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2012年 01月 14日
その夏の日。 表銀座をぼんやりと歩いていて、龍を見たんだ。 額の汗が流れて、僕は立ち止まる。 ふうと息を吐いて眼に、額に手ぬぐいを押し付ける。 北鎌尾根から、天上沢から吹き上げて来る風に身を委ねる。 さてそろそろ東鎌の二段梯子だ、 グローブを出しておこう... 手ぬぐいを畳んで、グローブの中に手を滑り込ませて、 再び歩き出そうと前を眺めたら、龍が居たんだ。 ![]() 2012年 01月 10日
屋外でうどんを作って食する、というシンプルなことを愉しんでいる。 僕はこの冬の初めから、うどんの道を、しずかに、そしてひたむきに歩いている。うどんの道、とはきちんとした定義がある。屋外に出て、それもできるだけ標高の高い所へ出かける。ハイキングでもクライミングでもいい。そして稜線とかテラスとか雪洞とかにケツを据え、ミニトランギアで美味しいうどんを作って食する、というものだ。ここでBLACKLITEでもよくね? とか、そういう突っ込みは無しだ。とりあえずミニトラと決まっているのだから。 トランギアのアルコールストーブを持ち出すとき、風防をどうしよう? ゴトクをどうしよう? と悩みは尽きず、また多くの先人たちがその答えを与えてくれている。突き詰めればストームクッカーが最終解なのだろうけれど、あの大きさを装備に加える勇気が、僕にはない。これについては、大先輩が【ロッキーカップ】という答えをくれた。 うむ。これか。 しかし、チタンに穴開けすることを想像しただけで、鬱になる。そこで、僕はこうすることに決めた。 ![]() 左が燃料と小物のポーチ(100均)、右がクッカーとストーブ。収納袋は、GSIケトルのモノがちょうど良く転用している。 ![]() お、いろいろ出てきたぞ。 左の、針金状の脚がベース。トランギアの点火はイムコのヒットに限る。オピネルの#6炭素鋼は山へは常に。MSRのハンドル。アルコール燃料は大洋製薬エタノール5%ブレンドを100均の化粧水入れに。チューと出せるのが良いのだ。 右はミニトラの鍋にネスティングボウル(マグ)と風防、ストーブ本体は薄いシリコンシートに包んで。右奥のシリコンマットは雪の上で沈み込まぬように。手前はマグの蓋とミニトラのパン、サジ類。 ![]() 針金のベースを組み立て、風防を載せる。これはエバニューの古いアルミコッヘルを加工したもの。このアルミコッヘルを選んだ理由は、GSIのネスティングボウルにぴったりと、径も高さもちょうど良く収まるため。ここへ... ![]() ストーブをインサート、ではなくインストール。パチンとはまってしっかり固定される。さらにアルミ板を曲げて作ったゴトクをセット。 ![]() このゴトクは、まだ最適化を終えていない。できればハガネから作りたいのだが、この作業がヘビーで中断している。現ver.はやがて劣化してしまうだろうが、しばらくはこれで。 ![]() ここにミニトラの鍋を載せると、こうなる。すき間が7ミリ。これ以上でもこれ以下でも、風の影響をモロに受けたり酸欠になったりと、難しいものだ。理想を言えば、鍋の外側に、また鍋底よりも高い位置まで風防があるべきなのだが、「ミニトラの制約」という枠内で考えているため致し方ない。これが、僕の『めしトラセット2012』。 ![]() 火力調節も可能。炊飯でとろ火にしたい時、水炊きをゆっくり味わうとき、これで大丈夫。 目論見としては、安定感が欲しかったのだ。うどんの調理では、鍋を揺するようなこともある。置きっぱなしではない。今回の構成というか、一応はこれをシステムと捉えると、物理的な安定感はすこぶるよろしい。ミニトラのパンでオムレツを作ってみたが、五徳の上でパンを踊らせるような動作でも問題は感じられなかった。 重量は、 ミニトラ鍋+同パン+ネスティングのマグ、 風防+ストーブ本体+アルミハンドル、 金串ベース+ゴトク、ここまでで453.7g。 ![]() ライターやカトラリ、燃料は別。トランギアTR-B25を含んでいる上に鍋・風防もアルミだから、このくらいにはなってしまう。 1月9日17時、気温4度で400ccの水を沸かしてみた。水温は、薄氷が張っている1度以下。標高640mぐらい、風のある屋外。ストーブ点火から3分ほど待って、鍋を載せる。鍋はもちろんミニトラ。蓋は載せるだけ。6分55秒で蓋がごとごと踊りだし、沸騰していた。水温を考えればまあまあか。 それではお約束のを。 ![]() 天ぷらは現地調理ではなく、前日のもの。不味くはなかったが、やはり揚げたてのカリカリが失われていて、少し泣きたくなった。それにピンぼけ。 2012年 01月 02日
うどんを、極めた。 屋外において、ミニトランギアの鍋とトランギアのアルコールストーブでうどんを調理し、食す。このシンプルにして奥の深いテーマに取り組み、ついに極めたのだ。 伏線は、大晦日にあった。 ![]() キッチンで、僕は御鶏様を焼いていた。御鶏様というのは、放置民のひとたちの食鳥の儀式で供えられる神聖な食べ物で、ご神体と言っても差し支えないものなのだ。この御鶏様についてはバドさんの記事に詳しい。また、ミニトランギアで御鶏様を焼くという手順などはワンダさんの記事に譲る。 とにかく、大晦日から僕は御鶏様を焼いていた。正しく書くと、焼き続けていた。 蕎麦を茹で上げる間のつまみぐらいの軽い気持ちで焼きはじめた事が、天罰を呼んだのであろう。最初の御鶏様は長男坊の胃袋に収まった。肉などなかなか食べない大豆男が、欲しいと言ってかっさらっていったのだ。続けて、家人や婆さまに持って行かれ、なかなか僕の口に回って来ない。何度もミニトランギアのフライパンで焼く羽目になり、信仰とか修行というものの厳しさを実感したり。とにかく、明けて元日にまで御鶏様をお供えする。 ![]() ミニトラのパンではラチがあかない、と普通のフライパンでも。(この時は皮の焼きが足りていない) 二日の早朝。僕は裏山のてっぺんのお地蔵さんの脇に座り込んで、トランギアのアルコールストーブに火を灯し、寒さに震えながらうどんを作っていた。かつおベースの出汁に飽きはじめていたので、あご(トビウオの干物)出汁プラス昆布出汁、そして決め手は中華で使う粉末の「丸鶏がらスープ」。これらを薄めに仕立てる。ここへ解凍してある加ト吉の讃岐うどんが入り、トッピングが乗る。 肝心なのは、トッピングの最も重要なアイテムが御鶏様だったということだ。 ![]() 寒風に冷えきってしまっているが、あくまでも香ばしく、皮はぱりぱり。味付けは塩こしょうのみ。これをうどんつゆに浸し、噛む。溢れる肉汁がうどんつゆの加減と奏で合い響き合う。僕は、絶句する。 こ、これは...。 もはやうどんにしてうどんにあらず。 人の世の、地上の食べ物ではない。 天人天女たちが新年をことほぐ饗宴に供せられた聖麺。 こう書けば控えめであろうか。 幻眩にも似た感動に打ち震えながら、僕はミニトラの鍋を干した。小雪が舞う。鉢伏山方面のまだら雲が輝き、旭日があらわれる。薄暗かった山頂に、神々しい朝の光が届く。 何もかもが神話の世界で行われた秘事であったようにも感じられ、僕は物音を立てぬよう鍋を拭いパンを清め、装備を背に、無言で家路に着いた。 < 前のページ次のページ >
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