その男、薮の彼方に消ゆ

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カテゴリ:喰い物のこと( 70 )


2013年 04月 07日

ねんぼろの春

裏の丘の一角、くぬぎ林の地面に、ねんぼろが生えている。

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「ねんぼろ」とはヒガンバナ科ネギ属の、要するに野生の葱である。野蒜(のびる)の方が一般的で、ねんぼろは信州での呼び方。土手やあぜ道、この列島のどこにでも、にょろにょろと生えている。ふるくは万葉の歌にも登場する身近な食材。いまの「はしり」の時期なら、玉葱状の球根から葉っぱまで、ぜんぶ味わえる。

春だ。こいつを味わおう。



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醤油に鰹節、あるいはマヨネーズ和え、いろいろあるだろう。僕は、青唐辛子を漬け込んだ信州ならではの味わい、『こしょう味噌』を使ってみる。

(註・松本あたりでは唐辛子のことを「こしょう」と呼び、焼き鳥屋なんかでも七味くれ! の意味で「くしょうくれねぇか」などと言う)


この『こしょう味噌』だが、我が冷蔵庫の奥には10年ものも秘蔵してある。これは長男坊主が生まれた年にこしらえたやつで、濃厚にして芳醇、コニャックのような芳香もまじえ馥郁たる香りを放つ、まさにヴィンテージ。こうした長期保存が可能な理由は、活きた本物の味噌を使うこと、そして火入れしないこと。

この青唐辛子の味噌、肉類との相性に破壊的な威力を発揮する  >>過去記事  のだが、さておき今回は肉ではなく「ねんぼろ」が主役だ。



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ねんぼろは泥を落としよく洗っておく。



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エシャロットのようにかぶりついても良い。が、今回は粗く刻んで愉しむ。



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時間を置いてはいけない。葱のなかまの味わいは、刻んだ瞬間に揮発してゆくのだ。僕が時々、おもに豚骨ラーメンという場面において、「葱はいかなる場合においても青ネギで、しかも絶対に刻みたてでなくてはならない」と主張するのは、こういう理由からだ。

とにかく、青唐辛子の味噌に刻んだ端から混ぜ込んでいく。


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ねんぼろを潰さないように、味噌で包むように丁寧に混ぜて...




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あぁぁ..... 

酒が進んでしょうがない。一升ぐらい、ぺろりだ。そのあとの飯も、二合。



でもね、器に盛ってテーブルに出す時は、ごくわずかな量に留めておく。大半は中が見えないタッパに詰めて、先に冷蔵庫に隠しておくんだ。家人やばあさまには「これしか、無い」と思わせておくようにね。
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by yabukogi | 2013-04-07 08:27 | 喰い物のこと
2013年 03月 18日

かきめし〜瀬戸内咆哮編〜

冬が終わろうとしている。

つまり、牡蛎のシーズンが終わろうとしていることに、気付かされるのだ。もっとも、夏になれば、パリのセーヌ河岸で牡蛎を楽しむ、そんな若き日のヘミングウエィみたいな趣向も悪くない。

が、僕はパリどころかグアムにもハワイにも、ナリタにすら行ったことがない。



この冬は、鍋物で3回ほど牡蛎の姿を見た。出汁も出ていた。しかし僕の舌も胃袋も、牡蛎にはたった一度しか出会えなかった。


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そうか。奴らが居る限り、牡蛎は喰えんのだ。
豆ども(こどもたち)の居ないところで、存分に牡蛎を楽しむことにしよう。



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キッチンで牡蛎を洗う。三陸ものを探したが売り場になかったので、瀬戸内産を買い求めたのだ。

笊に開けて水気を切っている間に、ミニトランギアのナベで酒、醤油、白だしのつゆを温める。煮立ったところに牡蛎の身を放り込み、3分間だけ、加熱する。白出汁を使ったのは、ネコの手も借りたい師匠からの助言だ。



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火が通ったようだ。



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煮汁に漬けておくと身が痩せてしまうので、煮汁を密閉容器に分けておこう。容器は冷蔵庫へ。



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身は、冷やしてからテルモスのフードコンテナーJBI-380に。飯を炊く現場まで保冷しておく。


 ■□■

さあ、邪魔な奴らがが居ないフィールドで、牡蛎を楽しむのだ。


PRIMUSのAluTechポット1Lには無洗米、ブナシメジ。ここへ...
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密閉容器に分けておいた牡蛎の煮汁が入る。一滴も、無駄にしない。そしてトランギアのストーブに炎が点されるのだ。



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ぶくぶく...。ううぅ、香ばしい。


後半は約束通り、弱火で12分。
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火力調節蓋を細く開け残し、最適な火力を得る。陽光の下、青い炎は見えない。


うむむ。
待てないが、待つのだ。


12分を経て、火から下ろす。蓋を取り、冷たいまま運んできた牡蛎の身を投じる。
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あぁっ。なんというビジュアル。なんという香り。ここからさらに15分蒸らさねばならないと言う地獄の待機時間。



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そして、時は満ちた。



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盛れ。かぶりつけ。味わえ。噛み締めろ。呑み込め。ほら、もうひとつ!




そして、蒼空に向かって叫ぶがいい。
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by yabukogi | 2013-03-18 06:00 | 喰い物のこと
2013年 03月 16日

貝めし〜北海旅情編〜


十代の終わりから何度か、僕は各地を放浪の旅に過ごしていた。

北海道の函館から歩き始めたその年の旅。小樽、札幌を過ぎて旅の費用は尽き、帰京するか否か、悩みながら海辺を歩いていた。寝床はテントだからなんとでもなる。しかし空腹だけは我慢ならず、真剣に、旅を止めて帰ろう、そう思い始めた頃だった。

ある小さな港町の水産加工場で、僕は臨時の職を得た。

きっかけは、ひとりの小柄なおばちゃんが、街道を歩いていた僕に話しかけてくれたことだった。でかいザック、たしかMILLETのフレームが入ったやつだった。そんな姿を見ることも少ない北海道の浜辺で、おばちゃんは僕に冷たい飲み物と飯を恵んでくれて、「あたしが居る加工場を紹介してやろうか?」と連れて行ってくれたのだった。

聞けば、夏にホタテの赤ちゃん貝を採ったり選別したり、人出が足りなくなるそうだ。

仕事場は港の倉庫のようなところで、テント暮らしで良いと言う僕のことばは退けられ、空いている倉庫の宿直室のような部屋をあてがわれた。水平線を窓から眺める、快適な部屋だった。朝は夜明け前に起きるが、夕方は早く解放され、僕は窓からの眺めに飽きもせず、時の移ろいを愉しんでいた。

ここでの日々を書けば、ひとつの物語になるだろう。でもそれは本稿の趣旨じゃない。



港町で暮らした日々で、僕はホタテ貝の炊込みご飯をよく作った。自分の分だけでなく、大きな釜でも炊いた。目の前の海の豊穣な恵みに慣れ親しんでいるはずの漁師さんやおばちゃんたちも、僕が炊いた炊込みご飯を「美味い美味い」と、誉めてくれた。そんなこと、すっかり忘れていたけれど、缶詰売り場でホタテの貝柱缶を見つけた時に、どどどどって、思い出してしまったんだ。

次なる缶詰炊込みご飯は、貝柱。貝めし。




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売り場で見つけた【ニッスイ 貝柱ほぐし身】缶。これを、「かにめし〜安曇野望郷編〜」の時と同じよう、わさび漬けと一緒に炊き込んでみよう。


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安曇野コシヒカリ2合を研いでおき、Primusのアルテックポット1Lで段取りする。缶詰をオープンしたら、貝の煮汁だけを、ナベへ。


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旨味の補強に、こんぶ茶をひと匙投入。


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醤油ではなく、蕎麦つゆをたらりと。味の加減は「かけ蕎麦なら、薄くね?」っていう感じ。



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ここへ。

悪魔の晩餐会の主役ともいうべき、わさび漬け。人類三大発明を凌駕する、文明の英知の結晶。
たっぷりと、さあ!



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今宵も働け、僕のトランギア。
青き炎を噴き上げ、美味なる飯を、炊き上げろ!


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クッカーの右、缶詰を、ござんなれ。
貝柱は缶の中に鎮座ましまし、投入の瞬間を静かに待っている。


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強火で約10分、弱火で12分。ここで消火するのだが、貝柱ほぐし身を、湯気立てる飯の上に、ほらっ!





蒸らしを終えて、貝柱ご飯、食卓へ。

ちびどもが蹂躙を始める。
サファリパークの「エサの時間」のようだ.....

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僕が盛る頃には、貝柱は姿も影もなく、旨味をまとった味わいの飯が残るのみ。

嗚呼、それでも美味い!



誰も居ない日を選んで、もう一度こしらえ、味わってみよう。(号泣
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by yabukogi | 2013-03-16 17:19 | 喰い物のこと
2013年 03月 10日

かにめし〜安曇野望郷編〜

ソロクッカーに生米と缶詰を放り込んでの「炊込み炊飯」は、なおも続いている。

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先般は、【いわし味付け】缶詰+梅干し最高! と書いた。もうこれは僕のエンディングノートに書いておこう、僕の墓石は【いわし味付け】缶のデザインにしてくれ、と断言できるレベルだった。


ところが、味わいの更なる遠くの地平線というものがあった。

求道とは、かくも遠い道なのか...。いや、醍醐味と言うべきか。僕はさらに美味いものを見つけてしまったのだ。もう「いわしめし」とか単なる山食のひとつじゃね? と表現をトーンダウンさせていただきたい。



やはり、缶詰なのだ。そして、安曇野の味わいがプラスされたのだ。どのくらい美味かったかをお伝えしたくて、これを書く。


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わさび漬け。安曇野の清らかな湧水が育んだ山葵を惜しげもなく使用している、飯の友だ。わさび漬けのことは、あの工場長さんと「断然、小口だ」「いや、望月だ」と果てしない論争を重ねてきたので、ここでは繰り返すまい。とにかく、わさび漬けなのだ。今回は「葉わさび」を使用した。

そして缶詰は、蟹である。カニである。海の底のいやらしい節足動物である。


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アルミ・ハードアノダイズドされたソロクッカーに、1合の米、【マルハ まるずわいがにほぐしみ】である。実は、かに肉は、蒸らしの時に混ぜ込む方が美味いのだが、写真を撮っていない。


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ここへ、わさび漬けをひと箸、放り込む。そう、酒粕ごと。



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塩気を足すのに、塩、こんぶ茶、醤油、粉末鰹だしのいずれが好ましいか? これは好みの問題もあろうが、僕はそばつゆ。それもいつものじゃない「安曇野そばぶるまい」のうんまいつゆ。

トランギアのアルコールストーブに、火が点される。音もなく立ち上がる炎が、揺らめきながら味わいの予感を奏でる。






蒸らしの時間中。

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待てんのだ。湯気に混じる酒粕の香り... トランギアのアルコールストーブは弱火にされながらも、小さな炎がナベ底をちろちろと炙っている。その熱が酒粕の芳醇な香りを撒き散らしているのだ。これが「飲め」「呑め」と囁きかけてくる。

我慢できず、わさび漬けを肴にちびりちびり、やり出す。


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炊けぇーた。もの凄い香り、ビジュアル、僕の胃袋がふくれあがり裏返り、僕を呑み込もうとしている。


マグに盛り、訳の解らない叫びとともに、海苔を振る。

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くああぁあぁ。

混ぜる。

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もう.... これは.......








蟹肉は、蒸らし時にそっと載せ、いただく時に混ぜる方が断然良い。ただし缶詰のスープとわさび漬けは、トランギア点火時に投入のこと。
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by yabukogi | 2013-03-10 10:03 | 喰い物のこと
2013年 02月 18日

いわしめし〜序章〜

いわしめし。

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シンプルで、得も言われぬ味わいをまとった、究極の山飯が存在した。



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缶詰コーナーやワゴンで売られている、イワシ缶。多くの場合、プライス88とか、100とか、お手軽。風味ラインナップも味噌、黒酢、しょうが、レモンなどと幅広く、選択に困るほど。

今回はたまたま手元にあったキョクヨーの【いわし味付・生姜煮】を使用した。脇役としてはこれまた美味しい【くらこん・塩こんぶ】、パッケージの塩こん部長が愛らしい。2合のコメを研ぎ、水は通常の炊飯時より少ない300ccとした。この水分量には訳があって、要は味の調節のためだ。缶詰の「煮汁」はもちろんのこと、少量の「麺つゆ」を加えてある。使用する缶詰の銘柄や塩加減で変わるだろう。

もっとも、ソロハイクでは1合炊きが多いだろう。幸せなカポーやあの工場長さんなら2合炊きか。ふだん使いのナベで「どこまで水を...」と覚えておく。



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材料が、ナベの中に投じられた。ナベはPRIMUSのAluTechポット1L、火器はトランギアTR-B25プラス、自作ストームクッカーもどきを使用。麺つゆ追加による味付けの加減だが、これが重要。僕の場合このタイミングで、かけ蕎麦のつゆなら、ちょい薄くね? 程度、下界でならややしょっぱく感じる。またこの時、日本酒を加えれば、尚のことよろしい。



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前半は火力調節をしない強火で炊く。


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風防の上縁部。ナベ底を舐める炎の様子がうかがえる。
ぶくぶくと音がすれば、腹が鳴り出す。たまらん。



沸騰したら、理想的には1〜2分をそのままの火力キープ。さらに...


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火力調節蓋を細く開け残し、装着。素早くナベをゴトクに戻す。


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タイマーで12分。ただし炊き込み系の場合は焦げ付きの蓋然性が高まるので、10分過ぎからは慎重に香りをチェック。逆に言い換えれば、お焦げが好きなら香ばしい匂いとちりちりの音を聞いてからナベを降ろせば良い。



蒸らしの10分間が、長い。

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蓋を開ければ、そこはパラダイスだった。もっともいわし殿には不幸な墓穴なのだが、これが生きることの残酷さなのだ、許せ。



ひとくち、いわしの身をむしる。骨ごと味わう。うぅ、たまらん。もみ海苔を振るのを忘れていて台所に立った瞬間、大豆と小豆がこのポットを発見し、中身を奪い合い、僕の口にはわずかしか回らなかった。




その後、3回の実験を重ねる。そこで得られた知見のいくつかを。

(1)いわしは、プレーンな醤油味の方がいい。
生姜煮がよろしくない訳ではなく、醤油味でしかできない高度なバリエーションを発見したためだ。このあたり、まだ写真も撮っていないので、近日公開。


(2)トッピングは、ぜったいに海苔。
針ショウガ、アサツキ、青じそ(大葉)、七味唐辛子なども試してみたが、断然ぜったい、もみ海苔。


(3)お焦げ、最高!
この「いわしめし」は、ご飯ではなく、肴だ。池波正太郎さんの物語の中で、「鮒飯を肴に熱いのを...」などのような表現に出会うことがある。飯を肴に酒を? と永年疑問に思っていたのだが、この「いわしめし」のお陰で「すっと腑に落ちた...」感がたまらない。


テントを張る。荷物の整理。
マウンテンブーツを脱いでクロックスに足を突っ込む。
担いできたビアを「ぷしゅっ!」。

その傍らでトランギアをセットし、広口ボトルかなにかに入れておいた生米やいわし缶を投入。点火。
ビア2本が空になり、ウイスキータイムが始まるだろう。空はまだ茜に染まらず、ただ金色のひかりの兆し。このタイミングで、いわしめしが炊きあがる。

まずはいわしの身をむしゃむしゃやりながら、ウイスキーが進む。飯粒を美味い美味いと言いながらかき込む。時折マグに手を伸ばしてモルトとの相性にうなずく。

最後のお焦げ。ナベ底のお焦げ。これを噛み締めながら、景色を眺める。するといつの間にか稜線を隠していたガスが取れて、彼方に、にょっきりと槍の穂先。

うん、今回のハイク最高! ってね。
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by yabukogi | 2013-02-18 11:55 | 喰い物のこと
2013年 02月 09日

悪魔のピクルス。ピクルスの悪魔。


山へも出かけず、安曇野の工房と自宅を往復するだけの、穏やかな日々。
夜になると僕は、美味いものを探し、つくり、味わい尽くす。


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青唐辛子のピクルス。悪魔のピクルス。
秋の初め頃に仕込んでおいたものが、たまらないほど美味くなっていた。


でっかい青唐辛子に、ワインビネガー、リンゴ酢、そしてスピリタス。その他、塩、生にんにく、黒胡椒、ローレル。

出来上がったのは、ピクルスの悪魔。そのまま食するには、辛すぎるし、しょっぱいし。




そこで、こんな風に。
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白ワインで蒸し上げたオイスター。そんなにむっちむちじゃないけれど、ぷりぷり。
刻んでオイスターに添え、屋外で冷やしておいた『真澄・あらばしり』とマリアージュ。





昨夜は、大量に買い込んでおいた100円オイルサーディンと....

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トランギアのアルコールストーブを自作ストームクッカーもどきにセット。
ミニトラのパンには、にんにくオイルとサーディン。温める前からすごく良い香りが漂う。


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ぐつぐつ言い出したら、弱火に。あぁ...はやくたべたい。


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悪魔のピクルスを刻んで、青ネギも刻んで。


ほうら、アップで。
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久しぶりにビアを、ラガーをぷしゅっと開けようかと数秒悩んだけれど、安いニッカの井戸水割りで。
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by yabukogi | 2013-02-09 15:35 | 喰い物のこと
2013年 01月 27日

真冬のアヒージョ

こぼれるようなむっちむちの、白いぷりんとした身を、こころゆくまで味わい尽くしたい。
時間をかけ、愛撫を加えるかのようにその身を転がし、しゃぶり尽くしたい。


あたたかくて心もぬくめてくれそうな、アヒージョと言うスペイン風の調理法を教わったので、寒い部屋で試してみることにした。海老である。牡蛎である。そう、僕の好みから言えば、牡蛎である。ところが信州では、新鮮な海老や牡蛎をひょいと入手するのも難しい。

あぁ... 牡蛎を食べたい...。山が近いのは嬉しいが、海はかくまで遠し。


えぇい。地鶏じゃ!


牡蛎への執着を振り払うように地鶏の砂肝に照準を定め、ひとパックを求める。持ち帰り、塩と酒をたっぷりにまぶす。1時間ほど置いてからこれを流水で洗う。もみ洗いしてから切り分け、さらに切り込みを入れる。ペーパーで水気を拭っておく。

この間に、EXバージンオイルでクッカーを満たし、たっぷりの国産にんにく、庭の鷹の爪、月桂樹の葉を投じておいた。
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実はこの同じ時、金沢の友人Jollyが【牡蛎祭り】なるけしからんイベントに出かけ、炭火で牡蛎を焼いて喰らおうとしていたことが判明、これは後述する。


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ミニトラのナベにさきのにんにくオイルと追加の生にんにく、下ごしらえした砂肝を放り込み、スパイダーの火力全開で加熱開始。ただし、アヒージョという調理法は一気に高温加熱するのではなく、後半は余熱で火を通す趣旨のようだ。オイルがあたたまってぐつぐつ言い始めたところで、弱火に。


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良い香りである。たまらん。

ん?
なんだか、砂肝の裏側に加えた切り込みを見ていると気持ちが悪くなってきた。悪魔のエラ、とか悪性生物の臓器みたいなものを連想させるではないか....


しかし良い香りである。火が通ったようだ。
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グロテスクを超える、味と香り。最高!


で、一方の金沢のJollyである。
僕が砂肝を味わい尽くしてフォークを置いた瞬間。
けしからんことに牡蛎を堪能している様子を送りつけてきた。
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「アヒージョ最高!」「牡蛎うまー」などのメッセージを添えて。くやしい。


砂肝で満たされてしまったおのれの敗北感たるや...
これは北陸に出向いて砂肝の敵を牡蛎で取らねばなるまい。






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あぁ...寒い。お城の天守閣も震えていらっしゃる。この季節なら、山のテン場へも生のモツ類携行が可能だろう。オイルはナルゲンの広口に入れて運べば良いし、残ったオイルはバゲットで拭ってしまえ。
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by yabukogi | 2013-01-27 08:18 | 喰い物のこと
2013年 01月 19日

塩+ごま油+生にんにく

鶏レバを喰らうに「塩とごま油が最強」と力強く宣言したところ、sijimi001さんというお方から「にんにくも!」とお教え頂いた。


ふむ。にんにくも、悪くない。
そこで先日の焼き焼きでは、鶏レバをこの方式で試すことになった次第である。


いつものように七輪に豆炭を熾し、竹串に刺した新鮮なレバを載せる。じゅうじゅう音を立てている串に向かって、沖縄の海の塩を降らせる。熱にぷるぷると震えているレバを凝視していると、僕はだんだん辛抱がきつくなってきた。誰かに見られたらまずいぐらい、あぐぅとかはふぅとか声を上げながら、焼き上がりを待った。


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ごま油をたら〜り、そこへ八ヶ岳山麓で穫れた六片種の生にんにくを擦りおろす。この段階で、ごまの香りと生にんにくの甘く爽やかな芳香が暴力的なまでのハーモニーを奏でている。


焼き上がったレバを、ここへ投入。もう待てん!

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んはぁぁぁ.....

なんという、わいせつな味なのだ。





「背徳」という言葉が脳内に閃光を放っていた。
隣人の妻、とか兄嫁とか、そういうことばと共に。


食してはいけなかったのだ。あやまちだった。試みるのではなかった。申し訳ないことをした。恥ずべきことであった。済まなかった。決して繰り返してはならない。罪を重ねてはならない。二度とこのような...


ありとあらゆる反省と謝罪の言葉が渦巻き、僕は混乱してしまった。錯乱と言っても良い。なんとわいせつなあじわいなのだ。これは、僕を滅ぼす味だ。






そのような次第で賢明な皆さん。
炭火で炙った鶏レバを、塩+ごま油+生にんにく で味わうのは、およしになった方が良い。






sijimi001さん、どうもありがとう!
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by yabukogi | 2013-01-19 13:04 | 喰い物のこと
2012年 12月 15日

その男、ごま油。

ちょっと待って。


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同情はしないでほしい。僕に居場所が無いからといって、孤独だからといって、味気ない時間を過ごしていると受け取ってほしくない。

素敵な隠れ家を、手に入れたんだ。

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裏庭の車庫の奥の片隅を、占有した。文字通り、裸電球ひとつ。




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七輪を据えて椅子を置いて、僕だけの城だ。誰にも遠慮は要らない。ばあ様は早く撤去しろって五月蝿いけれど。



秋の或る日。
町内会の行事で焼きおにぎりを焼いていたんだ。訪れた人々がよろこんでこれを味わってくれて、僕はこの世に独りじゃないと実感できた。嬉しい時間だったんだ。
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それからというもの僕は、庭の片隅で週末ごとに炭火や焚火を起こし、何かしら焼いて味わい、もちろんウイスキーを愉しみながら過ごしている。


何かしら、と言っても決して黒毛和牛の骨付きカルビとか黄金軍鶏ではなくて、秋刀魚や厚揚げだけれど。
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隠れ家が完成すると、いろんな食材を持ち込んで焼き焼きしながら、もちろん信州の冬のことだ、氷点下7度とかそういう気温の中で震えながら、いろんなものを炙りながら楽しんでいるんだ。


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なぜ、気付かなかったんだろう。
家の中に居場所が無ければ、家の外に過ごせば良い。

庭やベランダが無ければ、そのまま家を離れて野を越え尾根を上がり、ピーク手前の平坦地に幕を張れば良い。シェルターを風が揺らすけれど、鹿たちが鋭く叫ぶけれど、穏やかな夜がきっと訪れる。

さいわいにも僕には、山に向かわなくてもこの空間があった。尾根を登るまでもなく。


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独りよがりの逃避なんかじゃない。ちゃんと家族のための晩飯をこしらえながら。
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今夜は、焼鳥をこころゆくまで愉しもう。

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地鶏のもも肉とレバ、ハツを用意。レバは流水で血抜きしてから金串に刺した。

レバには、塩だ。沖縄の海で採れたという粗塩を振る。炭火に載せられてぷるぷると震えながら、味わいをまとう。
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タレ?

冒頭に掲げた写真のもも焼きは、タレに漬けたよ。
でも今夜のレバ焼きは、タレじゃない。


塩とごま油だけで味わうんだ。
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うふふ。
生きてて良かった。
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by yabukogi | 2012-12-15 21:37 | 喰い物のこと
2012年 12月 09日

なんてシルキーな夜だろう



やあみんな、もちろん絹ごしだろう?


僕は豆腐が好きでね。
もちろん地元の名店と言われる豆腐店の豆腐、一丁300円ぐらいする品物が最高だけれど。でも現実にはスーパーで売ってる輸入大豆(ただし遺伝子組み替えでない)を使った、一丁29円の絹ごしの方が多いんだ。


冷や奴?
うん、でも今は、湯豆腐か「温奴」だね。

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これが、或る夜の僕の夕食。
たった、これだけ。


虐待を受けてる?

....そうかもしれない。




信州松本の冬は、すごく寒いんだ。暖房器具の無い部屋(当地では珍しいことだけれど)で暮らしていると、寝る時にはダウンの上下を着込んでバラクラバを被る。

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もちろん、テントの中でもね。



とにかく、こんな凍てつく季節には、絹ごし豆腐を皿にあけてレンジに放り込む。中まで温まったら、大好きなペッパーソースを、たらぁり。緑色の、いのちを震わせるような美味しいソースなんだ。
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このソースがね、29円の豆腐を感覚的には2,900円也の素晴らしいご馳走に変えてくれる。


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秋深まる頃に手に入れた、地物野菜の青唐辛子。この夜の絹ごし豆腐に添えられていたものは、青唐辛子をジューサーでカットして、塩とリンゴ酢に混ぜただけのシンプルなもの。素材の味わいを引き立たせてくれる。


この他にも、いろんな品種のペッパーたちが、いろんな姿で保存されてる。

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ほら。




あなたも、どう?
冬の、シルキーな夜。
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by yabukogi | 2012-12-09 09:35 | 喰い物のこと