その男、薮の彼方に消ゆ

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2013年 02月 18日

いわしめし〜梅の章〜

いわしめし。
前稿で僕は、この極上の山飯との出会いを書いた。


いわしの缶詰をめしと一緒に炊込む、というシンプルな手順によって、腹もこころも満たしてくれる至高の山の飯。しかし、前項はあくまでも『序章』に過ぎず、僕も続編を予告している。その続編である。


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今回使用した材料と道具。ソロハイクを想定して1合炊きとし、ナベもPRIMUSのAluTechポット0.6Lとした。気付いたのだが1合の米を水に浸しておくのに、250mlのフードコンテナがぴったり。缶詰はマルハニチロの【いわし味付け】とした。小さな容器に、塩こん部長と梅干しが写っている。



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いわしの煮汁はもちろん、ナベに投入。



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ここへ手作りした梅干しを放り込む。

梅干し。偉大にして愛すべき食材。
実は、いわしの持つ本来の「生臭さ」を消し去るのは、ショウガではなかった。僕はショウガが大好きだ。寿司屋でも「あの野郎ガリしか喰わねぇっ、けっ!」と言われるぐらいショウガを好む。しかし、これはジンジャーの独特の風味をもっていわしの風味を覆い隠す、言うなれば分厚いカーテンでしかない。

対して、梅干しを放り込むことでその成分は生臭さを分解し、隠すのではなくてより好ましい風味に変えてくれるのだ。カーテンで閉ざすのではなく、心地よい陽射しがカーテンと窓を開かせるように。ぜひ、お試しあれ。



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今回はソロクッカーを使用しているので、風防の上縁より3ミリ低い位置にナベ底をホールドしている。
  >>参考記事『トランギア、ゴトクその後』

ぐつぐつ、ぶくぶく。
胃袋がよじれあがるような芳香を吹き出しながら、やがてナベは静まった。蓋を開ければ....

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あぁ... 10分の蒸らしを忘れるところであった。


待つに待てぬこの時間。僕に出来ることと言えば、マグに満たしたウイスキーを呷ることだけ。いわしがここまで暴力的な存在であったとは.... チャンドラーなら、なんと書いただろうか。



あえて感情を押し殺し、GSIのネスティングボウルに、盛る。敢えて、叫んだり微笑んだり、高揚したりはしない。落ち着いて、かつて僕がアイスマンと呼ばれていた頃のように無表情に、盛り、もみ海苔を振る。

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山飯の最終兵器。
僕が密かに「ツァーリ・ボンバ」と呼ぶように、ここから向こう側の味わいというものは、存在し得ない。最後の晩餐には、かつて存在した紡績通りの一龍軒の豚骨ラーメンと決めていたが、この気持ちすら揺らぎかねない。はてしなく、美味い。いわしの缶詰、安曇野コシヒカリ、塩こんぶ、麺つゆ、そして梅干しが、響き合う。もみ海苔を振ることで、涅槃の味になる。
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by yabukogi | 2013-02-18 20:18
2013年 02月 18日

いわしめし〜序章〜

いわしめし。

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シンプルで、得も言われぬ味わいをまとった、究極の山飯が存在した。



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缶詰コーナーやワゴンで売られている、イワシ缶。多くの場合、プライス88とか、100とか、お手軽。風味ラインナップも味噌、黒酢、しょうが、レモンなどと幅広く、選択に困るほど。

今回はたまたま手元にあったキョクヨーの【いわし味付・生姜煮】を使用した。脇役としてはこれまた美味しい【くらこん・塩こんぶ】、パッケージの塩こん部長が愛らしい。2合のコメを研ぎ、水は通常の炊飯時より少ない300ccとした。この水分量には訳があって、要は味の調節のためだ。缶詰の「煮汁」はもちろんのこと、少量の「麺つゆ」を加えてある。使用する缶詰の銘柄や塩加減で変わるだろう。

もっとも、ソロハイクでは1合炊きが多いだろう。幸せなカポーやあの工場長さんなら2合炊きか。ふだん使いのナベで「どこまで水を...」と覚えておく。



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材料が、ナベの中に投じられた。ナベはPRIMUSのAluTechポット1L、火器はトランギアTR-B25プラス、自作ストームクッカーもどきを使用。麺つゆ追加による味付けの加減だが、これが重要。僕の場合このタイミングで、かけ蕎麦のつゆなら、ちょい薄くね? 程度、下界でならややしょっぱく感じる。またこの時、日本酒を加えれば、尚のことよろしい。



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前半は火力調節をしない強火で炊く。


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風防の上縁部。ナベ底を舐める炎の様子がうかがえる。
ぶくぶくと音がすれば、腹が鳴り出す。たまらん。



沸騰したら、理想的には1〜2分をそのままの火力キープ。さらに...


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火力調節蓋を細く開け残し、装着。素早くナベをゴトクに戻す。


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タイマーで12分。ただし炊き込み系の場合は焦げ付きの蓋然性が高まるので、10分過ぎからは慎重に香りをチェック。逆に言い換えれば、お焦げが好きなら香ばしい匂いとちりちりの音を聞いてからナベを降ろせば良い。



蒸らしの10分間が、長い。

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蓋を開ければ、そこはパラダイスだった。もっともいわし殿には不幸な墓穴なのだが、これが生きることの残酷さなのだ、許せ。



ひとくち、いわしの身をむしる。骨ごと味わう。うぅ、たまらん。もみ海苔を振るのを忘れていて台所に立った瞬間、大豆と小豆がこのポットを発見し、中身を奪い合い、僕の口にはわずかしか回らなかった。




その後、3回の実験を重ねる。そこで得られた知見のいくつかを。

(1)いわしは、プレーンな醤油味の方がいい。
生姜煮がよろしくない訳ではなく、醤油味でしかできない高度なバリエーションを発見したためだ。このあたり、まだ写真も撮っていないので、近日公開。


(2)トッピングは、ぜったいに海苔。
針ショウガ、アサツキ、青じそ(大葉)、七味唐辛子なども試してみたが、断然ぜったい、もみ海苔。


(3)お焦げ、最高!
この「いわしめし」は、ご飯ではなく、肴だ。池波正太郎さんの物語の中で、「鮒飯を肴に熱いのを...」などのような表現に出会うことがある。飯を肴に酒を? と永年疑問に思っていたのだが、この「いわしめし」のお陰で「すっと腑に落ちた...」感がたまらない。


テントを張る。荷物の整理。
マウンテンブーツを脱いでクロックスに足を突っ込む。
担いできたビアを「ぷしゅっ!」。

その傍らでトランギアをセットし、広口ボトルかなにかに入れておいた生米やいわし缶を投入。点火。
ビア2本が空になり、ウイスキータイムが始まるだろう。空はまだ茜に染まらず、ただ金色のひかりの兆し。このタイミングで、いわしめしが炊きあがる。

まずはいわしの身をむしゃむしゃやりながら、ウイスキーが進む。飯粒を美味い美味いと言いながらかき込む。時折マグに手を伸ばしてモルトとの相性にうなずく。

最後のお焦げ。ナベ底のお焦げ。これを噛み締めながら、景色を眺める。するといつの間にか稜線を隠していたガスが取れて、彼方に、にょっきりと槍の穂先。

うん、今回のハイク最高! ってね。
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by yabukogi | 2013-02-18 11:55 | 喰い物のこと
2013年 02月 17日

影法師に会う

半日の空いた時間を、裏山に彷徨う。


林道にはトレースが無かった。脛までの雪をきゅうきゅう鳴らしながら、ゆっくりと歩く。

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無言で歩く時間。あまり意味の無い考え事が、いくつもいくつも去来する。やがて僕自身が、この地上を去来するひとかけらの塵でしかないことに気付かされ、苦笑。

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空は青い。その色彩には、意味があるのだ。

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雪原には無数の鹿の足跡。そういえば、この山みちに入るところには、鹿の防護策が張られていた。増え続ける鹿たちにも、きっと意味がある。



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HanWagのスーパーフリクション、モンベルのメリノだかのソックス、ユニクロのボクサーショーツ、ミズノのアンダーウエア上下、ストームゴージュアルパインパンツ、モンベルのゲイター、Marmotのハーフジップのシャツ、NorthFaceのフリースのベスト、Berghausのソフトシェル。書いても意味が無いが、寒くもない。



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雪の上に、もうひとりのおのれが居た。
お前に、何かの意味があるのか?

いくら問うても、影法師は何も答えない。





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ワカンを携えてきたが、最後まで背中に背負ったままだった。



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今日は名前の無いこの小ピークで、おしまい。
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by yabukogi | 2013-02-17 08:21 | ぶらぶらと歩くこと
2013年 02月 09日

悪魔のピクルス。ピクルスの悪魔。


山へも出かけず、安曇野の工房と自宅を往復するだけの、穏やかな日々。
夜になると僕は、美味いものを探し、つくり、味わい尽くす。


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青唐辛子のピクルス。悪魔のピクルス。
秋の初め頃に仕込んでおいたものが、たまらないほど美味くなっていた。


でっかい青唐辛子に、ワインビネガー、リンゴ酢、そしてスピリタス。その他、塩、生にんにく、黒胡椒、ローレル。

出来上がったのは、ピクルスの悪魔。そのまま食するには、辛すぎるし、しょっぱいし。




そこで、こんな風に。
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白ワインで蒸し上げたオイスター。そんなにむっちむちじゃないけれど、ぷりぷり。
刻んでオイスターに添え、屋外で冷やしておいた『真澄・あらばしり』とマリアージュ。





昨夜は、大量に買い込んでおいた100円オイルサーディンと....

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トランギアのアルコールストーブを自作ストームクッカーもどきにセット。
ミニトラのパンには、にんにくオイルとサーディン。温める前からすごく良い香りが漂う。


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ぐつぐつ言い出したら、弱火に。あぁ...はやくたべたい。


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悪魔のピクルスを刻んで、青ネギも刻んで。


ほうら、アップで。
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久しぶりにビアを、ラガーをぷしゅっと開けようかと数秒悩んだけれど、安いニッカの井戸水割りで。
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by yabukogi | 2013-02-09 15:35 | 喰い物のこと