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2012年 04月 28日

もつ炊き男


その男、もつを炊く。


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思い出したように鶏レバーを買い求め、水にさらして血と臭みを抜き、静かにことこと炊いて好みに味付け、酒を酌む。こころ穏やかなること、うららかな春風が穂高の奥又白の、池の水面(みなも)を撫でるがごとくである。



レバーは、1時間ほど流水にさらす。水道水が冷たい信州松本だからこそ、できることかもしれない。
つぎに60秒だけ茹でる。茹でて流水にまたさらし、あら熱を取り去って三つに切る。中はレアである。そこに血の塊を見つけたら、丁寧にほじくり除く。ハツは脂を捨て断ち割って血の塊をよく洗い流す。これで臭みは、どこにも無い。


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煮切った醤油と酒、みりんの鍋に、下ごしらえの済んだもつを投じる。
ことこと、またこころ静かに十分間だけ、炊く。


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隣のガス台ではフライパンにたっぷりのごま油を流し、ニンニクを煎る。
焼き色がついて火が通ったら、もつの鍋に混ぜてしまおう。ここで胃袋が、ぎゅううと鳴る。そのときは冷や酒をなみなみと汲む。



余談だが、家では珈琲でも茶でもウイスキーでも、いつも同じチタンのマグで呑む。すすぐぐらいで洗うことも無い。だが、日本酒をチタンのマグに注いで唇を当てると、なぜか酒が酸っぱく感じられる。なぜかは知らない。知らないがいつも感じることなので、日本酒だけは大振りの蕎麦猪口に汲む。


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冷や酒をきゅううと呷る間、ガスの火を強めておく。鍋が吹き上がるぐらいに。この一煮立ちだけで鍋をおろす。あとは1時間ほど、味が染みるのを待つ。炊き過ぎると、もつは堅くなって味わいに欠ける。いやらしいまでに照りを出して煮詰めることもあるけれど、今日はさっと炊いた。



味が染みる間、手持ち無沙汰と言うか、口寂しい。僕は何年も前に大好きだった煙草を止めてしまったので、また口ずさむ歌も知らないので、余計に寂しい。だから冷やで、もう二、三杯。
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by yabukogi | 2012-04-28 14:35 | 喰い物のこと
2012年 04月 26日

雷鳥の代わりにおまえを...

畦地梅太郎という美術家がおられた。

版画と紀行文に銀河のきら星のような美しい作品を多数、僕には言い表すことのできないあまたの「美」を創り出し、僕のようなつまらない人間のたましいまでをも、幾度も震わせてくれた。


その畦地さんの作品に、『山男』シリーズがある。ひげ面で目にひかりの凝った山男は、ピッケルを小脇に抱え肩にはロープ(当時のことだから麻のザイルだ)を掛けている。時には地べたに寝そべって、酒を舐めている。


この山男、しばしば、雷鳥を抱いている


僕が見かける雷鳥は、逃げこそしないけれど、触らせても抱かせてはくれない。しかし畦地さんの描く(版画だが描く、と書いてみる)山男は、野生のもののけのような存在なのだ。きっと、深い絆で雷鳥たちとも結ばれているようで、雷鳥たちは何も恐れること無く、山男の膝で、腕の中でやすらぎ、憩うている。


その男、これがうらやましくてならない。真似てみる。











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これは!
酷すぎる。あまりといえばあまり。
もっと美しい生き物を抱くことはできなかったのか!

う〜ん... ひげ面なのは、畦地さんもお許しになろう。





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はたして、いかがなものか.....。




しょせんその男、だめなのである。
そろそろ、山へ行け。
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by yabukogi | 2012-04-26 19:09 | ねこのこと
2012年 04月 21日

【山旅ロガー】で歩く

Androidの無料アプリに【山旅ロガー】というソフトウエアがある。GPSを使って移動の軌跡をトラッキングしてくれるものだ(有料版のGOLDもある)。また同じ作者から、このトラックデータを国土地理院の地形図と同期させる【地図ロイド】というアプリがあって、このふたつが一昨年後半あたりからハイカーたちの間でも話題になっていた。


僕自身、【地図ロイド】をスタンドアローンで使って、つまり地形図のビューワとしては愛用していたのだけれど、【山旅ロガー】でトラックを残しておくような使い方はしていなかった。ユーザ間のレビューでは「精度は完璧」「機種によっては使えない」等々、さまざまな意見があるようだ。では、僕のスマートなフォンでは、どうなのだろう?


今更ながらではあるが、備忘録として先日の散歩のときの状況と結果を記す。





機種:Sony Ericsson SO-01C
キャリア:docomo
OS:Android 2.3.4

2012年4月8日/01時間27分56秒/5.0km





天気のいい日曜の遅い朝。僕は近所の散歩に出かけた。

大門沢川という農業用水のような流れに沿って北上、途中で丘をいくつか越えて、大門沢の水源のひとつである田溝池を訪れる、往復5kmのゆるい散歩だ。



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まず、標高637mの標高点が打たれた新池北橋という小さな橋(下図のやや右下)、ここを起点とする。


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あとになって、【地図ロイド】を起動、地形図に重ねられたトラックをじっくり眺めてみた。赤い線は、往路(北へ)と復路(南へ)が重なっている。トラックは小川の左側、右岸(上流から見て右)を歩いている。


写真ではこうなる。
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僕は写真右の舗装路(地形図には記載が無い)ではなく、前方に延びる草の土手を歩いている。トラックでも、この数メートルの違いを正確に捉えているようだ。



こののち、田園ののどかな風景に今年はじめての燕を見たり、土筆が出ているのを眺めた。本稿では割愛する。





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樹林帯での衛星捕捉精度を確かめたかったのだが、広葉樹はまだ芽吹きすら無く、赤松の林は明るく、衛星捕捉に支障はなかったようだ。これは後日確認することだが、葉が茂った夏の森の中では、衛星を捕捉するか?




出発地点からの標高差100mを登って、田溝池に着く。
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池に面したウッドデッキが写っている。これを左の方向に歩いて行こう。


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【地図ロイド】上のトラックログ/地形図では、ここでわずかながらずれが出ている。僕は緩くカーブを描いて水際を歩いているが、トラックは2地点間をつなげて(ほぼ直線で)記録したようだ。


これは、【山旅ロガー】の初期設定を変えていなかったからだろう。
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ログを置いていく間隔を15m/30m/50m/70mと変えられるのだが、僕はデフォルトの50mのままとしていた。間隔を短くすればより正確なログを残せる反面、バッテリー消費がきつくなる。





池の中に突き出たような岬がある。上のログ/地形図を観ると、ここへ向う途中、僕は池の中を通っていることになる。その男、忍びか?


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衛星画像では、池の中に橋が架けられている様子が分かる。この辺は正確に捉えることができた。



池の畔のベンチにて、珈琲ブレイク。
さんぽ師匠のCFストーブで湯を沸かし、まろやかなひとときを過ごす。
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帰路、鬱蒼とした森になっている鎮守の神さまのお宮に詣でた。
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トラックを見ると、神社の境内に居たことが示されている。衛星捕捉は赤松の密生する鎮守の森レベルでも大丈夫ということか。
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丘を降りて再び田園を歩く頃、また大門沢の岸を歩く。
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写真では前方に延びる車道があるが、僕は右奥の草の上を歩いた。その間隔は10mに満たないだろう。


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ログ/地形図では、663m標高点から左下方向に歩いている。川の左側(右岸)を拾って。ここでも正確に、10m差の違いを認識してくれた。




こうやって眺めると、50m間隔でトラックデータを残してもそこそこ正確なことがわかる。今回歩いた場所が一部森の中とはいえ、おおむね開けた田園で、衛星を遮る地形などの要素は無かった。となると稜線や尾根筋の一般道、ハイキングコースなら精度の問題はなさそうだ。


裏返すと、たとえば沢地形、極端には廊下状の場所での衛星捕捉がどこまでできるか? これはGPS専用機とのチップの違いとかが明暗を分けそうだ。もう一点、15mなどと測定間隔を狭くした場合に、どこまでバッテリーがへたるか? 機内モードに設定、プラス、モバイルブースターを常時携行するとはいえ、気になる部分である。
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by yabukogi | 2012-04-21 14:08 | 山の道具のこと
2012年 04月 14日

酢を喰らえ。酸を吐け。

その男、酸性である。

そもそもアルカリ性の男、というのは、いかがなものか。
男は黙って酢を喰らい、酸を吐くのだ。
だから鰯(いわし)は南蛮漬け。
つまりは、マリネだ。


南蛮漬けの由来は、知らぬ。
なんでも大航海時代の南蛮船とやらに乗ってくるスペイン、ポルトガル人が伝えたという揚げ料理、あるいはビネガーとスパイスを効かせた調理のことだそうだが。
蕎麦屋で鴨南蛮というものもあるが、これはネギという香草をあしらった名残か。


とにかく、魚屋に背黒鰯(あるいはカタクチイワシ)のいいのが売られていた。
信州では珍しいことかもしれない。
とにかく数パック買い込んで、梅で煮付けたりあれこれ愉しもうと帰宅する。

 はっ!
 南蛮漬け。


そうだ、粉をまぶして揚げ、甘酢のタレにマリネして骨まで喰らってやろうではないか。
梅干しと醤油で煮付ける計画は反古にして、揚げることにした。じゅわー、からから。

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からりと揚がったところで、塩を振って味見する。


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 うぉお。美味である。


このままでは全量を塩味で平らげてしまいそうなので、あわてて酢にくぐらせる。
酢と言っても、酢の半分は酒と味醂と合わせて煮切ったうえで月桂樹の葉と揚げニンニクを投じ、香り付けしてある。
出汁も加え、隠し味にコンソメを少量溶かしておく。
半分の酢は薄く砂糖を混ぜて、香りの汁と合わせる。
ここへ、揚げたてのジュウジュウ言うやつをくぐらせるのだ。
くぐらせて、漬け込むのだ。

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もちろん、千切りにした人参と玉葱も。



本来ならばひと晩を休ませてやりたいが、腹が鳴ってしまってしょうがない。
二尾ばかり盛ってまた、味見する。
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酢の効き加減が浅いが美味い。
フレッシュな感じが、たまらん。
明日が楽しみである。




翌朝の食卓に、いただく。
あぁ、しあわせである。
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これでしばらくは、強い酸を吐くことができるだろう。
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by yabukogi | 2012-04-14 22:34 | 喰い物のこと
2012年 04月 09日

常念にかかる月

常念を眺める、秘蔵の写真を公開しますよ。


ほれ。
冬の宵、耿耿と照る月。
照らされて常念、気高く聳えて。
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うは、表銀座より、夏の終わり。
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気が付けばウロコ雲、
日輪も勢を失っておりますですよ。



四季折々。
心に余裕はありませんが、
まあ、こんな風に。
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by yabukogi | 2012-04-09 21:07
2012年 04月 09日

春ですなあ...

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春ですなあ。
爛漫ですよ、うららかですよ。
一昨日まで庭の桶の水が凍っていたなんて、信じられますか。


うふふ。
上の写真、後立山あたりの主稜線から高度を下げている、
とある無名尾根ですよ。

キノコ雪、雪壁、すごいですなあ。
稜線近くには短いながらもヒマラヤ襞みたいなしましまも。
撮影は四月中旬、今ごろですよ。

うはあ、登りたくありませんな。
まあ登れないと思いますが。
厳冬期は雪崩の巣、
今ごろは上の雪庇が墜ちるたびに雪崩、
つまり冬も春も雪崩のふるさと。
いやあ、たまりませんなあ。

春ですよ、若旦那。

どこか、お出かけになってみては?






おいらですか?
お盆までは、寝ていますよ。
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by yabukogi | 2012-04-09 20:52 | 里から眺める山
2012年 04月 08日

続・きもちわるい動物のはなし

きもちわるい動物を見かけることがある。


それは、何の前触れもなく、いきなりやって来る。

まだまだ寒い信州の三月、僕はホットカーペットの上に寝転んでいた。
背中が温められると、疲れが床下に逃げて行くようだ、いつしかうとうととまどろんでいた。


何かの気配を感じた。



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僕の顔のすぐ傍らに、ねこの生首が置かれていた。
身の毛もよだつ恐怖、魂まで凍える体験というものを、知った。




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ダイニングのローテーブルの下に、まあ座卓だけど、毛布があった。
だれか昼寝で使ったまま?

膝で押しやろうとしたら、にやと音が出た。

額を、狭くて狭くて、温める必要もないぐらいの額を温めている、
きもちわるい生き物が寝ていた。


顔を観察してみよう。

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醜い。
美という人類の価値からもっとも遠い地平にある、その顔。


ねこは、おのれを写す鏡なのかもしれない。
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by yabukogi | 2012-04-08 18:21 | 書くまでもないこと
2012年 04月 05日

ジョニー、樹から降りるんだ!

もう大分昔のことで数百万年が経つらしいけれど、結局、ジョニーは樹から降りた。


彼を駆り立てた衝動は何だったのだろう?


ジョニーは樹を降りた。樹を降りて森のはずれに二本の脚で真っすぐに立って、草原を眺めた。そして勇気を振り絞って、地平線に向って歩き出したのだ。最初の一歩が踏み出された時、ジョニーは森を捨てるのと同時に、安全な樹上生活を捨てるのと同時に、最初のヒトとなった。


ジョニーは、群れのリーダーとか、上位の雄が寵愛する雌にちょっかい出したのだろうか。

 おいハニー。
 あんなおいぼれポイして
 おれと遊ぼうぜ。

このため群れに居場所を失い、森を去らねばならなかったのだろうか。きっと甘い囁きで意中の雌を誘ったのだ。まだ言語を獲得する以前だろうから上のようには言わずに「おーまいすぅいーっ」と歌うように囁いたのだ。だからジョニーは、最初のヒトであると同時に、最初の詩人でもあったわけだ。


しかし、ボスのおんなに手を出すとは何とロックな生き方だろうか!
反逆の魂がふつふつをたぎり、群れの秩序もくそもへったくれも、何も彼を縛るものはなかった。何という自由。そう、ジョニーは最初のヒトにして最初のロックンローラーだったのだ。


詩人もロックンローラーも、反逆児の烙印を押されて群れという名の社会から追われる。だから社会のやり方を変えてやれ。そう、そして最初の革命家でもあるジョニーは、恋人の手を引いて歩き出した。そうだ、遠い世界へ行こう。何があるかは知らない。生きていけるかも判らない。だけど未知の世界には、きっと何かがある。それは、希望だ。そして未来だ。


 ■□■

僕はお彼岸やお盆の墓参りの折り、泉下の父母や祖父母たちに感謝を捧げると、その前の世代、さらに遠い世代の先祖たちにも祈りを捧げる。そしておしまいにこのジョニーの名を口にして、あまりにも偉大な、最初のヒトになるという運命を選んだ、いや運命すらを創り出した祖先にありがとうをつぶやく。ジョニーから僕へ、生物学的に遺伝子がつながっているかどうかは知らない。しかしヒトという存在の祖(おや)であり、また同時に二本の脚で山野を歩くことを好むハイカーのひとりとして、様式上の先駆者であるジョニーには感謝せざるを得ない。


いつの頃か、僕は彼を(彼女でもいいのだ)ジョニーと呼んでいた。理由はない。そしてジョニーの偉業を思い、その動機に思いを馳せると、偉大なる最初のヒトとしての素顔が、しぜんに浮かび上がってくるのだった。


ジョニー。
あの日の、アフリカ。
あの時、まだ雨期が完全に明ける前の蒸し暑い朝。
君は樹を降りた。
そして歩き出した。

凄いよジョニー、GJ!




 ■□■

ある日。
ナショナルジオグラフィック】が掲載していた【サイエンスポータル】のニュースを読んでいて、愕然としてしまった。


要約すると、

ヒトが二足歩行になったのは、エサを独り占めするため。

というもの。チンパンジーの群れに貴重なエサを混ぜて与えると、二足歩行して貴重なエサだけを両手で運びはじめるらしい。僕なりにわかりやすく言い換えると、

  トリスのボトルを転がしておく
  >>普通に座り込んで飲んでる

 
  トリスに山崎のボトルを混ぜておく
  >>山崎のボトルだけを両手に確保しながら二足歩行する

こういうことらしい。




するとナニかい。

ジョニーは欲得ずくで歩き始めた

って、言うんかいコラ。



音を立てて、僕の偉大なる祖先の燦然たるモニュメントが崩れはじめた。最初のヒトにして最初の詩人、ロックンローラー、革命家。未知の世界に、大冒険の航海に敢然と自由の帆を掲げた偉大なる先駆者。その実像は、トリスに混じる山崎のボトルを拾い集める、ただのアル中じゃねえか。


打ちひしがれたような気分だ。


しかし気を取り直して考える。
うん。
この方が僕の祖先として、ふさわしいような気がする。

しょうがない。
まだ明るいが、デスクの下からトリスを引っ張り出そう。







 >> 『初期人類への最初の一歩:なぜわれわれの祖先は二足歩行になったのか、チンパンジー研究から解明されたこと』
 京都大学 松沢哲郎 霊長類研究所教授らの研究グループの研究成果(サマリー)
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by yabukogi | 2012-04-05 18:02 | 書くまでもないこと