カテゴリ:北アルプス・常念山脈( 14 )


2013年 05月 19日

春常念 2013/05/19

おもに前世紀の出来事だが、銀河帝国や宇宙怪獣たちが、こぞって地球侵略を企てるという事件が続いていた。


かれらは、いや奴らはこの惑星の何を手に入れたくて、あのような蛮行を続け、また繰り返したのだろう。ながいあいだ僕の中で大きなクエスチョンマークが点滅していたのだが、この日、すべての謎が解けた。




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どこまでも美しい、常念。


この風景を所有するためなら、地球防衛軍にフルボッコにされてでも、奪いたくなる。


 ■□■

2013年5月19日。
日付けが変わると同時に僕はパッキングを点検し、念のためにヘッデンの電池を交換。お茶漬けを戴き歯磨きを済ませ、00時45分過ぎ、カブのキックペダルを踏んでエンジンを始動させ、松本の自宅から安曇野へと駈けていった。




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真っ暗な烏川渓谷を震えながら走り、三股のゲートに到着。支度を済ませ補導所のある奥へ向う。




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02時40分、入山者カードに記入して行動開始。どこまでも真っ暗な急登をはぁはぁ言いながら歩く。汗が、吹き出る。


山の神さま。
あの黒くて爪の鋭い坊やが
僕の近くに来ませんように
お願いできませんか?



そうお願いしながら、黙々と2時間。




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途中の04時16分。腕のバリゴの高度計が2000mを越えた頃、ヘッデンを消す。夜明けが近い。




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04時46分。2170mで尾根に乗る。ここは分岐になっていて、写真右方向には積雪期バリ・ルートの東南尾根が伸びている。




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05時16分。高度2253m付近で朝めし。いつもの大福で。




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広やかだった尾根が2300mぐらいから次第に痩せてくる。




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ようやく、これから這い登る前常念が近づいてきた。まだ時刻が早いので雪も締まっている。距離を稼ごう。




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2400m付近で樹林帯を抜ける。左手はハイマツが露出、正面に前常念岳。夏道を嫌って雪の斜面を進む。




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振り返ると、鍋冠山・八丁タルミのうえに富士と南アルプスの巨峰たち。




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06時17分。雪の斜度が増して僕の技量を越える。やむなく左側のハイマツ帯の裏の夏道へ。これは大滝山から蝶ヶ岳、蝶槍。




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花崗岩の岩塊が重なる尾根の道。冬の間、岩が雪の重みで動かされていてとても不安定。浮き石を見極めながら這い登っていく。




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穂高を眺めながら。




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あのハリネズミみたいなコブを越えたら、前常念岳2661.8m。




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07時ちょうど到着。4時間20分かかっている。




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あと200mほど、登らなくてはならない。右奥の高まりが常念岳本峰ピーク。




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常念岳本峰。やはり美しい。足元の左側は常念沢の源頭ですっぱり切れてる。




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08時20分。神の大前に柏手を打つ。左奥に奥穂高岳、白出のコル、涸沢岳。




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槍と裏銀座方向。宇宙怪獣たちは、これをも欲した。




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みなさん、お元気ですか?




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来し方を振り返る。いまからここをひたすら、黙々と下るのだ。




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雷鳥たちが繁殖の季節を迎えているようだ。ぐぇぇぇぇぇえ、ぐぇぇぇぇぇえ。稜線上にいつも声を響かせていた。





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12時20分、三股に下山。本沢の流れは、雪代を集めて轟いていた。






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帰路、安曇野から。

山の神さま、ありがとうございました。
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by yabukogi | 2013-05-19 18:42 | 北アルプス・常念山脈
2011年 10月 25日

森に移ろう時の狭間に

幾十日という時間が、この森に流れた。


僕が最初にここを訪れたのは、蝉時雨が降り注ぐ、真夏の或る日。沸き立つような入道雲がもうすぐ大粒の雨を落としてくるだろうと案じながら、僕はこの森のはずれに立った。その日、ひとり表銀座の稜線からてくてく歩き通して稜線から降りてきた。まだ時間があるからと何気なくこの森に足を踏み入れ、森の奥にあるひと抱えもある楢(なら)の巨樹に魅入っていた。見上げた梢の先に、真っ青な真夏の空。おや、夕立雲は去ったらしい。



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(これは再訪した折りのこと)


この森のことが気になって、九月に入って再び訪れる。そしてしばらく、僕はこの森で過ごした。いや、正確には、今もこの森に居る。



楢や楓(かえで)にわずかに針葉樹が混じるこの森の一角に、ふしぎな窓がある。

見上げると、ある一カ所だけ梢が途切れ、空が見えているのだ。かつてこの場所を占める一本の樹があったのだろうか、そしてその樹が倒れあるいは伐られ、森の天井に穴が開いたのだろうか。


僕はこの穴を「窓」と呼んだ。



森の窓。9月29日。まだみどり濃く、葉もみずみずしい。

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一本の樹が倒れたというのは、間違いだった。林床のどこにも、切り株も倒木も無かったのだ。




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10月に入ると、窓辺も急に色づきはじめた。そういえば肌寒いような日が続き、すすきの穂が広がりはじめていた。


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森は、いつの間にか、秋の装いへと姿を変えていた。夏の間中、秋の初めにも聞こえていた甲高い鳥の声は聞こえず、猿たちの騒ぐ気配と、栗鼠たちが走り回るかさかさという音だけが、森を渡ってくる。



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この前日、熊の気配を感じた。地面に残された足跡とふんが、彼らが旺盛な食欲で秋の豊穣を拾い廻っていることを知らせてくれる。




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輝くように晴れた朝。いつの間にか10月も下旬に入っていた。楢の梢は彩度を下げて、枯れかけた葉をかろうじて枝先に残している。幾日か続けて、霜を見た。






ある夜、激しい雨と強い風が森を揺さぶり山を鳴らし、沢を轟かせた。


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空の色彩は、秋のものではなくなっていた。うら寂しいばかりに枯れかけた葉を残した梢は、冬の訪れにおののいているように見えた。



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まもなく11月を迎える。森から栗鼠たちの気配が消えた。しかし熊たちは盛んに歩き回り、どんぐりを探し求め、きのこに齧りつく。

幾十日という時間だけが流れ去った。森の秋はいつの間にか終わりを告げ、静かな、長くきびしい冬の始まりを迎えていたのだ。


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僕はもうしばらく、この森が雪に覆われ、北ア・常念山脈の山々が閉ざされる日まで、眺めていよう。
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by yabukogi | 2011-10-25 18:13 | 北アルプス・常念山脈
2011年 07月 26日

ある朝、常念を眺めて

ふるさとについて、考えていた。

僕にはふるさとがない。根無し草のように生い立ちから各地を流浪しする生き方だったためか、ひとつの風土、風景にふるさとを実感することができなかったのだ。


信州松本の棲み家から眺める北アルプスの稜線は、憧憬であって故郷の原風景ではない。まぶたに浮かぶふるさとの山河とは異なって、あくまで高く遠く、こころのなかまで降りてくることは、ないのだ。もっとも、僕のまぶたに浮かぶ風景とて、ありはしないのだが....。


そんな風に考え続けていたある夏の払暁、稜線からふと東の方向を眺める。

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そこには、ふだん下界から眺め続けてきた常念が、神々しい光のなかにあった。



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朝の光線は、森羅万象すべてを描き出したいのか、どの瞬間にも表情を変える。



雲海に浮かぶ大好きな峰を、普段とは裏側から眺めている。

あの山の向こうに、大きな山体の裏側に我が街があるのだと思うと、常念こそが僕のふるさとを象徴するものであることに思い至る。そうか、今、常念を眺めながら、松本のまちを眺めているのだ。毎年楽しみにしていた深志神社・天神のお祭りも終わり、盆地の城下町はうだるような暑さに包まれる日々を迎えるのだろう。源地界隈、湧水のせせらぎが音立てる光景が、いかにも涼しげな季節を迎えるのだろう。理由も無く、目頭が熱くなる。根無し草も、いつしかふるさとを見つけたようだ。
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by yabukogi | 2011-07-26 19:00 | 北アルプス・常念山脈
2010年 11月 07日

燕雪尾根ハイキング

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2010年11月6日、快晴。


ご近所のカワムさんと新雪の燕岳を日帰りハイキング。稜線に雪と氷と戯れて、至福の一日を過ごす。



歩き慣れた合戦尾根をふぅふぅ這い上がり、雪が出てきて無邪気にはしゃぎ、穏やかな(それでも冷たい)風に吹かれて槍ヶ岳を眺め、あたたかい飯を腹に収めて、またひとの棲む街に戻る。たったそれだけのことながら、この一日のおこないがしつこい肩こりをほぐし、腰痛を癒し、脳天からびりびり飛んでる青白い火花を消し去ってくれるのだ。

>>ぐわ、冬の北ア!
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by yabukogi | 2010-11-07 08:41 | 北アルプス・常念山脈
2010年 08月 15日

遠く稜線へと続く森の道・大滝山

この日、僕は北アルプスの一角で、どこまでも深い森の中を歩いていた。

その森は、稜線まで続く深い深い森だった。どこまでも続くような、森の道だった。2010年8月15日。この日この山で、僕はたった5人のハイカーに出会っただけ。静かな静かな山だった。


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お盆休みの日曜日。なのに誰もいない。林道のゲートには地元ナンバーの4WD車が一台だけ、置かれていた。

鳥の声しかしない。どこでも聞かれるハイカーの熊鈴の音、交わす挨拶の声、乾いたストックの音、そうした音が何も無い。

僕も黙って歩いた。ときどき、熊が恐くてホイッスルを鳴らした。鳴らしても鳥たちはさえずりを止めない。これで熊たちにも聞こえてるのか、心細くなったりもした。

 >> つづきも、寂しいだけ...
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by yabukogi | 2010-08-15 20:58 | 北アルプス・常念山脈
2010年 07月 28日

漆黒の合戦尾根を

23時少し前。チャイさんから電話が入る。いわく、松本インターなう。僕の支度は済んでいたので、山靴・hanwag/CRACK SAFETYに足を入れてゆるく締め上げ、果樹園の道を小走りに急ぐ。荷は軽い。背中側のパッドを抜いたBlack DiamondのSlide30というパックに、カッパとカメラ、温泉セット、小物すこし、そして水だけは2Lが入っている。


2010年7月26日深夜、僕がピックアップをお願いした場所には、ジムニーの傍らにチャイさんがいた。ジムニーは kimatsuさんの愛車だったやつ。なんだかkimatsuさんも一緒にいるみたいな気分だ。国道147号、安曇野を走るうちに日付けが変わる。途中で水とおにぎりを買い足す。有明の高原を抜けて対向車もいない県道を中房川の渓谷に突っ込み、中房第一駐車場にジムニーを停める。車中にねむるひとを目覚めさせないよう忍び足でコース入り口へと向い、7月27日午前01時03分、最初の一歩から漆黒の合戦尾根へ。沖天に煌々と輝く満月のひかりも、この樹林帯のコースには届かないのだ。急登に汗が噴き出す。タオルで拭き拭きひたすら登っていく。時折り熊除けに笛を吹く。木の根を掴んで、花崗岩を乗り越えて、どんどん高度を稼ぐ。


富士見ベンチで大休止。おにぎりを取り出してかぶりつく。セブン-イレブンの「スパイシーカレー炒飯おにぎり」だったか、これが美味い。尾根の登りとしては6割と言うところか、ここまでで500ccのナルゲンが空に。夏の昼間だったら軽く2Lは飲んでるだろう。さすがに夜は、涼しいのだ。


合戦小屋では小休止。風が強い。稜線方向は真っ暗で何も見えないが、満月を覆い隠しながら吹き流れていく雲のスピードがはんぱじゃない。地鳴りのような響きが頭上の樹々を揺らす。上の方、大丈夫かな? うん、予定通り行こう。うなずき合って、さらに樹林帯を登る。ダケカンバ帯をひと登りして合戦ノ頭を過ぎる頃、頭上の梢がなくなっていることに気付く。森林限界を抜けたのだ。真っ暗だった空は、いつのまにか群青を帯びている。夜明けは近い。

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進行方向にひかりが灯った。まだ暗いながらも朝を迎えた燕山荘が間近に仰がれる。手前にヘッデンを灯すのはチャイさん。ふと見れば、山荘の回りに、テン場付近に、稜線の蛙岩付近にもヘッデンの灯りが揺れている。やがて夜の闇を薄く剥がしていくように足元が明るくなってきた。燕岳のシルエットもくっきりと浮かび上がる。

>> 稜線の朝のひかり...
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by yabukogi | 2010-07-28 12:21 | 北アルプス・常念山脈
2010年 06月 07日

雪渓詰めて夏常念

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バラクラバを持って来るべきだったと、すこし後悔していた。

アイゼンを着けている間にも、北アの奥から、黒部源流の方から、凄まじい風が吹き付けて来る。このスナップを撮ってくれた同行のカワムさんとの会話もままならない。その風に乗って、霙か雪か。白くこまかい粒が、昨日のものと思われるトレースの靴型に溜まっていく。ジャケットのフードがめくり返される。

風速のせいか零度近い感覚を持っていたけれど、カワムさんの温度計では気温5度。やがて西から東へと渦巻いていたガスも途切れはじめ、青空が広がってくる。うむ、この空を。この色を見るために、ここへ来たのだ。

>> そう、ここへ...
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by yabukogi | 2010-06-07 11:44 | 北アルプス・常念山脈
2009年 09月 09日

常念岳 09/09/09

晴れてさえいれば、毎日眺めることができる常念岳。

いつも出かけるところだけれど、それは特別に特別な場所、ということなのだ。この日、2009年9月9日も日帰りでぶらぶら、しかし気持ちはしゃっきりと出かけている。


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槍ヶ岳を間近に仰ぐ。手前の稜線に【ヒュッテ西岳】、向こうには【肩の小屋】が見えている。標高の違い、地質の違いに起因するのだろう、稜線の植生が全く異なっているのだ。槍の肩から穂高へ続く3,000mの稜線にはハイマツもほとんど生えない... 気象の厳しさを、納得してしまう。




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南岳。よく見ると地層のしましまが見える。信州大学の原山教授という先生が発表しておられるが、槍穂高がかつて巨大火山だった痕跡が、こうして風景にも現れるのだとか。




不注意にもフレームに収まっていなかったが、写真左端、キレットの底に見えている遠い稜線は、加賀の白山。常念山頂に置かれた山名表示板で後に知ったのだ。そして、キレットを見下ろす獅子鼻の上で遊んだのは、この夏のこと。みんなどうしてるかな。
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by yabukogi | 2009-09-09 20:00 | 北アルプス・常念山脈
2009年 07月 05日

横通岳 09/07/05

2009年7月5日に、横通岳を訪れた。

常念岳のお隣さん、下界からの眺めはすっきりした姿で、稜線の風景を彩ってくれている、たおやかな山。



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隣の常念岳は、山頂がにぎやかな様子、一方、こちらは僕ひとり。


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北鎌尾根を眺めて、少しの時間を過ごした。
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by yabukogi | 2009-07-05 20:00 | 北アルプス・常念山脈
2009年 06月 01日

燕岳 09/05/31-06/01

夏のはじめに、企てがあった。

僕は山小屋(営業小屋)にお客として泊まったことがなかったので、静かな時期の日曜日を選んで燕岳に出かけた。小屋泊まり程度の準備と、一応は残雪に備えた装備を携えて。

合戦尾根を登り降りするのは冬も含めて数回目になろうけれど、残雪期は初めてだった。2009年5月31日、朝から本降りの雨。穂高駅から乗り合いバスにて中房温泉に入り、もうひとり、単独男性と前後しながら燕山荘に向かう。谷の底には新緑が降りてきてみずみすしいみどりに染まり、カッパに包まれながらも気持ちのいいハイキング。だが雪がたっぷり残った合戦小屋・合戦ノ頭を過ぎる頃には、身体が冷えきっていた。


ガスも濃い、みぞれまじりの雨の中、稜線に着く。小屋のストーブに温めてもらってから、寝床に案内してもらう。遅れて着いたお客をまじえ、5人だけ、静かな午後を過ごす。


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日没の頃、ガスが晴れて主稜線が姿を見せてくれた。そしてこのあと、天候は回復に向かう。


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翌朝は槍ヶ岳に続く稜線も、拝めた。
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by yabukogi | 2009-06-01 20:00 | 北アルプス・常念山脈