2013年 05月 07日

そしてまた、酢を喰らえ

魚屋の店先に、小振りの鯵が並んでいた。


ならば南蛮漬けだ。
以前にも鰯を揚げて南蛮に漬込み、思う存分に酸を吐きまくった。毎年初夏の訪れを前に、なぜか作りたくなる南蛮漬け。季節的なものがあるだろうか、と考えてみたら、新玉葱にその答えがあるようだ。当地では安曇野・豊科が玉葱の産地なのだが、こちらのものは山国だけあって6月と遅め。とにかく八百屋に白き新玉葱を見かけると、連想して小魚の南蛮漬けへと発展していくのが、その男の思考のようだ。

余談になってしまうが、その男の新玉葱への偏愛は凄まじい。
味噌汁はもちろん。スライスはお約束。串に刺してフライに。まるのまま鍋で煮る。擦りおろしてドレッシング。小さいものは丸かじり。つまりは、エシャロットやラッキョウ、そしてノビルへの愛と同じく。



小麦をまぶして、揚げろ!
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今回は頭を除らず、腹だけの処理。いつものように、ここで数尾に塩を振って味見。たまらん。




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生野菜は、にんじん、新玉葱。ここへ「悪魔のピクルス」を追加。これは昨年夏の青唐辛子をピクルス液に漬込んであるもの。






毎日、ヨメや婆さまに見つからないようにこっそり、味わう。
そして十日を経て、そろそろなくなりかけを、また愉しむ。

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イニシャル(初回漬込み)時の野菜はとっくに喰ってしまったので、2回を追加している。にんじん、新玉葱、セロリ、そしてあのピクルス。ばりぼりばりぼり、しあわせは、まだ終わらない。




これでたっぷり、酢を喰らうことができた。
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# by yabukogi | 2013-05-07 12:00 | 喰い物のこと
2013年 05月 04日

挫折討死無名稜線

この稜線に上がって、もう2時間近く。

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樹林帯の痩せ尾根には灌木、倒木が続き、容易に距離を稼がせてくれない。いやらしいアップダウンが繰り返される。石楠花が出始めて、これは突破できないから稜線の北側急斜面に貼り付いてトラバースを続ける。そんなことの繰り返しで、ようやく2,150高点を通過、続いて2,250mのコブを越えた。あと少し、あと少し....。


2013年5月3日。
僕は目の前に立ちはだかる無名峰2,467.0の直下、標高2,300m目前の地点で雪の壁を前に歯ぎしりしていた。また追い返されるのか? 事実、前回は薮に敗退しているのだ。

そして僕は今回もまた、退けられた。




■横通岳東方稜線

北ア・常念山脈の横通岳から真東に派生する長大な尾根に、名前はない。便宜的に横通岳東方稜線としておく。稜線は、ふたつの目立ったピークをもたげて尾根を延ばし、浅川山、富士尾山と高度を下げて最後は安曇野に没する。

このふたつのピーク、安曇野では「ふたつ耳」とか「烏帽子・大滝」などと呼ばれることもあるようだ。山麓から眺めれば常念岳・横通岳と並んで、もの凄い存在感で聳えている。
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この稜線上の2467峰(基準点・大滝)が気になってはや数年。2008年3月は偵察まで、同6月には笹が想像以上にはびこり敗退。三度目の正直なるか、と装備を整え訪れてみた。




■またしても、激薮

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安曇野の夜景、その向こうに雪の稜線がほのかに白く浮かび上がっているはずなのだが、見えない。ガスが巻いているようだ。自宅からカブで1時間、真っ暗な林道に突っ込む。長くうねる林道の終点近くなると、ヘッドライトに雪片の軌跡が浮かび上がる。ガスは雪雲なのかもしれない。


夜明け間近。林道の峠地形で、カブを停める。前回は6月だったため尾根は笹薮に覆われ、進路を阻まれた僕は1kmちょっとで引き返している。今回はこの教訓から、締まった雪の上を歩ける4月を狙った。しかし何故か肋骨をポッキリ折ってしまい、GWまで延ばさざるを得なかったのだ。

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準備を済ませ、すぐ背後の斜面に向う。



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ところどころ融けはじめているものの、まだ林床に雪がある。この雪が笹を押さえつけてくれている、いまの時期がラストチャンス。朝日にまぶしいダケカンバの森をゆっくりと登って行く。



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振り返れば雲海の上に、光が満ちる。安曇野は雲の下、夜明け前に見たあのガスの上に居る。



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高度を上げると、雪が深くなる替わりに笹が出てきた。地形的に南の風を受けるのだろうか。



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やばい。笹が...。前回の教訓が生かされていない。




■迂回

ここの笹の突破は、無理。
雪がある斜面を求めて、僕はいちど戻ることにした。


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途中から山腹を北側に巻くように移動すると、浅い谷にはたっぷりの雪が残されていた。



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それでも、もう5月なのだ。あちこちで雪面が割れている。やがて笹の支配が始まる。




行動開始から1.5時間、薮漕ぎせずに尾根の1972高点に到着。北から迂回したのは成功だった。

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帰路、尾根を直進してしまうとあの激薮に突入してしまう。直角に折れる箇所をマーキングしておく。もちろん帰りに回収。




■残雪の尾根

この先、尾根は痩せてくる。地形図でも左右が切れている様子がうかがえる。
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灌木がうるさい。石楠花が出てくる。

樹林帯だから高度感は皆無。しかし尾根の稜線上に灌木や倒木があると、北側をへつるように急斜面に貼り付いてトラバース。南側は笹が出ているためだ。



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早朝、雪は締まっていて歯も爪もよく効く。



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右手前方に、常念山脈北方の稜線がまぶしい。左が合戦尾根と燕岳、あの辺は賑わっていることだろう。一方、この尾根には僕独り。中央がケンズリ、餓鬼岳あたり。右の黒いのは有明山。さらに右には白馬から小蓮華の稜線も。



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目的地、基準点「大滝」の置かれた2467.0峰が見えてきた。まだ遠い。これも北側をトラバース中に撮っている。斜度はおおむねこんな感じ。疲れも出てくる。左手でピッケルを握っている時にアバラが折れた左の背中が痛み出す。



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柏草餅をほおばる。餅系の和菓子は凍りにくくて良い。



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大福も。痛み止めのロキソニンも飲む。



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途中、東沢乗越の奥に、劔が見えていた。不鮮明な画像で申し訳ないけど、本峰と長次郎のコル。



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2467.0峰までもう少し、2150高点に到着。ここから標高差350m、水平歩道のような尾根を来た身に、この登りが堪えた。身体を持ち上げる時に背中が痛んでたまらない。



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山頂下、2,270m付近だと思う。急なやせ尾根の登りで、左は日光に雪が腐って刺さったシャフトを支持できない。右奥には露岩の連なるほぼ岩壁。ちくしょう討死だ。

なんどか息を整えながらも、ここで退却を決める。





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退却地点からの前常念・常念岳の稜線。ましろき屏風のように、左側に立ちはだかっていた。うつくしく巨大、に尽きる。





■反省

GWでは遅かった。やはり4月に来るべきだった。雪が腐って不安定に登るリスクを取ってはいけなかったのだ。4月では林道がデブリに埋まっているのでもっと下から歩くはめになるが、夜明け前に歩いてくれば良いだけだ。

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それから、骨折を早く治そう。折れたままここへ来たのが、間違いだったのだ。




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やはり遠かった2467峰。
帰りに眺める。白いのは横通岳、目の前の谷は常念に発する一ノ沢。眼下はるか、写真中央付近に一ノ沢登山口の建物が見える。




■山麓
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安曇野でも田植えが始まる。田んぼに残雪の山々を写して、春は満ちていく。

今回またしても退却となってしまったげれど、僕自身はとても楽しむことができた。雪の上でも身体が動かせたこと(痛みは別にして)、ルートファインディングもそれ自体が楽しいものだった。

山の神さま、ありがとうございました。
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# by yabukogi | 2013-05-04 09:15 | 北ア・前衛の山々
2013年 05月 02日

部屋を晒します

わたしの、汚い部屋の内部を晒そうと思います。


木造モルタル2階建て、築38年の戸建住宅の1階です。南東角にあたる8畳の和室を占有しております。

家財に相当するモノはほとんど所有しておりません。蔵書もほとんど処分してしまいましたので、書棚ひとつの文庫、ハードカバーが残るだけです。衣類は、スーツと礼服が夏冬各々ある以外、全部、山服です。ジーンズが1本あるかないかです。話がそれますが、ストームゴージュのパンツって、一年中役立ちますね。3本あって、2本がアルパイン、1本が非アルパイン、モンベルの七分丈ライトニッカーみたいなのを合わせると、あとは要りません。これで1年履き回しですよ。うちの團のきまつ部長は、パタのトラバースパンツを評して「トレランから春の園遊会まで」と書いてましたが、ストームゴージュも「野良仕事から神輿の渡御まで」って感じであります。

あぁ、脱線してしまいました。

わたしの部屋です。
先日、わたしの体内の水分はモルトなんです、ってカミングアウトしたばかりなんですが、その際に、壁の棚の一部をご紹介いたしました。
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わたしの棚であります。






すこし下がると、こうなります。

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おや? ナベやマグの配置が違う?

これは、どれもこれも、ほぼ毎日使ってるからなんです。
上の段の真ん中、SPの焚が写っていますが、これはウーロン茶の煮出しに使います。濃いやつを作ってがぶがぶ飲みますと、デトックス感がすごいんですよ。2段目のマグ類は、弁当ランチにどれかしら持って行ってます。左ふたつ、SPと焚と極のマグがありますが、これはハンドルが短くて使いづらく、エバニューのチタンマグ(赤いポットの左)の方にハンドルの利点がありますね。

おっと、ククサが写ってますね。大親友から贈られたもので、寝床で寝っ転がって寝酒を舐めるときに、使うんですよ。



この棚は、コメリドットコムで買った、ホワイトパインの2X4材と1X4、1X1だけで作られています。組立はコーススレッドビス、強度が必要な箇所には、USシンプソン社の補強金具が使われています。

さらに、複数の棚が直角に連結されたり向かい合ったりしており、それぞれを2X4材の梁がつないでいます。なので完全自立式のうえ部屋の柱と梁に突っ張る格好で、巨大地震が来ても崩れることはないと思っています。ですから梁からぶら下がろうが、びくともしません。なお、テーブル板を除いた材料費は、約12,000円でした。すこしカメラを引いてみましょうか?






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ちょっと!

なんていう散らかり具合ですか。掃除とかしないんでしょうかその男...。


窓辺なのに、まさに穴蔵ですね。巣穴です。その男、引きこもり感が半端ないですね。孤立感、絶望感、行き止まり、終着駅、デッドエンド、いろんな言葉が浮かんでまいります。

でも、その男本人は【砦】のつもりなんです。【要塞】なんです。見えない敵と戦ってるのでしょうか? 
それとも、同じ屋根の下の何かに、危険を感じることがあるのでしょうか。



じつはこの棚、天井近くと床のところで画面の右方向にずーっと続いてまして、その先は吊り下げ棚と書棚になってるんです。茶色い板のデスク面も、さらにあと3メートルぐらい。そこで壁にぶつかるんですが、90度折れましてまたずーっと梁が続いてるんです。こうして部屋全体の頭上に梁が張り巡らされているので、なんでも吊り下げておけるんです(註)。靴下もグローブも書類も酒のツマミも山道具も、見上げればすぐに見つかるんです。探す手間が省けて、楽なことこの上無し。


ええ。
吊り下げ式にする以前、もの探しに一日のほとんどを費やしていたんですから。歳は取りたくないですね。


ではごきげんよう。明日は、少しだけ高い所に出かけてきます。




注釈
2週間前に原因不明の肋骨骨折が発生して以来、寝床から起き上がるときの激痛を、この天井の梁で免れたのですよ。梁の2X4材にタイオフでぶら下げたシュリンゲとディジーチェーンを引っ掴んで、起きたり姿勢を変えたりしたんですね。ですからみなさん、何時肋骨が折れるか解らないわけですから、骨が何ともないうちに部屋中に梁を設けておくべきなんです。こんな風に、『備えよ常に』ってのが、我らが幕営団の座右の銘なのです。

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# by yabukogi | 2013-05-02 18:03 | 書くまでもないこと
2013年 05月 01日

わたしのヴァケィション

本日から数日間、わたしにも休暇という、天からの授かりもの。




わたしは、火を焚きました。

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わたしは数日前、山尾省三さんの詩を引用して

 火を焚くことができれば それでもう人間なんだ

ということばを紹介しました。




休暇の初日に、わたしは火を焚く必要がありました。仕事に追われてきたこの身と魂を、炎で清める必要があったからです。あばらが折れていなければ、高い山へ出かけて大地を褥(しとね)に眠り、岩のひんやりした手触りや白き雪肌に反射する陽光から、清めてもらうこともできたのでしょうが....。

兎にも角にも、清めてもらうために火を焚きました。



無目的な火を焚いて、揺れる炎を無言で眺める時間、それが人を人たらしめる時間なのでしょう。もしかしたら焚き火には、生産的な目的があってはならないのかもしれません。



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わたしには、火を焚く目的がありました。心身の清め以外にも、腹を満たす必要があったのです。

背黒いわしの干物は。、2割引でした。
ボウルのどどめ色の気色悪いものは、地鶏のレバーです。



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タレに漬けておいたためか、味わい深く、香ばしく焼き上がりそうです。



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もちろん、ふっくらとジューシーな味わいであったことをお知らせしなければなりません。



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先日も書きましたように、炎と同じ作用で、喉を墜ちて行く熱からも清めていただきました。手前は、炎を沈めるための泡であります。





お休みの方にも、お仕事の方にも、穏やかでやすらかな、忘れ得ぬ五月の始まりという日々が訪れますよう、信州の片隅からお祈り申し上げます。
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# by yabukogi | 2013-05-01 17:32 | 書くまでもないこと
2013年 04月 29日

春の森で猿のアレを思い出す

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裏山の森に、いく筋かの小径がつけられている。
満ちてきた信州の春を愉しもうと、木漏れ日の小径をぶらぶら歩こうと、珈琲道具と水筒だけを携えてこの森に分け入った。



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芽吹きはじめたばかりの森をゆく。



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散りかかった山桜の彼方に、常念。
左側の鞍部に、微かな白い突起が出ている。これは槍ではなくて、中岳。望遠レンズを(というかちゃんとしたカメラを)持っていなかったので、ごめんなさい。



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木立の中に、山頂の三角点。



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朽ちかけた木のテーブルに、この日の珈琲セット。アルコールストーブ一式を忍ばせたマグは450ml。



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35mmフィルムケースから取り出された、カーボンフェルトのコーン。ピンぼけ失礼。
スタンドは我らが炎のマエストロ、さんぽ師匠のCFストーブのもの。



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フィルムケースに「アルコール漬け」になっていたコーンに、燃料を少し加えて点火。



おや。この形状、以前にどこかでも見たような記憶が....。



やはりそうだ。
2008年早春の烏川渓谷で見かけた、猿の排泄物。これと全く同じ形状だ。
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完全に一致。



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これが思った以上に仕事する。カーボンフェルトを芯に、というアイディアを発案・提唱、そして改良なさった先人たちの苦労を思い浮かべる。ありがとうございます。

たしかにこの形状、燃費はやや悪いものの最大瞬間風速的に、良く燃える。気化の量や空気との接触面積とか、工夫ができそうだ。今回に関しては、コーンの径と高さをもうふた回り大きくしてやれば良いか....。







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この日はインスタント珈琲で。







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山麓の麦畑が、青々と茂ってきた。雲雀のさえずりも間近だろう。
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# by yabukogi | 2013-04-29 07:04 | ぶらぶらと歩くこと