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2011年 12月 28日

魂こがして、2011。

やはり叱責を、受けてしまったのだ。


調子こいて華麗なるカレーうどんへの挑戦をここに書いたら、虎影流うどん術の師匠・にゃんこ先生から。

 ならぬ。うどんは和に限る。
 わしもかつては、うどんに欧州の味を試みた。
 これは、よこしまである。




つまり、かつてにゃんこ先生もフレンチでシチュー仕立て、あるいはイタリアンでトマトスープ仕立てのうどんに、挑戦なされた。しかしこれらは真のうどん道の道を外す、いわば「邪剣」であると看破なさったわけだ。太刀に妖気を宿し敵を惑わせば是即ち技なり、そう考え始めていた僕への、大喝である。


僕は破門となるところを、首の皮一枚でつながったのか...。
僕のうどん道はどこへ向うのだろう? 
師よ、お導きください。




師の言葉を待てず、僕は裏山へと向った。


うどんの道は、ひとの道。
仁ありて麺あり、麺ありて義あり。
麺在りて、人在り。


探求の道は、麺のように長く険しい。



ミニトランギアを、トランギアのアルコールストーブに載せる。麺は、そのへんのひと袋28円の普通麺ではない。加ト吉ブランドで知られるテーブルマーク株式会社の【さぬきうどん】、これに尽きる。冷凍ではあるが、腰が強く美味いのだ。これをひとつフリーザから持ち出し、解凍しておく。融けていた奴が、冬の信州の里山では、また凍る。トランギアの蒼い炎と、ミニトラのアルミの輝きが、熱くこれを再び融かし、煮上げる。魂、こがすように。



師よ。やはり、うどんに異国の味わいを加えてはならないのですか? 
1976年6月26日、かのモハメド・アリとアントニオ猪木は「格闘技世界一決定戦」の一環として、武道館に忘れ得ぬ死闘を繰り広げたではありませんか! 

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丸美屋の【麻婆豆腐の素・中辛】よ、そのひと袋の半分よ、讃岐うどんにアリキックを見舞え! 3分間15ラウンドの始まりを告げるゴングよ、鳴り響くがいい。伝説の第一章、その最初の一文字を、刻むがいい!


一方で脳内に、ARB・KEITHのドラムが響く。そのイントロに続いて絞り出すような石橋凌のヴォイス。スポォット、ラァイトが... 



ぐつぐつと、煮え上がる。
魂こがして。こころ、燃やして。
麻婆が香る。
とろみパウダーは加えない。


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茹で野菜、投入。ほうれん草、そしてニラ。
生卵、投入。
白ごま、投入。
青ネギ。乾燥ではなく、その場で刻んだ青ネギ、投入。

仕上げに、自作の辣油、投入。
魂こがして。こころ、燃やして。
魂こがして。こころ、燃やして。





師よ。
麻婆、シノワの味わいでは、わざ、成らず、とおっしゃいますでしょうか。
師よ、お導きを!
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by yabukogi | 2011-12-28 16:10 | 喰い物のこと
2011年 12月 18日

上高地、アルマイト鍋

上高地あたりでいっぱい飲りましょうと、忘年会の日程が組まれた。遠方から集う仲間たちと僕の地元で酌み交わせるなんて、望外の喜びだ。まだ雪も少ないしうまい具合に晴れてくれたら穂高の吊り尾根を肴に、それはそれはしあわせに満ちた時間になること、間違いない。間違いない筈が大きな過ちとなったのは、僕が釜トンネルの入り口に、鍋を忘れたことだった。



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この鍋は、宴会の前の日に購入された。直前に「鍋を用意せよ」と上意が示され、僕はイオン東松本店の2階売り場へあわてて走っている。エスカレーターに乗ろうとしたところ、Sさんという大変に美しいご婦人から呼び止められ、数分立ち話をしたりなどという出来事があり、すこし動揺していたことは否めない。とにかく人数分の水炊きが出来るサイズで、しかも軽量の鍋はこうして調達されたのだが、この動揺が伏線になっていたのかもしれない。


ひとつの背景がある。ロードマンさんという方がおられて、もちろん皆さんご存知のあのロードマンさんのことだけれども、このロードマンさんが昨年の暮れに谷川岳の一角で忘年会をなさった折り、鍋料理のためのアルマイト鍋を背負って西黒尾根を登られたそうだ。そのご様子をヤマレコの写真記録で拝見したとき、震えるような、脊髄に電流を流されたような、強い衝撃が走ったのだ。

  アルマイトの鍋とは、こんなにも美しいものだったのか...

約一年間に渡って僕を感動させ続けてきた「谷川岳西黒尾根のアルマイト」は、かくして僕自身の行いによって、上高地で再現される筈だった。アルマイトの鍋を背負った僕が梓川の畔を軽やかに歩み、小梨平に着いたら穂高の吊り尾根に向って高らかに、「ロードマン! 僕には君の背中が見えてるんだ」そう叫ぶ筈だったのだ。


その鍋が、僕の背中に無いことを指摘されたのは、八右衛門沢を渡るあたりだっただろうか。僕は霞沢岳の冬季ルートの入り口を探したり、笹薮の濃さを確認したりと忙しかった。夢中だった。その時、くわ先生の尖った声が響いたのだ。

  てめえこの野郎、鍋をどうしやがった?

嗚呼、何ということだ。タクシーを降りるまでは僕のザックに装着されていたアルマイト鍋、あの燦然たる輝きは、どこにも無い。釜トンネルの入り口で装備を整えた折り、路上に放置されいまごろ雪を被っていることだろう。けらけらけら! ふだんよろよろしてるらんどさんなど、腹を抱えて嘲笑している。

メンバーたちからの査問が始まった。鍋無くしていかに鍋を味わうのだ? そんなことは叱責されなくとも判っている。僕は追い詰められて、こう提案した。ソロクッカーを出してくれ、それぞれに「ミニ水炊き」を仕込み、それぞれ加熱すれば立派な鍋料理になる。冬の上高地で穂高を眺めながら鍋を囲む、という当初の目的は、完全に達成されることだろう。

  莫迦野郎、寝言は寝て云え。

師匠にそう大喝され、仕方なく僕は釜トンネルのゲートまで、走る準備を始めた。鍋を、あの鍋を取りに戻るのだ、雪を払って燦然たる輝きを取り戻すのだ。そう決意すれば、僕の動きは素早い。友のために走ったメロスのように、鍋のために走るのだ。その高揚感が僕を熱くさせ、躍動させ、奮い立たせた。カワムにゃんこ先生が制止するのも聞き入れず、ジャケットの下のフリースを脱ぎ、行動食を取り出し、立ち上がり、駆け出そうとしたのだ。さあ、穂高よ待っているが良い、俺は鍋と共に必ずやここに戻る! 

  神は、穂高の神さまは見捨てていなかった。

わだっちさんの電話が鳴ったのだ。タクシーの運転手どのからで、上高地入りする後続パーティーに鍋を託した、小梨平にて受け取れ、という内容のものだった。穂高の神さまが、微笑んでくださった! そして悟った。そうか、僕が釜トンネル入り口にアルマイト鍋を忘れたのは、穂高の神さまが僕を試したのだ。まことの信心をもってお山を仰いでいるのか、それとも毎年正月に穂高神社さんの境内に響く僕の柏手は空虚なものだったのか、問い掛けなされたのだ。毎年2回ほど、穂高神社さんの神主さんたちと酒を飲む機会がある。その時もちゃんとビアを注いで差し上げているし、刺身もトロのところをお譲りしてるし、そうした地道なご奉仕と崇敬が、いま実を結んだのだ。おれ、GJ。

憂いを払ったあとの酒は、美味い。空から、穂高の吊り尾根から落ちて来る粉雪が、さらさらと僕の魂を洗ってゆく。喉を降りていったウイスキーが、熱に変わる。僕のこころが、しずかにまわり始めた。舞い落ちる雪の回転に添うように、はじめはゆっくりと、まわり始めた。かたわらで、いのうえさんの指先にはフライング・ディスクも回り始めた。




   手 の ひ ら の マ グ に 温 め る ウ イ ス キ ー
   そ ら よ 穂 高 よ ま わ れ 粉 雪
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by yabukogi | 2011-12-18 08:15 | ぶらぶらと歩くこと
2011年 12月 15日

その風防、ミニトラ専用。

アルコールストーブを使用する際の風防には、空き缶をリサイクルしている。


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トランギア(TR-B25)を使い始めた頃は何も解らず、さまざまな素材や形状を試してみた。キッチンのガス台を囲むアルミのアレを切ったりもしてみた。そんなあるとき、【新・放置民が行く】のいのうえさんから『黒風防』なるモノを教えていただいたのだけれど、入手法が解らない。そこで僕は、空き缶に手を出したのだ。


500mlのビア缶を切り開いてやると、寸法にして大体205mm x 125mmぐらいのシート素材を取り出せる。こいつを2枚接合し、高さをカットしてやるとソロ用のクッカーにちょうど良いサイズが採れるのだ。どんなクッカー/ストーブ+ゴトクを使用するか等に左右されるが、この205x125を2枚使えばだいたい間に合う。


サイズの制約について少し書くと、まず、クッカーの中に収納してやるためには高さがクッカーとほぼ等しくなる(後にこの考え方は覆される)。しかしストーブの炎の高さを考慮すれば、風防自体にも高さが欲しい。この点、EPIの【バックパッカーズクッカーS】等なら何も問題が無いが、背の低いMLV550mlチタンマグ【Ti-550 CookPot】に格納するには高さを70しか持てない。実際、僕自身も金麦の缶から65mm高で使用している時期があった


風防の長さだが、アルミ缶のシート(ロール)をつないだ「巻物」状である。前述の2枚接合だとロール長400ミリ、クリップなどで留めるための重ね合わせもあるが、ぐるりと径120ミリぐらいの設置サイズとなる。ソロクッカーの多くが110ガス缶サイズ(径90ミリ)に合わせてあることが多いが、径120ミリの場合、クッカーと風防の間に10〜15ミリぐらいのすき間というか出口を持てる訳だ。このすき間の値に僕は客観的知見を持たないのだが、風防のアルミ素材が焼かれない距離であること、同時に適切なチムニー効果を得るためには、さらに突き詰めて行くべきことがらかも知れない。


とにかく、アルミ缶2本でアルコールストーブ用の風防が出来上がる。お尋ねもあったので書いておくと、カットしたアルミシートの接合にはアルミテープを使用する。これにはキッチン用など種々有るが、クルマのマフラー補修用の専用テープが耐熱仕様となっており、高価ではあるがこれに限る。接合箇所は幅10〜20ミリを重ねとし、裏表両面にアルミテープを貼る。このとき、高価なアルミテープである。幅を半分にカットしてから節約して使う。

【重要事項】
飲料によっては、缶の内部に樹脂系のコーティングがなされている。一部の缶チューハイなどで確認済み。これは炎に炙られて溶けたり燃えたりガス吹いたり、好ましくない。加工なさる時にご確認あれ。また革手袋着用をお忘れなく。




次に、風防下部にエアインテイクを設ける。エアインテイクといっても事務用の穴空けパンチでぱちんぱちんと開ける作業である。ぱちんぱちんとやる穴の数については使用者の工夫が求められる。僕はテーブルなどの平滑面で使用する場合と、小石岩塊の不整地で使用する場合とでは異なる設定が必要であると考えている。風防下端が接する形状によって結果的に生じるすき間があるからだ。


最後に塗装する。塗装には、煙突や薪ストーブに使われる耐熱スプレーを使用する。摂氏600度まで、と謳われているので炎の温度にはやや足りないが、これを吹いておくか否かで耐久性が全然違う。僕も当初は無塗装だったため2〜3回ぐらい使用すると熱でぺらぺらに劣化していたが、耐熱スプレーを吹いてやることでこの劣化もあまり見られなくなった。まあ程度の問題でしかないのだが。ついでに書いておくと、耐熱スプレーには銀と黒が有るようだが、この黒、つや消しのマットブラックで、仕上り感が半端ない。風防は使っているうちに傷や擦った後ががしがし入って来るが、未使用状態の美しさは萌え死ぬレベルだ。


塗装する際には、両端に近いエアインテクの穴を活用する。両端の穴で伸ばしてフックなどで屋外に吊るし、晴れた日に行う。僕は庭の黒松の枝を使用している。このとき錘りを下げておかないとくるくる巻いてしまう。この錘りには、親父の形見のハーケンがちょうど良い。たぶん30年ぐらい前、前穂の東壁のどこかに叩き込まれたであろう時の傷跡なんかが風に揺れているのは、親父への供養だ。






信じられないことに、ここまではイントロダクションですら無い。


ある日のこと。僕に、ひょいと無造作に、まるで煙草の一本をくれるかの如き自然な仕草で、ミニトラをくれた人が居るのだ。まさに信じられることではない。


僕は小躍りして、帰宅してすぐに弄くりはじめた。ストーブはもちろんTR-B25。スタンドはどうする? 風防どうする? そういうことを何時間も、いや翌日も翌々日も。


上に書いたように、僕はMLV550mlチタンマグなど、径100ミリぐらいのソロクッカーを使うことが多かったのだ。このサイズのクッカーだと、湯沸かしやショートパスタの調理がほとんどで、マルタイの棒ラーメン調理にはSPの極を持ち出す。生米を炊きたい時にはDUG POT-IIがある。つまり、僕のこれまでの食スタイルでは何も不自由が無かったのだ。ある場合を除いて。


ある場合とは、うどんだ。


なぜかこの冬のテーマがうどんと定まってしまって、うどんを美味しく食べるためのギアやら食材やらアイディアを整える必要があった。そこで、その人は、ミニトラをぽんとくれたのだ。


さて。ミニトランギア(TR-28T)に合わせた風防が無い。作ろう。

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従来、風防はクッカーの内部にぐるりと(立てて)入るものだと思い込んでいた。径の小さなソロクッカーだと、当然そうなる。しかし今度はミニトラですよ奥さん。(写真のストーブが古いのは手持ちのやつだから。おニュウは未使用のまま永久保存だ)



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高さは100ミリとした。スタンドはもちろん我らがストーブマイスターSanpo師匠の手になる【放置台】。非売品ながらTR-B25とのマリアージュ、これ以上のものはない。


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ジャイアントクリップ込みの重量は30.6g。なにせミニトラ仕様である。クッカーの径が違うのだ。その違いはもちろん、うどんである。径の小さなソロクッカーでは、鍋焼きスタイルでうどんを美味しく楽しく食せないからである。このミニトラ仕様ではスクリーンのワイズ設定を500ミリ、缶を3本分使用しているのだ。


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ミニトラを、こうしてやる。こうしてやる。えぇい! 思い知ったか。












おっといけない。週末の上高地キャンプのことを書き忘れた。
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大変に楽しゅうございました。詳しくは、また。
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by yabukogi | 2011-12-15 12:12 | 山の道具のこと
2011年 12月 06日

モツ煮マイライフ

写真を整理していたら、ちょうど一年前にモツを煮ている様子の記録があった。2010年12月3日のことである。



きっと、安酒に熱めの燗をつけて飲みたかったのだろう。茹で白モツを買ってきて、念のために二度茹でこぼしてから牛蒡と一緒に味噌で炊込んでいる。生モツに手を出さなかったのは、その男のふるい記憶に刻み込まれた悪夢のような体験があったのに相違ない。きっと、下拵えでやる生モツの「洗い」が足りなくて、腸の中身が放つ猛臭極臭地獄臭に巻かれて、のたうち回ったのだろう。だから一年前のこの白モツは、茹でモツから調理されている。


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茹でモツと言えども、腸壁の襞(ひだ)に残された内容物は臭みを放つものだ。あの悪夢が再現されることはあるまいが、念のために茹でこぼしておこう。たっぷりの湯でぐらぐらに煮立て、恐ろしいほどの灰汁を吹き上げながら茹で、ザルに空ける。これを流水にさらす。しかも二度繰り返す。


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さらしたのち、しっかり水気を切る。布巾で絞り上げ、さらにペーパーで包んで。これをネギと生姜とともに、純米料理酒五合を使って炊く。ことこと、出来上がるまで二時間ぐらいは炊く。灰汁はぜんぶ掬う。出なくなるまで掬う。灰汁が出なくなると手持ち無沙汰になるから、湯呑みに冷や酒を汲んで舐めながら炊く。でも熱燗は、モツが炊き上がるまで辛抱する。


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その間に、厚めの斜め小口切りにした牛蒡の灰汁抜きを行う。抜き過ぎるといけない。ざっとえぐ味がうすれたところでいい。


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頃合いを見て、モツの鍋に粉末の鶏ガラスープを投じる。牛蒡も投じる。砂糖も投じる。味加減は好みで変わる。銀杏に切った大根と人参も入れよう。このあともぐらぐらと踊らせず、静かに炊く。


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蒟蒻(こんにゃく)を忘れていた。手で千切っていちど茹ででから加える。味噌も加える。ただし味噌の全部を加えてはいけない。半分だけにする。残りは炊き上がってから、汁に溶く。あぁ、はやく食べたい。冷や酒で冷えきった胃の腑に、熱いのをすっと流し込みたい。


蒟蒻を加えて一時間ほど過ぎただろうか。もうやわらかい。臭みなど、どこにもない。残りの味噌を溶いて、器に盛って、いただく。まだ昼だというのに、これまでの冷や酒で、だいぶ出来上がっている。


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こうして一年前に、白モツはモツ煮に変じた。たいそう美味かったことだけを覚えている。困ったことに、今宵これがない。しょうがないから烏賊でも、炙る。
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by yabukogi | 2011-12-06 16:25 | 喰い物のこと