その男、薮の彼方に消ゆ

imalp.exblog.jp
ブログトップ
2013年 04月 27日

ある日、敗北感に包まれて

今日は、ウイスキーのことを書きます。


自分は、ウイスキーであります。
料理に合わせてワインもジャパンも楽しみますが、泡が出るやつはあまり呑みません。ウイスキーは昔から「角瓶」と決めていました。これを、井戸水で割ってマグを満たし、いただきます。井戸は、まつもと城下町湧水群のひとつ「鯛萬の井戸」です。
c0220374_11295970.jpg


そして毎月のおわりに数本の空き瓶をリサイクルに出していました。



数年前ですが、仕事が忙しくなって酒の量が増えました。ある月、リサイクル置き場に運んだ空瓶の本数が10本あったことも。大きなトートバッグにこの10本をがちゃりがちゃり、運んだわけです。

この日、空き瓶を置いた瞬間、ものすごい敗北感に、僕は包まれてしまいました。いつの間にか、月に10本もの空き瓶を....


我ながら、呆れました。ひと月にウイスキーを10本です。呑み過ぎです。僕は人間をやめる替わりに、角瓶をやめました。




それからは、ニッカにしました。BLACKとラベルに書かれた、安いニッカです。この価格で販売してはたして利益が出るのか、と疑問に思える価格です。700ml瓶で798円。4L入りのでっかいペットボトルが4,180円です。瓶で買うと、角瓶時代と何も変化がありません。毎月のおわりに、空き瓶をがちゃりがちゃり、リサイクルに出すわけですから。こうした理由で、4リットルのペットボトルを買うようになりました。



その頃、転居して井戸が遠くなりました。やむなく、水道水で割ります。松本市街地の水道水は、奈良井川上流の奈良井ダムから運ばれてきます。木曽駒ヶ岳の北に茶臼山(2652.7m)というピークがありますが、この辺を水源とする美味しい水です。なので、水道水自体がとても美味しいのです。近頃話題の東京水には敵わないと思いますが。

ところが、自分にはわずかなカルキ臭が感じられてしまいます。




あるとき沢登りに出かけた際、仲間のいのうえさんが、沢の水をボトル浄水器に汲んでフィルターで濾過して飲ませてくれました。泥臭さも何も無い『南アルプスの天然水』のような味わいでした。

僕も同じメーカーの浄水器を手に入れました。セイシェル社の『サバイバル3』という品物です。山や沢でも使いますが、ウイスキーを割る水に、もっぱら使用しています。
c0220374_11303612.jpg




こうして毎月、2本ぐらい、大きな4リットルのニッカが空になります。しかしラベルとキャップを外してしまえば、もう安いニッカが入っていたとは解りません。リサイクルに出す際も、スマートなものです。



4リットルのペットボトル入りウイスキーを買うには、ほんの少しだけの勇気が必要です。近所のスーパーでこれを抱いてレジに並んでいるところを、ご近所の若奥さんに目撃されてしまうかもしれないからです。もしペットボトルに【竹鶴25年】と筆文字で書かれていれば、「まあ伊丸さん、なんてラグジュアリィ!」と評価されるんでしょうけど。竹鶴25年の4リットル入り、仮に存在したら30万以上ですね、すごい。

さておき、近所で買うのもあれなので、少し遠く店で買い求めます。それも2本セットで。だって、これなら飲食店かなにかやってる風に見えるじゃないですか。もう敗北感とは、無縁の生き様を手に入れたわけです。




ウイスキーを注ぐ、マグのことを書き忘れました。
c0220374_114853.jpg

チタンの220mlマグがちょうど良かったのですが、もうすこし容量が欲しくて300mlにシフト。その後、450mlサイズだと何度もお替わりしなくて済むことに気付きました。いま、600mlサイズに増やそうかと、考えているところです。
[PR]

# by yabukogi | 2013-04-27 11:54 | 書くまでもないこと
2013年 04月 23日

火を焚きなさい

c0220374_725884.jpg




紙切れを拾った。
何時のものか、どこのものかも解らないが、新聞の切り抜きだった。
一遍の詩だった。

2001年に亡くなった山尾三省さんという詩人の、よく知られた一遍『火を焚きなさい』が、その紙切れにあった。





『火を焚きなさい』


(引用はじめ)

山に夕闇がせまる
子供達よ
ほら もう夜が背中まできている
火を焚きなさい
お前達の心残りの遊びをやめて
大昔の心にかえり
火を焚きなさい

(中略)

背後から 夜がお前をすっぽりつつんでいる
夜がすっぽりとお前をつつんだ時こそ
不思議の時
火が 永遠の物語を始める時なのだ

(中略)

人間は
火を焚く動物だった
だから 火を焚くことができれば それでもう人間なんだ
火を焚きなさい
人間の原初の火を焚きなさい
やがてお前達が大きくなって 虚栄の市へと出かけて行き
必要なものと 必要でないものの見分けがつかなくなり
自分の価値を見失ってしまった時
きっとお前達は 思い出すだろう
すっぽりと夜につつまれて
オレンジ色の神秘の炎を見詰めた日々のことを


(後略、引用終わり)


「びろう葉帽子の下で/山尾三省詩集」(1993年 野草社刊)より






山尾三省さんは、1970年代にインドやネパール巡礼の旅に出て、その間の思索からいくつものすぐれた詩を発表してきた人だ。アメリカでビートニク世代が反戦運動や自然回帰とか、禅への関心とか、いわゆるカウンターカルチャーが沸騰していた状況に通じる。じっさい、ヒッピーと呼ばれた若者たちが田舎で小さな村を作ったような活動に呼応するかのように、山尾さん自身も屋久島に移り晩年までを過ごしている。

そこに模倣があったという意味ではなく、国家とかイデオロギーとかいろいろな現代的な価値観に疑問を抱いた人々が、自然回帰の流れを持ったというのが、時代のムーブメントだったのだろう。

やがてお前達が大きくなって 虚栄の市へと出かけて行き
必要なものと 必要でないものの見分けがつかなくなり
自分の価値を見失ってしまった時


というのは、リアルに当時の人々が抱いていた状況だったと思える。
とすれば、いま現在の我々も、「虚栄の市」で自分の価値を見失ってしまっているのかもしれない。


だからこそ、いま、僕たちは火を焚こう。

写真は2008年12月、神奈川県内のある沢にて。



【参考】詩の全文、英訳が掲載されているページ
http://happano.org/pages/make_the_fire.html
[PR]

# by yabukogi | 2013-04-23 07:46 | 書くまでもないこと
2013年 04月 21日

なごり雪に悪獣は

c0220374_1214482.jpg


日曜の夜明け。

それでも僕は4時過ぎに目覚める。お迎えが近いと、朝も早い。
障子紙の破れ目から、ほのかな明るみが差している。

 はて、夜明けにはまだ早いが...



はっと身を起こして庭を見やれば、雪が積もっているではないか。
4月21日、花見も済んだ春たけなわである。


c0220374_1120736.jpg

すっかり明るくなってから外に出てみれば、7センチほどは積もったようだ。



c0220374_11205281.jpg

我が家に巣喰う悪性生物、耳が尖ったあの悪い肉食獣と思われる足跡があった。
つい先ほど、トイレが我慢できなくなったらしく泣きながら出て行ったのだ。



c0220374_11221568.jpg

後脚を、ふたつ一緒に着地させていやがる。
奴は、靴を持っていない。だから冷たくて、耐えられないのだ。



思い知るがいい。
[PR]

# by yabukogi | 2013-04-21 12:17 | ねこのこと
2013年 04月 17日

洞山城跡でsanpoストーブ


肋骨が折れてしまって、仕事ができない。


朝から酒を喰らっててもつまらないので、珈琲道具を携えて近所の古い山城跡にあそぶ。


c0220374_7252682.jpg

(おっと! Primusの袋に入れてきてしまった。まさにひつじの皮を被った狼)


少しだけカブを走らせて、女鳥羽川の畔に立つ。この流れはやがて、松本の城下町にせせらぎの優しい音を響かせる。

c0220374_7261140.jpg

ここは、初夏の夜に蛍舞う美しい流れだ。山女魚も棲む。



橋のたもとのお宮の境内から、洞山城(早落城)へ登って行く小径がある。

c0220374_729818.jpg

空堀が切られた松林の尾根を歩く。


c0220374_7392476.jpg



c0220374_729455.jpg

やがて狭いピーク。ここが一ノ郭だとか。こんな狭いところに籠って戦? それとも物見程度の役割なのか。




どこかで湯沸かしを、と思うが風が強い。アルコールストーブの炎が山火事を引き起こすようではいけない。

c0220374_7315166.jpg

松の木の陰に、BBQ台のようなものを見つけた。


c0220374_7325159.jpg

この日はさんぽ師匠のカーボンフェルト式アルコールストーブ。スタンドとスクリーン(風防)は自作品を用いた。

(おっと! せっかくのストーブ燃焼風景が写っていない! すみません)



c0220374_7343381.jpg

蒸らし中。アロマが立ち昇ってくる。


c0220374_7351575.jpg

眼下に、僕の住むまちも眺められる。




c0220374_7355777.jpg

珈琲セットはこんな感じ。あえてドリップ式としたため、マグとポットを組み合わせている。ポットはMLVのチタン550ml。


c0220374_737766.jpg

1オンスのアルコール、1杯分の珈琲粉を含めて、264.0グラム。
[PR]

# by yabukogi | 2013-04-17 07:42 | ぶらぶらと歩くこと
2013年 04月 14日

わたしの街

わたしの住む街は、とても美しい街です。


c0220374_14103936.jpg

松本の市街地を眺めております。美しい丘の、美しい眺めです。丘には、色とりどりの花々が、春の訪れを祝っているようです。




わたしは、前日からなぞの激痛に襲われ、のたうち回っておりました。
今まで経験したことのない痛みで、たとえるならば、ある人がわたしの背後に立って背中に出刃包丁を突き入れ、一分間に三回の早さでやいばを回転させている、と書けばよろしいのでしょうか。背中のある箇所が、それこそある人が背後に立って... いえ、もう書きました。


姿勢を変えたり、くしゃみをしたり、咳き込んだ時は気絶します。

痛みで意識を失うというのは、映画やドラマの演出ではなくて、実際に起こりうるということを教えていただきました。背後に立った人に。いえ、これは例えであります。



花が咲くこの時期を選んで、町内の公園でお花見が催されました。
わたしは町内のお祭り係りなので、この日は作業をしなければなりませんでした。

その夜明け。わたしは、寝床のシュラフの中で、脂汗を全身から噴き出し、苦悶のうめきと慟哭の狭間にかろうじて命をつないでおりました。トイレに行くためです。痛みをかわしながら身を起こし、とにかくトイレに行って膀胱を空にしたかったのです。

トイレに無事辿り着き、痛みに泣きながら夜明けを待ちました。ふたたび横たわってしまうと同じ痛みを繰り返し経験しなければなりません。椅子に座ってうたた寝をしながら、朝を待ちました。





町内の公園のすぐ目の前に、大きなドラッグストアがあります。

遠ざかる意識をわずかに指先でつなぎ止めて、わたしはドラッグストアへと向いました。もしその姿を、誰かに見られたら通報されたことでしょう。紫色の顔の不審な坊主頭の男が、はぁはぁ言いながら同時に泣きながら、住宅街を徘徊している、と。


しかしわたしは、ドラッグストアへ、どうしても辿り着く必要がありました。

そうです。ロキソニンです。あの桜色したタブレットひとつぶが、いまのわたしの痛みを、苦しみをぬぐい去ってくれるはずです。


平成25年4月13日、桜が満開でございました。
c0220374_14191888.jpg

ドラッグストアに入ったわたしを、店員さんたちが不審そうに見やりました。あきらかに異常な表情、肩で息した怪しい坊主頭の男が入ってきたのです。何人かは、通報ボタンに手をかけたことでしょう。


わたしは、「鎮痛剤」コーナーへ向い、棚の「ロキソニンS錠」の箱を掴みました。そしてその瞬間に箱がダミーパッケージであることに気付かされたのです。そうか、薬剤師に告げなくては...


視界は霞んでおりました。ひたいの脂汗が涙と混じって風景を歪めておりました。店内に、白衣を着た薬剤師の姿はありません。わたしは入り口近くのレジに近寄り、さっき不審そうにわたしを見やった女性に叫びました。

 ロキソニン、ほしい。ロキソニン。



あやしい外国人と受け取られたかも知れません。しかし、そんな些細なことに構っている余裕は、わたしにはありませんでした。

 薬剤師が休みなんです、だからお売りできないんです。



そのレジ係りの言葉が、まっくろな絶望の深淵の口を、押し広げました。世界は暗黒へと転じ、すべての光は飛び去りました。痛みだけが、絶望という二文字とともに、わたしの背中に焼きごてのように定着された瞬間でした。


c0220374_14362197.jpg

同じ頃、50メートル先の公園では、こどもたちやまちの人々が楽しそうに遊んでいました。


べつなドラッグストアまでは数百メートル歩かねばなりません。わたしにはこの移動が不可能であること、それを認識していました。家に帰ることも同様です。わたしにできることは、ご近所さんたち、仲間たちが居る公園に向うことでした。誰かに助けを求めることができるからです。


c0220374_14395896.jpg

わたしを待っていたのは、ポップコーン係りでした。

助手として、一年生の女子大生が手伝ってくれました。18歳のお嬢さんに、この痛みを伝えることはとても困難でした。しかし、近所の人が自宅にあるよと「ロキソニン」を取ってきてくれました。Kさん、ご恩は一生忘れません。

 助 か っ た 。



水で錠剤を流し込み、わたしは群れ集うこどもたちのためにポップコーンを作りました。笑顔で配りました。


c0220374_14442249.jpg

最近、家を新築したAさんは焼きそば係りでした。



c0220374_1445098.jpg

おでんも美味しそうに炊けておりました。

ある瞬間。
たしか19歳か20歳のお嬢さんたちと戯れていた時だったと思います。わたしは、咳が出ました。


地獄を、見ました。




桜の樹の下に移動して、肉を焼いたり餃子を焼いたり、マグに満たした「大雪渓特別純米酒」を流し込んだり、しました。






ひと晩を眠り、また朝が来ました。
地獄の朝とならないよう、身体を起こすためのシュリンゲやデイジーチェーンを頭上の梁からぶら下げて備えました。ピッケルも枕元にあります。このお陰で、無事に起き上がることができました。


近くの休日当番医に出かけました。診てもらいましたが、匙を投げられました。そして大病院への紹介状を渡されました。


大病院は、ヘリポートを備えたでっかい病院です。北アルプス南部で滑落したりしてヘリコに載せられると、だいたいここへ連れてこられるような病院です。

CTスキャンとかMRIとか、さまざまな検査を経て、医師はわたしにこう告げました。

 肋骨がね、ほら、こんなにもポッキリと!





c0220374_1410351.jpg

わたしの街は、とても美しい街です。
信州まつもとへ、いつか移り住みたい、とお考えの方には、良いまちだと思います。










【追記】
町会の皆さま、読者の皆さま、大変にご心配をおかけしました。この場をお借りしまして、御礼とお詫びを申し上げます。

帰宅後のわたしですか?

ええ、やすらぎとくつろぎにつつまれて、過ごしております。
これ以外にも、今日処方箋が出た分を薬局で入手できますので、当分、桜色の錠剤に困ることはなさそうです。
c0220374_18543076.jpg


ロキソニン、万歳!
[PR]

# by yabukogi | 2013-04-14 14:58 | 書くまでもないこと