カテゴリ:筑摩山地・美ヶ原( 19 )


2013年 06月 24日

緑の戸谷峰・六人坊・烏帽子岩

2013年6月23日。僕は全身が緑色に染まるぐらい、あざやかなみどりの中を漂っていた。


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少し高い所へテントを担いで。そう予定していたけれど、結局裏山のあまり高くない所を半日で周回することにした。日曜日の朝ご飯を済ませ、台所を片付けてから家を出る。パックしたのは2リットルの水とカップラーメン、そしてトランギアのアルコールストーブ。ほかにはウインドシェルと予備の革手袋ぐらいだった。




家から15分ぐらい、カブを走らせる。三才山トンネル手前で国道254号の道ばたに駐輪すると、戸谷峰に向う2組ほどのハイカーがいた。彼らは最近整備された別コースを歩いたのだろう。山中でもてっぺんでも、出会うことは無かった。

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野間沢橋脇の鉄階段。ここが戸谷峰の旧入り口。中部電力の鉄塔巡視路を歩かせてもらう。



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緑がしたたる。ニリンソウの群落が見られる、湧き水のある谷。時期が遅いので花はもうない。



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足元に、オトシブミがたくさん。踏んでしまうと可哀想なので、この日、いくつかを道の外に放ってやる。



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どこもかしこも、いのちの気配に、満ち満ちていた。幼樹が葉を広げ日光を受け取ろうとしている。数十年後、巨樹に育っているだろうか。



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朴の木のアトラス。独りで全天を支えているようなその姿に、僕が勝手に名付けた。



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山頂近く、広葉樹の尾根。林床のニリンソウにも、もう花はない。



戸谷峰山頂には誰も居なかった。西側、安曇野は靄っている。槍も穂高も見えない。
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山頂を後にして、尾根の道を戻る。いつもは鉄塔のコルから野間沢橋に降りてしまうのだけど、この日は稜線伝いに六人坊、三才山と回ることにしていた。踏み跡はとっても薄くなる。それでも迷うことはないトレース。




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ギョリンソウの群落。




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六人坊山頂には、三角点と手書きのプレート。




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わずかに歩けば三才山。ここから急斜面を這い降りると、眼下に国道の橋が見える。するといきなり、蝶ケ原林道に飛び出す。ここが三才山峠。




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峠の様子。右奥の斜面から林道に降りた。




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しばらくは蝶ケ原林道を歩く。途中、東側にすばらしい岩壁がある。




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登ったことはないけれど、そそられるリッジ。あのテラスからの眺望を想像するだけで、お腹の下あたりがヒュンとなる。




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岩壁の下で、ランチタイム。

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ヌードルをすすりながら、この日の前半に歩いてきた山並みを眺める。





少し歩いて、烏帽子岩への入り口。美ヶ原高原ロングトレイルに入る。トレイルはさらに、武石峰から美ヶ原方面へと続いている。 

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武石峰からの降り口(右)と烏帽子岩への入り口(左奥)。




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烏帽子岩。でっかい岩壁の基部から突き出したピナクル。松本市街地からも眺められる。背景は女鳥羽川・地獄谷の森。




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男性用の眼鏡を拾った。持ち主が困っているだろう、権現社の石灯籠に置いておいた。




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烏帽子岩からも、濃淡あふれかえるみどりの中を下っていった。




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山腹を巻くように下り、次第に開けた沢のような地形に変わる。そんな一角に、湧水を汲むことができる。僕は飲んだことがない。また秋深くには涸れてしまう。




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国道を往くクルマの音が聞こえ、畑の脇を過ぎ、車道を歩く。国道に出てしばらく登っていくと、僕の赤いカブが待っていてくれた。






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帰路、いつも詣でる御射神社さんの秋宮に寄る。このお宮で、山の神さまである烏帽子大権現さんをお祀りしてるのだ。


山の神さま、ありがとう。
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by yabukogi | 2013-06-24 07:29 | 筑摩山地・美ヶ原
2013年 01月 02日

烈風戸谷峰

元日深夜、エスパースの中で眼を覚ます。僕の部屋は寒くて、冬はこのテントの中で寝ているのだ。島々谷の一角にある或る尾根に出かけよう、そう考えてパッキングも済ませてあったが、部屋の中は闇の底。「もうひと眠り...」とまたまぶたを閉じた。


東の窓が明るみ、1月2日の朝が訪れた。僕はテントを抜け出し、ストームゴージュを履き、ソフトシェルを羽織り、バラクラバとグローブを身に着け、パッキングの済んだパックを担いだだけでカブに股がった。実際には茶漬けをすすり歯磨きとトイレも済ませて。


行き先は、島々谷ではなかった。すぐ裏山の、戸谷峰。

戸谷峰は美ヶ原の北側の山群のひとつで、松本市街地からその大きな姿が望まれる。目立つ割に静かで篤志家たちに知られる程度の里山だったが、松本市が【美ヶ原高原ロングトレイル】として遊歩道を整備し始めてから、いくらか歩く人が増えたようだ。トレイル整備に伴ってコースが付け替えられたらしい、これが気になって新しいコースを辿ってみよう。


従来は国道254の「野間沢橋」という橋のたもとの鉄バシゴから、みちが付けられていた。中部電力の送電線巡視路を利用して赤松の尾根を登り、稜線のコルに立つ鉄塔からわずかな距離で山頂に至る。

一方、新しい道は500mほど松本市街地寄りの「三才山ドライブイン」の真横に標識が建てられている。0815時、路肩の草地に原付バイクを押し込み、高度計をセットして歩きはじめる。



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新しい道は、どうやら古い山仕事の作業道を辿っているようだ。土留めに積まれた石、埋もれた丸太など単年度に整備されたものとは思われない丁寧さ。そのうえに長く使われ、営々たる歴史の重みのようなものを感じさせる。



みちは、戸谷峰山頂から真南に伸びる小さな尾根に絡んでいるいるようだ。気温は0度で温かいのだが、風がとにかく強い。頭上から折れた枝が落ちてくるぐらい、強い。森が、山が揺さぶられている。そんな風が唸る森の底に、真新しい道標が違和感を覚えさせるほど唐突に出迎える。
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雪は少ない。暮れの29日の積雪の直後、激しい雨に変わって半ば融けてしまったのだ。そこへ大晦日の寒気が入ってクラストしている。
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森の上を凄い風が疾ってゆく。葉を落とした広葉樹の森は風を遮ってはくれず、僕の身体は時折持ち上げられたり、押し倒されそうになったり。




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標高1500m、山頂下の斜面。鹿道が走る。



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平坦に見えるけど、斜度は40度近くある。山頂方向の空が青く抜けてきた。ジグザグとトレースの無い斜面に高度を稼ぐ。



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東西に伸びる稜線の一角に出た。西側、四賀金山から整備されたコースを合わせる。



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金山方向。かなり急なアップダウン。数年前にここを降りて稲倉峠まで歩き通したことを思い出す。



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0934時、山頂にて。1時間20分で到達。他のハイカーの姿は無かった。風が強く、雪に刺したポールが吹っ飛ばされるほど。



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安曇野方面には雪雲。北アはもの凄い荒れ模様。島々谷のあの尾根に向かっていたら、ここ以上の風に叩かれたことだろう。山頂でのラーメン、と用意はしてきたが、とてもとても無理。ラーメンがナベごと飛んで行ってしまう。



山頂には1分も居なかった。東側の急斜面を降りて、野間沢橋への下山路をたどる。



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靴はハンワグのSUPER FRICTION GTX。ここまでのキックステップも最高。寒さを感じる瞬間も無く最高。というか、靴を履いている、石ころの上を歩いている、クラストした雪に蹴り込む、という神経質な感覚はない。実際には丁寧に雪面をプレスしているのだけれど、感覚的には無造作に足を出すだけで良かった。もう最高。もう一足買っておきたいぐらい、最高。



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アトラスと僕が名付けた朴の樹に挨拶する。5月まで、彼は眠り続ける。ここから送電線巡視路をくだり、野間沢橋に降りたのは1030時。誰にも会わず、風の歌を聴いただけだった。



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三才山集落にある御射神社さんの秋宮に詣でる。浅間温泉に鎮座まします神さまの、秋から冬にかけてのお社だ。
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柏手を打ってこうべを垂れ、この一年の山遊びの無事を、祈った。




マップはヤマレコのページに。
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by yabukogi | 2013-01-02 23:46 | 筑摩山地・美ヶ原
2012年 11月 25日

中央分水嶺・三峰山 

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三峰山山頂、1,887m。天竜川水系と信濃川水系を分つ稜線上にある。背後の水平な地形は美ヶ原の高原台地、左奥の白銀は白馬方面。



少し身体を動かしておこうと、雪道具を携えて裏山の一番奥まった場所に向かう。前日朝に自宅から眺めれば、確かに白い。どうやら雪を冠ったようであるから、足慣らしにちょうど良いだろう。山靴はハンワグのSUPER FRICTION GTXを履いて、念のために爪と刃も用意する。

2012年11月25日。のろのろと布団から抜け出して、身を切るような寒さの中にカブを走らせる。車輪が二つ足りないためかヒーターは効かないし(そもそも窓ガラスが無い)、ハードシェルの下にダウンを着込みバラクラバ+ゴーグルで、まるで稜線に居るかのようだ。僕の場合、山は近いのだけれどこうした事情で登山口までが最も寒い。


扉温泉近くのある場所にカブを置かせてもらい、装備を整える。といってもグローブを換え、ダウンとシェルをザックに押し込むだけだ。




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半年前にも使った道なき尾根を、今回も歩く。前回は芽吹きの季節だったが、いまは一面の落ち葉の上を、白い息を吐きながらハイクアップ。林床に雪は無かった。



鹿の鳴く声を幾度も聞く。僕の接近に驚いて、仲間に警告を発しているのだろう。



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稜線のトレイル(美ヶ原高原ロングトレイル)に出ると、北側だけ樹氷が。これが、下界からこの山を白く見せていたのだ。ちっ、期待させやがって。

前回は西側の二ツ山方向に向かったのだが、今回は東に取って三峰山を目指す。




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笹にも氷の針が。


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白き花を咲かせたダケカンバ。




ところどころにくるぶしぐらいまでの雪が残っていたが、そのまま歩き続けて山頂手前に至った。


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三峰が示すように、たしかに三つのピークがある。



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陽が当たる尾根道には、雪がない。正面に三峰山本峰を仰ぐ。



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標高が上がるにつれ、風が強くなってくる。八ヶ岳(権現編笠)、富士、南アルプス。




さらに木曽の山々、御嶽、乗鞍。鉢伏山の右には霞沢岳から穂高、槍、常念、そのまま白馬小蓮華まで白龍がうねるがごとく。スカイブルーが眩しい。まさに、パノラミック・トレイルだ。


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風が鳴る山頂。模型飛行機を飛ばしている人たちがいた。ビーナスラインがまだ走れるようで、すぐ下の駐車場に何台か停まっている。風が冷たく、早々に山頂を後にすると、三人のハイカーとすれ違った。山慣れた人たちのようだった。



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扉峠方向に下り、トレイルを外れて枝尾根の樹林帯に潜り込む。鹿道の上にあぐらをかいて、さあ、ラーメンタイムだ。




地形図を睨みながらそのまま枝尾根を、倒木を跨ぎ薮を漕ぎ、扉温泉を目指す。一度は鹿道に引き込まれて尾根を外しかけて慌てる。この登り返しでは倒木が多くて、かなり汗を絞られた。


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尾根末端の南側急斜面を本沢に降り立つ。堰堤のすぐ下で朱沢と合流。徒渉して少し歩くと、鎮座まします山の神。ここで渡り返しコンクリの橋を過ぎ、林道へ。



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林道に飽きる頃、ダム湖の堰堤上を歩き、この日の小さな旅が終わりを迎える。



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古めかしい橋を渡れば、カブにキックを見舞って走り出すだけだ。



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山間部を抜け、松本市街地を見晴るかすような場所に出る。安曇野の向こうに神々の座をもう一度仰ぎ、部屋のこたつを思い浮かべながら家路を急いだ。




前日に白く仰いだ山に、雪はほとんどなかった。
思い描いていた物事が実際にその場面になってみれば期待と違っている、それが人生というものかもしれない。それでも期待はずれという落胆に陥らず、それなりに楽しませてくれるのが山遊びの奥深さなのだろう。





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【追記】
お尋ねもあったので、コース状況のことも少し書いておく。

■扉温泉〜分水嶺までの尾根
ここはコースではないので、読図や薮漕ぎに慣れた人でないと、辛い。登りならばルートを誤ることは無いだろうが、下りに取れば枝尾根に引き込まれるだろう。歩きやすく気持ちのいい尾根だが、道はないということをご理解ありたし。


■分水嶺〜三峰山手前
おおむね稜線上か、稜線の北側に付けられている。春先などは残雪が凍っていたりするだろう。一部笹が伸びていたが、コースを埋めるほどではなかった。


■三峰山直下
痩せ尾根を通過する箇所あり。諏訪側が崩れているところもあったがトラロープなど設置済み。積雪期は少しおっかないか。実際、以前3月末にアイゼンが無くて怖い思いをしたこともある。


■三峰山〜扉峠方面
ビーナスラインを東側に眺めながらの草原と樹林帯のトレイル。よく歩かれているようで、緩やかにアップダウンが続く。


■扉峠南からの尾根
薮、倒木ともにしんどい。GPSがないと枝尾根に引き込まれる。僕もそうだった。万一尾根をロストした場合、左右の朱沢・本沢どちらも沢を下れなくもないが、廊下やノドのような箇所もあるので落石も多く危険(以前に遡行して確認済み)。正確に尾根の末端までトレースする自信が無ければ歩かない方が良い。この場合は扉峠から扉温泉まで車道が走っている。

■尾根の末端から扉温泉へ
たっつーさんのご指摘によれば、こんなマイナーblogにもサイレントな女性ファンのお方がおられるらしく、この尾根の末端辺りの歩き方のご説明が不足している旨、苦言を頂戴した。

この尾根を幸運にも迷わず、1572、1536高点と通過してくると1536から真西方向で、薄川の朱沢と本沢の合流点に至る。末端に向けて傾斜がきつくなる尾根筋から、南側の広葉樹の斜面で、堰堤のある本沢の広い河原が見えてくる。この堰堤を目標に降りて行くと、すぐ下が朱沢との合流点。このとき、北側の朱沢側には降りない方が良い。崖になっていて懸垂ロープが要る。

沢の合流点からは右岸(北側)に歩きやすい平坦地がある。やがて林道のようになり、左岸にねる沢(電子国土での表記。このページに張ったYahoo地図では「わるい沢」と表記されている)が入ってくる箇所手前が、山の神様のご神木。コンクリートの橋がねる沢にかかっているので左岸側に渡り、林道がダム湖まで続いている。
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by yabukogi | 2012-11-25 16:51 | 筑摩山地・美ヶ原
2012年 05月 20日

中央分水嶺・二ツ山--鉢伏山

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笹の海を蛇行しながら続くトレイル。この稜線は、この道は、雨のひと粒の行方を分ける列島の背骨。




二ツ山(1,826.4)は、美ヶ原南方のピーク・三峰山(1,887.4)と鉢伏山(1,928)を結ぶ中央分水嶺の一角。下諏訪からの道もあるらしいが訪れる人は少なく、静かなトレイルを黙々と歩ける貴重なお山。ここにきて松本市などが【美ヶ原高原ロングトレイル】というかたちでコース整備を行い、観光資源として広く世に知らしめようとしている。となるとこの夏あたりから歩く人も増えそうだし人気も出そうだ。4年前に一度来ているが、静かないまのうちに、ぼけっと足を運んでみようと考えていた。

 ⇒関連記事【美ヶ原トレイル構想】



いつものように地形図を眺めながらハアハアしていると、松本市入山辺奥の扉温泉を起点とした、コンパクトな周回コースが浮かんだ。扉温泉から南南東へ、道のない尾根を歩くと中央分水嶺に出る。ここから二ツ山--鉢伏山と歩き、鉢伏からは扉温泉に下る道(わさび沢コース)がある。


ヤマレコでルートの計画を設定してみると、1,000m強の累積のぼり、距離11.69kmのぐるりっぷが描けた。これはいい!



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2012年5月20日日曜日。6時前に出発して0630扉温泉。久しぶりに足を入れたハンワグのクラックセイフティーで歩き始める。



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鉢伏山へのわさび沢コースは、扉温泉【明神館】の先に看板が出ている。0640、ここからぬるぬると高度を上げるのだが...



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白樺の林があって、コースはここからわさび沢方面に一度下って行く。が、今回の僕の計画は左へ逸れ、この尾根をのぼり上げてゆく。0645、写真の奥に向かってハイクアップ。道はないが薮もなく、傾斜は苦しいが快適な尾根歩き。




1,413高点まではひたすら登る。徐々に傾斜が緩んでくると、白樺と楢の林の中に平坦な場所がいくつもあった。尾根の登りだから迷うことは無いが、鹿道が複雑に入り乱れているので変な方向のトラバース道に誘い込まれないように、ときおりコンパスを見る。

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▲1300m付近、明るい広葉樹の中を行く。



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0725、高度1,350mで、尾根の西側に湧水が見られた。想像通り鹿の足跡が錯綜し、水場兼ヌタ場になっている。個人的にはセイシェルがあれば躊躇はしないだろう。



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尾根は緩やかになり、1,502高点までは人工物も無く、鹿の踏み跡があるだけ。
来てよかった、としみじみ思える。
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▲0815時、1,502高点


境界標識とピンクテープが現れると、美ヶ原高原ロングトレイルに設定されている分水嶺は近い。
0820時、ポンと明瞭な「道」に出て少し驚かされた。

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▲三峰山(東方向)へのトレイル


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▲二ツ山・鉢伏方面へのトレイル


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分水嶺を歩く。左が太平洋へ、右が日本海へ注ぐ。
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二ツ山の登りにさしかかる。
一時間近く、登る。標高差300m程度だが、なまった身体は休息を求めてくる。やがて...



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0910、樹林が疎らになり笹原の海に漕ぎ出す感覚を味わう。



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すぐに二ツ山(1,826.4)の山頂。完全に平坦な草地があって、不心得者がステルス野営をするのではないかと心配になってしまう。風上になる西側に立ち木もあり、適切にガイラインを取れば耐風も問題あるまい。せめてペグを刺す時に植生を痛めないように、天候急変等、万が一のビバークの際にはご留意ありたい。



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二ツ山山頂にはふたつの三角点がある。東側の1,826は現在運用されていないようだ。0913時。


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▲0915時、100mはなれた西側には国土地理院のポールが立てられている。






さあ、ここからだ。笹の海に刻まれたひと筋の道を行く。

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▲鉢伏山まで、この風景を行く。


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▲三峰山が背後にそびえる。中景右のピークが二ツ山。


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▲諏訪湖が見えてきた


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1014時、鉢伏山頂は近い。
標高1,850m付近に雪田の消え残りを見る。ここまで、誰にも会わず、会話も無く。



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1025時、鉢伏山(1,928)山頂。数人のハイカーと挨拶を交わした。南寄りに展望台とベンチがあるので、そこで昼食タイム。


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ラーメンはマルちゃんの「正麺」豚骨。(冷蔵庫にチャーシュー、半熟玉子、青ネギの入ったタッパを忘れたので、やむを得ず、)アマノフーズのFD「豚キムチ」スープの素を加えた。


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穂高方面は霞んでいたが、肉眼では前穂北尾根、北穂東稜のラインなども見えていた。霞沢岳が見えたことは、嬉しい。





1100時、撤収して下山開始。


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1110時、扉温泉方面への分岐。遠い水平のスカイラインは、美ヶ原の高原台地。


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沢沿いの穏やかな道をたどる。



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1217時、「明神館」脇に帰り着く。約6時間(ひるめし含む)のまろやかなハイキングだった。





.........................................

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▲往路の道無き尾根、【山旅ロガー】でのトラック(50m測定モード)
新緑の樹林帯の尾根でもかなり正確に拾っている。



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▲下山時のわさび沢コース(一般道)でのログ(地形図は拡大させている)
沢の中を下っているとき、衛星をロストしたようだ。植生にヒノキが多かったのだが、これも関係しているかもしれない。

.........................................



【美ヶ原高原ロングトレイル】は整備が始まったばかり。すでに笹の刈り払い、道標の設置などが行われていた。しかし歩く人が少ないと、また笹も茂ってくるだろう。願わくば初夏、または秋の頃、どうかこのトレイルを歩く人が増えてくれないだろうか。空気が澄んでいれば槍穂高のギザギザも、南アルプス、八ヶ岳の秀峰も眺め回せる良いコースだと思う。浅間温泉、美ヶ原温泉、そして扉温泉、崖の湯温泉と組み合わせて、信州のいで湯と高原トレイルを楽しんでいただけたら、おいらも嬉しっす。
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by yabukogi | 2012-05-20 16:23 | 筑摩山地・美ヶ原
2011年 03月 09日

中央分水嶺・三峰山

雪遊びに出かけた。



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カメラを持って行かなかったので記事にはしないつもりだったけど、同行の『コカゲイズム』のにゃんこ先生がとっても愉快な写真を送ってくれたので、ここにご紹介しておこう。もうひとつ、別な思いもある。もとより安易に、積雪期の中級山岳に遊ぶことをお奨めする訳ではないが、人気集中で混み合う入笠山や北八ヶ岳すぐ近くに、こんな静かな場所があることも知っていただきたいのだ。トレースの無い雪尾根。ノートラックの広大な斜面。小鳥の声だけが響く静寂の森。そこは国道脇の駐車スペースからわずかなハイクで届く、標高1,800m程度の高原の一角なのだ。



2011年3月8日。
外遊び彷徨記』のチャイさんが、ワカン歩行を試したいとおっしゃる。それなら出かけようと、前述のにゃんこ先生と三人、諏訪湖畔から中山道をわずかに走って、和田峠に向った。トンネルを抜けた峠の先にビーナスラインの入り口がある。いまは除雪も入らず、GW前までは雪に埋もれたまま。僕らは空き地にクルマを残し、装備を整えて歩きはじめる。最初から、ワカンを履く。午前07時03分。気温マイナス7度。轍もトレースも無い車道をラッセル。新雪がたっぷりと乗って、このあたりでも膝ぐらいだった。やがて「農の駅」があるスキー場跡地に至る。08時少し前。車道を離れ、かつてゲレンデだった雪の斜面のへりを行く。行く手には緩やかな鞍部があって、そこは中山道の「古峠」。駐車場でも挨拶を交わしたスノーシューの御仁が峠におられた。この先も前後して進みましょういうことになるが、かなりの分、ラッセルのご負担をおかけしてしまった...。古峠までは曇り・無風だったけれど、峠から稜線伝いに北進すると、西からの強い風に叩かれるようになる。ジャケットを羽織り、バラクラバを被る。稜線は緩やかにアップダウンするが、ワカン履きにポールで進む。この日の目的地は、三峰山(1,887.4m)経由、二ッ山(1,826.4m)。

> 雪!風! 豚汁!
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by yabukogi | 2011-03-09 08:51 | 筑摩山地・美ヶ原
2011年 01月 02日

樹霜咲く戸谷峰

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正月二日は遠見尾根をゆるゆる歩いて、鹿島槍北壁でも眺めて来ようかとたくらんでいたが、元日の祝い酒が過ぎたようだ。出発予定の時刻になってもシュラフから出る気になれず、だらけたまどろみにしがみついている。いま運転したら酒気帯びだよと理由をつけて、さらに数時間を眠る。

朝も遅く目覚めたらすっかり酒は抜けたようだ。飲み直そうと酒肴の準備をはじめる。これがその男の新年なのだ。風雪叩き付ける稜線でもない、ダイヤモンド・ダスト煌めく空の下にいるのではない、ぬくぬくとコタツから離れられないねこと同じである。

しかしこれでいいのか。数分だけ自問自答を重ね、封を切りかけた【真澄あらばしり】を冷蔵庫にもどす。パッキングは昨夜に済ませてある。着替えと、ヤカンからテルモスに湯を注ぐだけで出かけられる。とはいえ09時から北ア方面に向えるはずもなく、裏山へとカブを走らせる。

>>その先の、雪へ!
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by yabukogi | 2011-01-02 14:07 | 筑摩山地・美ヶ原
2010年 12月 26日

エムハイク美ヶ原

■序

クリスマスに身体が空いていた。ひとりどこか近場で歩き納めしようと企んでいたら、偶然にも予定が空いた美青年junさん、同じく偶然にも空いてるイケメンカワムさんと3人で、西穂の独標まで行こうと話がまとまる。むかし父から聞かされたことだが、山の神様は女神様だと言う。ならば山の神様も、美しきふたりを伴えば僕を特別な好印象で迎えてくれて、きっと来年は僕にとってすばらしい年にしてくださるに違いない。

当日未明。直前には南岸低気圧が通過して完璧な西高東低の冬型気圧配置。等圧線はタテになってくるし、西穂高は気温マイナス20度、風速25m/sの予想も出ている。こ、これは荒れる。未明、松本市街地ですでに氷点下。風に小雪が舞う。カワムさんの車に乗り込む。158号を奈川渡ダムにさしかかるとトンネル内部にまで雪が吹き込んでいる。風も雪も、どんどん激しくなる。これでロープウエイは動くか。ちょっと作戦タイムと、雪に覆われた沢渡の駐車場に入る。とにかく新穂高まで、と開き直るが、このタイミングで金沢から合流する予定のjun君から連絡、富山市街地で雪に捕まる、と。この朝は飛越国境近い庵谷ではなんと56センチの積雪、これでは到着が遅れ行動に支障が出るだろうと、今回の西穂独標は諦め、年が明けてから晴天を狙って再び訪れることとする。






■東へ、裏山へ

  にゃんこ先生(カワムさんのこと)。
  せっかく支度して来てるから、里山でも歩きまっしょい。

沢渡をあとにして松本市街地に戻る途中、真っ正面に美ヶ原の王ケ頭が見える。どうせ他に行く宛がある身でもない。そこで裏山でお手軽に耐寒訓練ですよ、などと無邪気に、美ヶ原の雪を見物に行くことに決めた。市街地を抜けてわずかに山へ分け入り、入山辺・三城(さんじろ)の駐車場に車を停める。



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キャンプ場を抜けるあたりでは積雪はわずか。それでもきゅうきゅう靴を鳴らしながらジグザグに高度を上げ、高原台地の縁(へり)に続く断崖を登り上げて行く。頭上に風が鳴っている。ごごごごごと樹々を鳴らして轟くが、僕らは西穂の稜線に上がるつもりで装備も整えている。そんな心強さもあって、このあたりまではお手軽気分で歩いている。

>> 高原はエム好みの烈風!
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by yabukogi | 2010-12-26 14:38 | 筑摩山地・美ヶ原
2010年 11月 21日

裏山のふるい峠ふたつ

ぐるりと山並みに囲まれた信州では、人も物資も風聞も、すべて峠を越えて来た。海から来る塩も隣村から来る嫁御寮も、どこかしら峠を越えて。そんな街道の峠、村境の峠を合わせると信州だけで数百を数えるという。


僕の住むあたりの裏の丘に、こんな古い峠がいくつか残されていて、わずかな時間にふらりと歩ける。か細い道は落葉か薮に埋もれて歩く人影もない。これがかつての峠道か。都へと続く幹線道路か。峠に立てば風が泣いている。無常感に抱きすくめられ、嗚咽したいほどの寂寥感。歩き馴れたいつもの散歩道ながら、そんな風景のなかに過ごしてみた。



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こころ弾む散歩道という風情でもなく、棄てられ忘れられ朽ちかけている、ひとのいとなみそのものが埋蔵されているような道と峠なのである。仕事が区切れて半日の癒しを求めた僕が向ったのは、愛すべき羽毛布団でもなければ湧き出る露天風呂でもなく、こんな裏山の一角だった。



峠に向うあたりは、ごく普通の田園である。畑には野沢菜や白菜がゆたかに育ち、農家の軒先には干し柿の色が鮮やかである。しかし、小道が松林、落葉松林にかかると、風景はとつぜん寂しさに包まれる。さらに一歩を進めていいのかためらわれるほどの静けさ、わびしさ。百舌鳥のひと啼きか、寒烏のけたたましい叫びが似合う。

>> 寂しい続き
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by yabukogi | 2010-11-21 09:39 | 筑摩山地・美ヶ原
2010年 11月 12日

美ヶ原トレイル計画、近況

以前に、美ヶ原トレイルを整備して観光資源に役立てましょう、という当地での取り組みをご紹介した。と書けば体裁はよろしいのだが、ローカル紙に記事が載ったついでに、僕が歩いた8割ぐらいの区間のことを少し思い出して書いただけだ。

2010年01月19日 【美ヶ原トレイル構想

その後、徐々にトレイル構想のルート取りや整備・利用開始の見通しなどが明らかになってきたので、備忘録的にここに書いておく。僕は走れる体力もないし走らせてくれない内臓脂肪はあるしで走れないが、走る方はイメージトレーニングなさるがよろしかろう。僕に同じく(内臓脂肪はともかくとして)走らない方は、おだやかな陽だまりハイクなのか高原のそよ風ハイクなのかはともかく、お出かけになる日を思い描かれたらよろしかろう。そんな折り、ぜひとも当地の温泉地になどお立ち寄りいただき、できれば湯は立寄ではなくお宿をお求めになって逗留していただき、のんびりと信州の城下町を味わっていただきたいものである。その際に「美味い店は?」というお尋ねがあれば、僕の友人が経営する店に限ってご案内もやぶさかではないし、ご馳走いただけるならその場に臨むことも拒むものではない。


さておき。

ルート取りはまだ詳細が確定していないようなのだが、第一報でお知らせしたコースと明らかに変わったと思われる区間があるので、ご案内しておく。

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【2010年9月1日 広報まつもと】より

>> 読むかい?
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by yabukogi | 2010-11-12 12:21 | 筑摩山地・美ヶ原
2010年 01月 19日

美ヶ原トレイル構想

【八ヶ岳山麓スーパートレイル】は、これまでもいろんなメディアで取り上げられて来たからか認知度も高そうだ。一方、近くの美ヶ原で【美ヶ原トレイル】構想が温められていることは、あまり知られていない。構想の詳細は、昨年末の新聞からの引用記事に譲るが、美ヶ原山塊の北にある戸谷峰から美ヶ原の高原台地を巡り、三峰山、鉢伏山を経て牛伏寺へ降りてくるというもの。おおむね、松本市域の境界東側のラインをなぞる格好になる。なお後半、三峰山山頂から鉢伏山山頂までは中央分水嶺をトレースする。コースの北側は薄川(すすきがわ)から田川・犀川・千曲川となり信濃川と名を変えて日本海に注ぎ、一方の南側は砥川から天竜川に合し太平洋へ向かう。


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このトレイルの起点は、保福寺という集落。ここは峠の下に踞(うずくま)るような山間のむらなのだが、かつて「日本アルプスの登山と探検」を著したウオルター・ウエストン卿(1861-1940)は、安曇野への旅にあたって【保福寺峠】から保福寺集落へと降りている。このとき、彼は初めて、ガウランド名付けたところの「日本アルプス」を目の当たりにしたのだ。峠から眺めた常念山脈の姿に鼻息を荒くしたのだろう、記録に残る最初の常念岳登山を敢行。ただし、資料を眺めた限りでは、前常念岳のピークを踏んでいるようだ。1894年(明治27)のことである。

地味な話である
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by yabukogi | 2010-01-19 13:25 | 筑摩山地・美ヶ原