その男、薮の彼方に消ゆ

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2013年 06月 30日

梅仕事、2013

梅雨、と書いて「鬱陶しい」と読むのだろう。


けれど、こんな手づくりの季節と思えば、降りけむる雨も嫌じゃない。


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今年は少し、奮発した。例年、キロ400〜500円ぐらいの「白加賀」あたりで漬け込むことが多いのだけれど、今年はやわらかな果肉を楽しめる「南高梅」の4Lと2Lを求める。




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4Lサイズを漬け込むのは初めて。立派なものだ。




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ほら。プラムとかそんな感じ。




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「づく」の要る仕事は、豆ども(こどもたち)に委ねる。嫌がらず、毎年ちゃんとやってくれる。もちろん、爪を切らせて手を洗わせて。ご褒美に、明日は父親から何か買って貰うのだ。

づく、とは信州のことば(概念)で、やる気や根気に近い意味を成す。やる気と言っても瞬発力的な行動開始の意思ではなく、こつこつと地道な作業を続ける(取りかかる)モチベーションを意味する言葉だ。庭に繁茂する雑草を放置していると「なにをづく無しこいてるだ? あ?」と言われるように。




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2Lサイズの梅を、仕込み完了。仕込みとは、素材となる完熟梅を流水で洗ってさらに拭き取り、これを焼酎(ホワイトリカー)で濡らして塩をまぶす作業。こいつを瓶に密閉して「梅酢」が出るまで待つ。梅酢が出てくればしばらく寝かせ、あとは土用の頃に炎天に晒す。太陽の無慈悲なまでの熱と紫外線に肌を焼かれ水気を絞られ、また梅酢に浸して寝かせる。こうして味わいまろやかになった夏の終わりに、梅干として完成する。

途中、カビの発生が懸念される。これが出ると日光消毒とか面倒くさいらしいが、僕はさいわい、これまでにカビにやられたことがない。




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4Lサイズのスペシャルな梅も仕込み完了。塩で真っ白だけど、これで16%。




2、3日のうちに梅酢が滲出すればカビの心配は無い。言い換えれば、梅酢の中ではどんな細菌も生きられないのだ。さて、これから梅たちは梅漬けから「梅干」へと成長を遂げるだろう。そのいきさつはまた、ご報告しよう。



三年前の梅干づくりの様子を記事にしていた。こんな感じ
>>炎天に干し上げろ

>>僕には梅干がある

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by yabukogi | 2013-06-30 02:19 | 喰い物のこと
2013年 06月 24日

緑の戸谷峰・六人坊・烏帽子岩

2013年6月23日。僕は全身が緑色に染まるぐらい、あざやかなみどりの中を漂っていた。


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少し高い所へテントを担いで。そう予定していたけれど、結局裏山のあまり高くない所を半日で周回することにした。日曜日の朝ご飯を済ませ、台所を片付けてから家を出る。パックしたのは2リットルの水とカップラーメン、そしてトランギアのアルコールストーブ。ほかにはウインドシェルと予備の革手袋ぐらいだった。




家から15分ぐらい、カブを走らせる。三才山トンネル手前で国道254号の道ばたに駐輪すると、戸谷峰に向う2組ほどのハイカーがいた。彼らは最近整備された別コースを歩いたのだろう。山中でもてっぺんでも、出会うことは無かった。

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野間沢橋脇の鉄階段。ここが戸谷峰の旧入り口。中部電力の鉄塔巡視路を歩かせてもらう。



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緑がしたたる。ニリンソウの群落が見られる、湧き水のある谷。時期が遅いので花はもうない。



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足元に、オトシブミがたくさん。踏んでしまうと可哀想なので、この日、いくつかを道の外に放ってやる。



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どこもかしこも、いのちの気配に、満ち満ちていた。幼樹が葉を広げ日光を受け取ろうとしている。数十年後、巨樹に育っているだろうか。



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朴の木のアトラス。独りで全天を支えているようなその姿に、僕が勝手に名付けた。



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山頂近く、広葉樹の尾根。林床のニリンソウにも、もう花はない。



戸谷峰山頂には誰も居なかった。西側、安曇野は靄っている。槍も穂高も見えない。
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山頂を後にして、尾根の道を戻る。いつもは鉄塔のコルから野間沢橋に降りてしまうのだけど、この日は稜線伝いに六人坊、三才山と回ることにしていた。踏み跡はとっても薄くなる。それでも迷うことはないトレース。




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ギョリンソウの群落。




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六人坊山頂には、三角点と手書きのプレート。




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わずかに歩けば三才山。ここから急斜面を這い降りると、眼下に国道の橋が見える。するといきなり、蝶ケ原林道に飛び出す。ここが三才山峠。




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峠の様子。右奥の斜面から林道に降りた。




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しばらくは蝶ケ原林道を歩く。途中、東側にすばらしい岩壁がある。




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登ったことはないけれど、そそられるリッジ。あのテラスからの眺望を想像するだけで、お腹の下あたりがヒュンとなる。




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岩壁の下で、ランチタイム。

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ヌードルをすすりながら、この日の前半に歩いてきた山並みを眺める。





少し歩いて、烏帽子岩への入り口。美ヶ原高原ロングトレイルに入る。トレイルはさらに、武石峰から美ヶ原方面へと続いている。 

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武石峰からの降り口(右)と烏帽子岩への入り口(左奥)。




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烏帽子岩。でっかい岩壁の基部から突き出したピナクル。松本市街地からも眺められる。背景は女鳥羽川・地獄谷の森。




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男性用の眼鏡を拾った。持ち主が困っているだろう、権現社の石灯籠に置いておいた。




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烏帽子岩からも、濃淡あふれかえるみどりの中を下っていった。




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山腹を巻くように下り、次第に開けた沢のような地形に変わる。そんな一角に、湧水を汲むことができる。僕は飲んだことがない。また秋深くには涸れてしまう。




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国道を往くクルマの音が聞こえ、畑の脇を過ぎ、車道を歩く。国道に出てしばらく登っていくと、僕の赤いカブが待っていてくれた。






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帰路、いつも詣でる御射神社さんの秋宮に寄る。このお宮で、山の神さまである烏帽子大権現さんをお祀りしてるのだ。


山の神さま、ありがとう。
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by yabukogi | 2013-06-24 07:29 | 筑摩山地・美ヶ原
2013年 06月 22日

所詮はただの にら男

滝谷ドームの如く、高々と盛り上げられた真白き飯に、ひと箸の生にら醤油漬けを載せる。にらからしたたり落ちる醤油ダレは、いまこの瞬間までどんな色にも染まることを拒んできた汚れなき純白の飯を染めていく。しかも強烈な臭いまでまとわせて。





あぁっ.... はうぅっ....


奇妙な叫びは、呑み込まれる飯に押し戻されて、声にならない。あう、はう、ぬうぅ、男は異様な呻きの末に胃袋を満たし、ようやく沈黙する。



男はもの憂げに身を起こすと、この生にら飯が、目覚めの寝床の浅い夢であったことを、識る。



  □■□

その男はついに、生にらの醤油漬けに手を出してしまった。

しかもベースとなる醤油漬けの醤油、行者にんにくを漬け込むこと一ヶ月、香りと味わい、たっぷりの硫化アリルを溶かし込んだスペシアルな醤油。味わい深いのには、理由があるのだ。

かつてその男、五月のある日、行者にんにくの醤油漬けをこしらえた。その美味さに毎晩の舌鼓を打ち、また友に贈り、食べ尽くしてしまう。残されたものは、具の無い醤油ダレのみ。男は呆然とし、後悔を超えた悔恨の激情の狭間に「あの味わいをもう一度!」と魂の叫びを上げたのだ。そしてついに、失われた行者にんにくへの過度の執着が「ニラでも良くね?」と代替物を発見した次第である。


八百屋に出向き、新鮮なにらを数束、求める。洗って水気を切る。これを刻んで漬け込む。空気に触れぬよう密閉し、冷蔵庫で一晩寝かせ、さらにもう一晩。

しかし、ここで男の計画が破綻する。

土曜日の朝めし。あの生にら醤油漬けを、臭いを気にすることなくたらふく喰ってやろうと企んでいたのだが寝坊、9歳の大豆と7歳の小豆に、白飯をぜんぶ食われてしまったのだ。




  □■□

呆然と空の炊飯器を覗き込んでいた男の視界に、何かが捕らえられた。


あ!
こんな所にこんなものが。



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キッチンの棚に放り出されていたのは、マルタイの棒ラーメン、しかも「九州味」ではないか。これをこしらえて、あの生にらを載せものとして堪能するのだ。男は天魔に魅入られたかの如き勢いで鍋を火にかけ煎り胡麻を取り出し半熟玉子をこしらえる。そして....



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紅生姜も高菜漬けも、青葱すら切らしていたが、なんとフォトジェニックな生ニラ載せ豚骨ラーメンだろう....。







またひとつ、レジェンドが誕生する瞬間を、目の当たりにしたようだ。
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by yabukogi | 2013-06-22 09:24 | 喰い物のこと
2013年 06月 10日

薮尾根の怪異

みなさん。

ひとりクルマを運転しているとき、なんとなく、後部座席に誰かが乗ってるんじゃないかって、そんな錯覚に抱きすくめられたことはありませんか?


あるいは、独り部屋の中に過ごしている時に、あれ誰か居る? って視線をめぐらしたような経験はございませんか?

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それは、いまからひと月すこし前。
北アルプス常念山脈から派生する、薮尾根を歩いた折りのことでございました。


 ■□■

5月の連休の一日。
わたくしは、以前から気になっていた、ある尾根を歩いたのでございます。そこは、一般のハイキングコースはおろか踏み跡すら無く、さらに言うならば山菜が採れるような植生や標高でもなく、誰かが入ってくるような場所ではございません。


そんな無名の、道も無い尾根で、わたくしは奇妙な出来事に遭遇したのです。

ご承知のように、わたくしはきちんとした山岳会で鍛えられたわけではありません。ですが、同好会のそれなりに厳しい訓練は受けています。たとえば雪上歩行で足の置き方が悪いと、背後からピッケルでぶっ叩かれる、というわけです。そんなこともあり、足の置き方、雪面プレスの仕方にはかなり気を使うわけです。

ピストンする場合、往路のトレースから容易に自分の足跡を選ぶことができます。それぐらい、神経を配っていると言えるでしょう。


その日も、そうだったのでございますよ。

 ■□■

石楠花などの薮がかった尾根歩きを途中で諦め、退却を決めた後でした。

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なんとなく、言葉にし難いような違和感を覚えたのでございます。先に書きました、クルマの中に... ってやつです。これが、短時間のあいだに3回ほど続きまして、わたくしは全身に鳥肌が立ちました。


やがて、気持ちを切り替えて、前後に「別なパーティーが入ってる?」そう考えてみることにしたんです。会話、熊鈴の音、そう言った気配を探してみたのです。


 ■□■

この尾根に、積雪期に入ってある無名ピークを目指したパーティーの記録を読んだことはございます。ネット上でさんざん調べて、過去に3件。たった3件でございますよ。そのひとつはわたくしの尊敬するB氏で、彼は山頂を踏んで来ています。他のふたつは積雪期のラッセル&野営訓練みたいなもので、下の方で引き返しています。

林業関係、治山関係はというと、有り得ることなのですが、実はこの日でも、ここへ至る林道がデブリに埋もれ、何カ所も通行できなくなっています。なので、林業治山関係の線も薄いかなと。


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つまりですね、合理的に考えると、この時期に誰かが入り込むような尾根ではない、と結論づけられるんです。いえ、わたくしのようなへそ曲がりが他に居て、薮が雪に埋まった春を狙って踏破を試みた、という可能性は否定できませんが。


そんなことを考えながら、この違和感の正体を特定しようとしてたんですわ。

 ■□■

ありましたよ。
足跡でした。

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こんなところに、今シーズン、誰か入ってきたのですね。驚きです。



うわ。なにこれ!


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もしかしてこども? それとも女性の小さめのサイズ?



いやいや、さっぱりわかりません。ますますわかりません。大きな山靴跡だけなら理解もできます。でもあの小さな足跡は何なのでございましょう。




春の日の、不思議な出来事でございました。
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by yabukogi | 2013-06-10 12:00 | 書くまでもないこと
2013年 06月 08日

うつくしい季節を



ある宵。


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安曇野を流れる梓川のほとりに、大きな月が昇ってきた。

満月近いまぶしさに、目眩すら覚えて僕は岸辺に座り込んでしまった。ぼうっと眺めていたら、足元の流れが膨れ上がっていることにも、気付いた。上高地から乗鞍から、大量の雪代が集まっているのだ。そういえば、天狗原のあたりから、また横尾尾根の上の方から、槍沢の断崖に向って何本もの滝がかかる。初夏だけのまぼろしのような滝なのだけれど、東鎌尾根あたりから眺めてるとその迫力は凄いもので、7月半ばに消えてしまうまで、轟いている。そんなことを思い出していたら、月は高く鉢伏山の上に移っていた。



春の訪れを喜んでいたら、いつの間にか夏が兆していたようだ。

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数日後、安曇野豊科付近をうろついていたら、田植えの済んだ田んぼに、金色の光が満ち満ちている。大滝山、蝶ケ岳、常念から遠く小蓮華までの稜線のシルエットが憎い演出。

うわこれもうつくしい時間だなと、田んぼ道に座り込んでしばらく眺めてしまった。




その同じ夕方。
山越えをして家に帰ろうと、とことこカブを走らせていた。峠付近で振り返ると....

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空はあざやかな茜に染まって、燕岳稜線の向こうの輝きが、安曇野の田んぼにまで。うわあこりゃたまらんと、また座り込んでしまい、暗くなってからケツを上げた。




信州安曇野界隈、うつくしい季節を迎えている。
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by yabukogi | 2013-06-08 11:55 | ぶらぶらと歩くこと
2013年 06月 03日

今日の右ストレート

こんにちは。


ぼくはもう、お星さまになっちゃったと、思ってた?
パパに三味線にされちゃったとか、思ってた?


ううん。
げんきだよ。


今日はリングに上がる日なんだ。
ゴングが待てないよ。
相手を、力石をマットに沈めてやるんだ。




喰らえ力石っ!
右ストレート!

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うわっ
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フック喰らった!
ぐぅ痛ってぇ



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そしてマットに沈むぅぅぅぅぅうううぅぅぅん....
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by yabukogi | 2013-06-03 00:00 | ねこのこと
2013年 06月 02日

山賊たちの野宴

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ある宵のこと。

安曇野に巣喰う山賊が三人、鳥居山に野宴を開く。鳥居山というのは、鳥居を持たないお宮さんのために鳥居の形を模したかがり火が焚かれることで知られる。






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酒を酌もう、そう呼びかけ合って、まだ明るい東屋に集う。それぞれが好む飲み物を取り出し放置式のパンカイ。山談義、野遊びのこと、あれこれ情報交換を重ねながら、東屋のテーブルには次から次へと御馳走が並べられる。これを三人で食するのか.... と勿体無い気もしながら、山賊たちの胃袋はこれらを欲してやまない。




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がつがつ貪り喰らっていたら、視界の隅の方で生野菜が盛られている。その皿にサーモンや鯛の刺身が載せられる。生のアボガドが剥かれトッピングされる。そこへ熱したガーリック・オイルをジュワッと。ほぅ、屋外でこうした趣向もありなのか! 五感に訴えかけてくる味わいと食感を堪能する。




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チーズを振り掛けたペンネが、たまらん。パスタ系の一品があると、酒を選ばず会話が弾む。むかし見た映画でシチリアの紳士たちの昼食風景があったが、テーブルには山盛りのパスタ皿がいくつも置かれていた。紳士たちは組織の「ビジネス」を語りながらトマトソースを愉しんでいるようだった。山賊たちも山遊びを語りながら、これに倣おう。



いつしか初夏の濃密な闇が、あたりを包み込んでいる。ランタンの灯りは、この闇を追い払うことはできない。手元と山賊たちの顔を照らすだけだ。なんという贅沢な時間だろう。宮殿でも酒場でもない原っぱの東屋が、世界で一番しあわせな場所に思えてきた。ここには酒がある。ここには美味がある。そして山賊たちが灯すひかりがある。



宴は、まばゆい陽光の下ではなく、やはり闇の奥底で行われるのが似合うようだ。




サワさん旦那チャン。またやりましょう。
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by yabukogi | 2013-06-02 12:59