その男、薮の彼方に消ゆ

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2013年 04月 13日

たらの芽の春

水上勉さんの著作で、『土を喰う日々』という一冊がある。

水上さんが、軽井沢での暮らしの中で、自ら耕し自ら調理したおもに大地の恵み味わいを、自信の体験や記憶と織り交ぜて綴った珠玉の文章である。

僕の手元のは新潮文庫版、平成16年の20刷。この一節に、「たらの芽」を濡れ紙でくるんで蒸し焼きにし、味噌を付けて食する職人のはなしが紹介されている。


 「たらの芽はこいつがいちばんだ」
 (中略)山へ入って、
 うまそうなのを千切ってきたらしく、
 ぬれ紙につつんで、よく焼いて、
 携行してきた味噌につけて
 めしの上においているのだった。
 ほこほこと、湯気のたつのをみていたら、
 生つばが出た。
 これこそ、たらの醍醐味か。
 



たらの芽はてんぷら、なぜかそう刷り込まれてしまっていた僕の意識に、濡れ紙で包んで焼いて味噌をつけるという上記の食し方は、それこそ強烈に、突き刺さってきた。甘みと苦みの混じり合ったあの風味を、味噌で... 想像するだけで... あうぅぅう


おっと、またはなしが味噌に流れてしまうところだった。
本稿は味噌のことじゃない、たらの芽だ。


たらの芽を、もっと自由に味わっても良いのではないか?
庭に植え付けたたらの樹からも、もうすぐ芽が出る。裏山の林道脇、送電線鉄塔の周囲、叱られずに芽を摘めるいくつかの場所から、春の味わいが届く日も近い。ならば、こんなのはどうだろう。



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ある年の春。山の帰りの道ばたで、わんさか採れたたらの芽。



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キッチンで材料を広げる。にんにく、ベーコン、ディチェコのパスタ、そしてエクストラバージンオイル。あとは塩があれば良い。



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オイルを弱火にかけ、にんにくから香りを移す。ベーコンも加え脂を溶かすような感じで旨味をもらう。熱くなってきたところにたらの芽を投じ、強火で一気に火を通す。ただしにんにくを焦がさぬよう。

このとき、パスタが茹で上がっているよう、正確にタイミングを計る。



茹でたパスタをフライパンにあける。ひと掬いの茹で汁も足してやる。最強火力でオイルと茹で汁をぐつぐつさせて、完成。




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春の味わいパスタ。春夏秋冬、僕をでぶに向わせる味わいに事欠かないこの国の風土が、大好きなんだ。










(過去の素材を再編集)
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by yabukogi | 2013-04-13 08:02 | 喰い物のこと
2013年 04月 07日

ねんぼろの春

裏の丘の一角、くぬぎ林の地面に、ねんぼろが生えている。

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「ねんぼろ」とはヒガンバナ科ネギ属の、要するに野生の葱である。野蒜(のびる)の方が一般的で、ねんぼろは信州での呼び方。土手やあぜ道、この列島のどこにでも、にょろにょろと生えている。ふるくは万葉の歌にも登場する身近な食材。いまの「はしり」の時期なら、玉葱状の球根から葉っぱまで、ぜんぶ味わえる。

春だ。こいつを味わおう。



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醤油に鰹節、あるいはマヨネーズ和え、いろいろあるだろう。僕は、青唐辛子を漬け込んだ信州ならではの味わい、『こしょう味噌』を使ってみる。

(註・松本あたりでは唐辛子のことを「こしょう」と呼び、焼き鳥屋なんかでも七味くれ! の意味で「くしょうくれねぇか」などと言う)


この『こしょう味噌』だが、我が冷蔵庫の奥には10年ものも秘蔵してある。これは長男坊主が生まれた年にこしらえたやつで、濃厚にして芳醇、コニャックのような芳香もまじえ馥郁たる香りを放つ、まさにヴィンテージ。こうした長期保存が可能な理由は、活きた本物の味噌を使うこと、そして火入れしないこと。

この青唐辛子の味噌、肉類との相性に破壊的な威力を発揮する  >>過去記事  のだが、さておき今回は肉ではなく「ねんぼろ」が主役だ。



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ねんぼろは泥を落としよく洗っておく。



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エシャロットのようにかぶりついても良い。が、今回は粗く刻んで愉しむ。



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時間を置いてはいけない。葱のなかまの味わいは、刻んだ瞬間に揮発してゆくのだ。僕が時々、おもに豚骨ラーメンという場面において、「葱はいかなる場合においても青ネギで、しかも絶対に刻みたてでなくてはならない」と主張するのは、こういう理由からだ。

とにかく、青唐辛子の味噌に刻んだ端から混ぜ込んでいく。


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ねんぼろを潰さないように、味噌で包むように丁寧に混ぜて...




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あぁぁ..... 

酒が進んでしょうがない。一升ぐらい、ぺろりだ。そのあとの飯も、二合。



でもね、器に盛ってテーブルに出す時は、ごくわずかな量に留めておく。大半は中が見えないタッパに詰めて、先に冷蔵庫に隠しておくんだ。家人やばあさまには「これしか、無い」と思わせておくようにね。
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by yabukogi | 2013-04-07 08:27 | 喰い物のこと