その男、薮の彼方に消ゆ

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2010年 07月 28日

漆黒の合戦尾根を

23時少し前。チャイさんから電話が入る。いわく、松本インターなう。僕の支度は済んでいたので、山靴・hanwag/CRACK SAFETYに足を入れてゆるく締め上げ、果樹園の道を小走りに急ぐ。荷は軽い。背中側のパッドを抜いたBlack DiamondのSlide30というパックに、カッパとカメラ、温泉セット、小物すこし、そして水だけは2Lが入っている。


2010年7月26日深夜、僕がピックアップをお願いした場所には、ジムニーの傍らにチャイさんがいた。ジムニーは kimatsuさんの愛車だったやつ。なんだかkimatsuさんも一緒にいるみたいな気分だ。国道147号、安曇野を走るうちに日付けが変わる。途中で水とおにぎりを買い足す。有明の高原を抜けて対向車もいない県道を中房川の渓谷に突っ込み、中房第一駐車場にジムニーを停める。車中にねむるひとを目覚めさせないよう忍び足でコース入り口へと向い、7月27日午前01時03分、最初の一歩から漆黒の合戦尾根へ。沖天に煌々と輝く満月のひかりも、この樹林帯のコースには届かないのだ。急登に汗が噴き出す。タオルで拭き拭きひたすら登っていく。時折り熊除けに笛を吹く。木の根を掴んで、花崗岩を乗り越えて、どんどん高度を稼ぐ。


富士見ベンチで大休止。おにぎりを取り出してかぶりつく。セブン-イレブンの「スパイシーカレー炒飯おにぎり」だったか、これが美味い。尾根の登りとしては6割と言うところか、ここまでで500ccのナルゲンが空に。夏の昼間だったら軽く2Lは飲んでるだろう。さすがに夜は、涼しいのだ。


合戦小屋では小休止。風が強い。稜線方向は真っ暗で何も見えないが、満月を覆い隠しながら吹き流れていく雲のスピードがはんぱじゃない。地鳴りのような響きが頭上の樹々を揺らす。上の方、大丈夫かな? うん、予定通り行こう。うなずき合って、さらに樹林帯を登る。ダケカンバ帯をひと登りして合戦ノ頭を過ぎる頃、頭上の梢がなくなっていることに気付く。森林限界を抜けたのだ。真っ暗だった空は、いつのまにか群青を帯びている。夜明けは近い。

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進行方向にひかりが灯った。まだ暗いながらも朝を迎えた燕山荘が間近に仰がれる。手前にヘッデンを灯すのはチャイさん。ふと見れば、山荘の回りに、テン場付近に、稜線の蛙岩付近にもヘッデンの灯りが揺れている。やがて夜の闇を薄く剥がしていくように足元が明るくなってきた。燕岳のシルエットもくっきりと浮かび上がる。

>> 稜線の朝のひかり...
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by yabukogi | 2010-07-28 12:21 | 北アルプス・常念山脈
2010年 07月 24日

河童、妖怪、黒部の山賊

以前から読みたかったのだ。


たまたま立ち寄った書店で、三俣蓮華の山荘のあるじ、伊藤正一さんの『黒部の山賊』を見つけてしまった。これは永らく入手困難だった本で、近所の古本屋で見かけても当然にして高価である。


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くわっ、復刻か!? 実業之日本社からの平成6年に新版での刊行である。これまで何故に出会わなかったのか。表紙はもちろん、畦地梅太郎さん。たまらん!



 

>> 本当に読みたかったのだ...
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by yabukogi | 2010-07-24 16:00 | 書くまでもないこと
2010年 07月 21日

炎天に干し上げろ。

梅雨の始めに漬け込んだ梅が、いい感じになっていた。


塩分18%。きりりとしょっぱい僕の梅干。紀州産南高梅の3Lサイズの4kgのうち2kg分、もうひとつは地元産品種失念の4kg分を干し上げるのだ。果肉の厚い南高梅は赤紫蘇なしの白梅仕立て、品種失念は赤紫蘇で赤く染め上げた。どちらも甘く香しい特有のフレイバーを放っている。

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この状態で炎天下に、さらす。強烈な夏の紫外線が梅の肌を焼く。ときおり、丁寧にひとつずつころっと裏返す。昼間、水分は蒸発して濃厚な味と香りをまとう。夕刻陽が傾くと、こいつらは自身から出た梅酢エキスに戻される。焼いた肌をひと晩、休ませるのだ。夜のあいだに梅酢をたっぷり取り戻した梅は、また数日、お陽さまに炙られる。時には屋根の下で風を受け、夜干しにされることもある。こうして日ごと夜ごと、美味くなる。

 >>続きも、しょっぱい...
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by yabukogi | 2010-07-21 13:27 | 喰い物のこと
2010年 07月 19日

波打ち際の小さな我が家

仲間たちはみんな、海抜3,000mの稜線に向っていた。
一方の僕は、何を間違えたのだろう。


時には、海抜1メートルの海辺に寝転んで、空を見ていた。
あるいは、海抜ゼロメートルの海面に仰向けに浮かんで、雲を眺めていた。


連休初日午後。北へ向う高速道路を、混雑を見ることも無くひた走る。いくつもの長いトンネルを抜け、千曲川の大きな流れを見て、飯綱や黒姫の山裾を回って、妙高の高原を過ぎて頸城に入れば、やがて海は近い。上越のまちの向こうに、信州にいては絶対に見ることのできない水平なラインが見えると、こどもたちまでわおぅと叫ぶ。


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波のない穏やかな浜に降りる。流木がいくらでもあったので、これを借りてタープを立てる。

>> 浮かんでいただけ。
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by yabukogi | 2010-07-19 16:56 | 書くまでもないこと
2010年 07月 13日

華麗なる魚肉炊込飯

【注記2011/03/10】
本稿は、当初「喰い物のこと」カテゴリとしていたが、「One Pot Cooking」カテゴリに配置する。One Pot Cookingの概念は、山岳など屋外環境において、ソロクッカーと小型軽量ストーブを使用し、常温携行または現地調達可能な食材のみを素材とし、合理的に簡潔な手順によって感動的に満足度の高い食事内容を実現しうる調理プロセスのことを指す。以上、注記。



 ◆◇◆


山で飯を炊く夢を、ときおり見るのだ。


山といっても、稜線の方まで上がる山じゃない。裏山のふところに寝転がって文庫本を読むとか、沢にタープを張って一日を過ごすとか、そんなまろやかな時間が流れる、山。

なぜか土筆(つくし)がたくさん出ていて、それを摘んでは鍋に放り込みながら、飯を炊く夢。白い飯のときもあった。生の秋刀魚を炊き込んだ飯のこともあった。とにかく数回、飯を炊く夢。いっそ夢の通りにしてしまえ。雨の日のランチに、山でやるような飯炊きの儀式を行う。それも思いっきり華麗なるやつだ。

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>> それこそ華麗なる展開だ...
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by yabukogi | 2010-07-13 15:56 | One Pot Cooking
2010年 07月 12日

高温多湿高蛋白質

この国には、やけくそ、っていう美しい言葉がある。


何かを失うまい、決して損なうまいと律して生きてきた道筋の、レールがガチャリと外れてしまった直後の振る舞いだ。何かを信じて生きてきたその「何か」が、幻であったことを知ってしまった瞬間の行いだ。やけくそな行動のあとには、「あとは野となれ山となれ」という態度を取ることが多いけれど、それも頷けるというもの。

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もう今だから小声で書くけれど、昨年暮れに、こんなことを誓った。
【もうしません、大盛りお替わり、二人前】

過ぎし冬のある日、僕は生活習慣病という烙印を押されたのだ。当然このままではお山にも行けなくなる、と危機感を抱く。そこでこの半年間、高脂肪・高エネルギ・高タンパクな食生活を遠ざけてていたのだ。

>> 本当にやけくそじゃない...
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by yabukogi | 2010-07-12 11:56 | 書くまでもないこと
2010年 07月 08日

山蛭夢潭

ヤマビルたちの夢を見た。


夢ともうつつとも知らず、丹沢かどこかを無防備に歩いてきたようだ。帰ってから家の中に、無数のヤマビルを放ってしまったらしい。それから数日。普通は2週間を要するヤマビルの産卵が、この梅雨の異常なまでの蒸し暑さに促されたのか、早くも床にも壁にも衣類にも、冷蔵庫の中にまで卵が産みつけられている。始末が悪いことに、こいつらが孵化して再び産卵している。このヤマビルは亜種なのか、イトミミズのように細く小さい時期がある。床から壁から無数に立ち上がり、舞い踊り、身体をくねらせている。その数は数万とはいわず数億だろうか。


こどもたちも犠牲になっている。このヤマビルたちは毛穴を好むらしく、こぞって毛穴を目指す。全身の毛穴を埋められ吸われて、全身がぱんぱんに膨れ上がって苦しんでいるこどもたちを見るのは、忍びないものだ。毛穴の中で成長すると、皮膚を押し広げるように膨れ、皮膚ぜんたいが体積を増してしまうのだ。ヤマビルと流れてくる血液でまだらの皮膚になったこどもたち。


薬局に行ってヤマビルをころすクスリを求めようとする。するが、薬剤師は「そこまでひどければ、皮膚を剥がすしかない」とにべもない。松本には本来ヤマビルは生息しないから、専門の医師もいないと言う。店内の床に僕の身体から、つまり僕の毛穴から抜け出したヤマビルが這い回っていないか、会話もそぞろに床を見ている。いたたまれなくなった僕は、薬局を出て家に帰る。家族たちは徐々に元気も無くしてきて、太ったヤマビルをつまんで潰したりも、しなくなっている。


引っ越しを決意する。もう、この家には住めないのだ。柱の中奥深く、壁材の裏側にも、畳の芯にも、びっしりと産みつけられ増える一方のヤマビルたちは、もう駆除できない。この家は、焼くしかないのだ。


血を流したまま外に出るのが、平気になってきた。包帯で顔や素肌を隠すこともしなくなってきた。もういいよ、家から持ち出すものも、何も要らないよ。身体中に数万数十万のヤマビルを寄生させたまま、家族はふらふらと外に出る。いったい、どこへ向えば良いというのだろう。

  ◆◇◆

だんだん、僕のこころは、壊れていくようだ。
山に入って治療しなければ。

だれか、助けてください。休みをください。
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by yabukogi | 2010-07-08 16:38 | 書くまでもないこと
2010年 07月 06日

雨上がりの葉陰に

夜。聞こえてくる蛙たちの声が変わった。


春の田植えの頃のげこげこ、げろげろは繁殖のための求愛の合唱であった。のんびりしているようでも、間近で聞いていると切羽詰まった響きを感じる。それはまあ、蛙に限らずとも同じようなものか。


夏を迎えて、小さな雨蛙たちが馬鈴薯(ばれいしょ)畑の葉陰に暮らしている。馬鈴薯の「樹」は高層マンションのようで、それこそ、びっしり。他の畑を観察するとここまで多くはないのに、そこの一角だけが人気のようだ。こいつら、この春の産卵での親世代だろうか。それとも、つい先頃たんぼから上がってきた子世代だろうか。鳴き声が軽やかで、ころころ、ほろほろ鳴いている。夜明けには雨も上がっていたようなので、葉陰に暮らすこいつらの顔をそっと窺ってみたのだ。


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なかなか凛々しい目鼻立ち。

>> 同情してくれ
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by yabukogi | 2010-07-06 10:12 | ぶらぶらと歩くこと
2010年 07月 01日

何でも味噌で焼いてやる。

味噌が好きなのだ。

味噌汁、味噌煮はもちろんのこと、胡瓜にも味噌。焼き茄子にも、味噌。しかし味噌の味噌たる醍醐味を堪能するならば、【焼き味噌】を越える香りと味わいは、あるまい。炙った味噌の悪魔的な美味を讃えることはできても、例える言葉は存在しないほどだ。


秩父の谷の底で何日も過ごしたことがある。担いできた文庫本を読み終えてしまって、さて明日は街に戻ろうか、と思案していた。本音はラーメンばかりの食事に飽き飽きしていたのだろう。そんなおり、降りてきた釣り師のおじさんに「まだ居るのか?」と尋ねられ、返事を口ごもっていると袋から魚が取り出され、山女5匹を渡された。もしかしたら岩魚か鱒だったかも知れない。受け取った時に、泥だらけだ、と思ったら味噌を塗りたくってある。ワタが抜かれた腹にも味噌が詰め込まれている。焼いて喰えば良い、というようなことを言われ、アルミホイルも貰った。焚き火は消えていたけれど、おじさんが去ってから火を起こして、ホイルで包んで焼いたら美味くて涙が出た。


この日僕は、味噌に魂を売ったのだ。


味噌味噌と言っても、バリエーションを作ることができる。春先の蕗味噌はよく知られるが、本稿では【青唐辛子味噌】というものを使う。当地で【こしょう味噌】とも称するのは、唐辛子の仲間を「こしょう」と呼び「小生」の字を当てるところからそのまま来ている。盛夏に出回る青唐辛子を刻んで炒めて味噌にまぶす手順などは、旧blogにも書いた。そのときのこしょう味噌が一年ものとなり、いい感じになってきたので試してみるのだ。



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若鶏のもも肉をこしょう味噌で5日間を漬け込んで炙り上げた、の図である。

 >> 炙る、炙る... 味わう
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by yabukogi | 2010-07-01 09:03 | 喰い物のこと