その男、薮の彼方に消ゆ

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2010年 12月 13日

稲核菜を漬ける

奥多摩のグリズリーとか南アのイエィティとか、それはもう恐ろしげな呼ばれ方をしてるけれど、根は優しくて大飯喰らいの工場長さんの好物に、稲核菜の漬け物がある。稲核菜は「いねこきな」と読み、梓川のすこし上の方にある稲核集落の地名で呼ばれている。松本盆地から上高地に向う道が山間部に入って、梓川にそってぐねぐねしはじめるあたりだ。

この稲核菜、もともと松本盆地周辺では広く栽培されていたらしく、うちのバア様も「むかしはこればかりだった」と感慨深い。というのも、いつの頃か稲核菜よりも柔らかく(筋っぽさの少ない)野沢菜が北信濃から広まり、そして流行り始めた。食べやすく美味だというので、どこの畑でもみんな野沢菜を播くようにになったそうだ。いわば野沢菜に駆逐された観のある稲核菜、信州の伝統野菜のひとつとして保存に努める農家もあると聞く。稲核集落自体が標高の高い山間地なのだが、さらに山の上の畑に稲核菜を播くのだとか。野沢菜その他アブラナ科の別種と交配してしまうのを避けるためという。



冬の気配がいよいよ厳しくなってくると、僕の遺伝子に残されている漁労採集生活の記憶だろうか、保存食を仕込んだりする「づく」が出始める。ある日、梓川の畔の友人の農地で収穫された稲核菜をたんまり頂いてきた。さっそく漬け込む。

昨今は漬け物と言えば浅漬けが多いようだけど、この菜は古漬けにしなくてはいけない。ごりごりと筋のある独特の歯ごたえに加え希少極上の風味を愉しめるからだ。そう、古漬けであるからには数ヶ月を乳酸菌がはびこる漬け汁に眠って完成させる。この間に発酵から生じた酸味と旨味をまとった、これぞ漬け物、冬の信州ならではの味わいである。




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稲核菜は、野沢菜よりやや背が低い。根は肥大し赤紫色のカブとなる。

>> ふふ、美味い漬け物の話さ...
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by yabukogi | 2010-12-13 16:00 | 喰い物のこと