言っても瞬発力的な行動開始の意思ではなく、こつこつと地道な作業を続ける(取りかかる)モチベーションを意味する言葉だ。庭に繁茂する雑草を放置していると「なにをづく無しこいてるだ? あ?」と言われるように。




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2Lサイズの梅を、仕込み完了。仕込みとは、素材となる完熟梅を流水で洗ってさらに拭き取り、これを焼酎(ホワイトリカー)で濡らして塩をまぶす作業。こいつを瓶に密閉して「梅酢」が出るまで待つ。梅酢が出てくればしばらく寝かせ、あとは土用の頃に炎天に晒す。太陽の無慈悲なまでの熱と紫外線に肌を焼かれ水気を絞られ、また梅酢に浸して寝かせる。こうして味わいまろやかになった夏の終わりに、梅干として完成する。

途中、カビの発生が懸念される。これが出ると日光消毒とか面倒くさいらしいが、僕はさいわい、これまでにカビにやられたことがない。




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4Lサイズのスペシャルな梅も仕込み完了。塩で真っ白だけど、これで16%。




2、3日のうちに梅酢が滲出すればカビの心配は無い。言い換えれば、梅酢の中ではどんな細菌も生きられないのだ。さて、これから梅たちは梅漬けから「梅干」へと成長を遂げるだろう。そのいきさつはまた、ご報告しよう。



三年前の梅干づくりの様子を記事にしていた。こんな感じ
>>炎天に干し上げろ

>>僕には梅干がある


# by yabukogi | 2013-06-30 02:19 | 喰い物のこと