その男、薮の彼方に消ゆ

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カテゴリ:山の小ネタ( 2 )


2013年 01月 20日

その岩は、白いか黒いか?

またまた山の小ネタ。


シームレス地質図】というサービスがある。GoogleMapに重ね合わせた地質図を閲覧できるというものだ。

地質図?
要するに足下の地面、そこが土壌か岩盤かも含めて、どんな岩石で出来ているか、を表している。日本列島がユーラシア大陸の外縁部で形成され始めた頃から、その永い年月をそのまま刻み続けてきた大地の記憶。




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たとえば、あなたは上高地で梓川の畔を明神、徳沢と歩いてきたとする。このまま槍沢を登って今夜は殺生のテント場に、なんて感じ。横尾で左手に涸沢圏谷に向かう橋を見送る。横尾山荘を過ぎて森の中に入った時、足下を見る。その石ころは、間違いなくぜんぶ黒い。真っ黒だ。右側、蝶ヶ岳の稜線から落ちてくる小沢の石ころも、全部黒い。

一ノ俣が近づいてきた。ふと左手の槍沢の流れを見ると、岩も石も、ぜんぶ白くなっている。一ノ俣にかかる橋から川底を見れば、真っ白い砂が溜まっている。



さっきの真っ黒だった岩と石ころは、「メランジュ」と呼ばれるジュラ紀の岩だそうだ。メランジュはメレンゲと同じ、かき混ぜられたの意。海底に溜まった泥んこが、地下深いところでぐちゃぐちゃにかき混ぜられて固められたもの。蝶ヶ岳・大滝山あたりから遠く京都の丹波、氷ノ山までつながっている。

一方の白いのは白亜紀の花崗岩。巨大マグマが地下深くでゆっくりと冷やされてできたそうだ。霞沢岳の西尾根あたりから常念岳・燕岳、裏銀座、上の廊下、北は劔の北方稜線まで続く巨大岩体。ただし赤木沢のナメを作りトロを囲む花崗岩はもう少し古いやつらしい。

つまりは、黒いメランジュと白い花崗岩の境界線が、一ノ俣の手前辺りにあったというだけのこと。




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槍から穂高への稜線は、比較的新しい時代に超巨大火山が噴火した際、もの凄い高温の火砕流がその熱で固められて出来たらしい。信州大学の地質学、原山先生というお方が本に書いておられた。

ただ、槍ヶ岳のあのトンガリ、正確には飛騨乗越から肩の小屋、そして大小の穂先だけは古い古い、古生代デボン紀から石炭紀の「長門変成岩類」と呼ぶそうだ。その歴史たるや3-4億年。海にはアンモナイトが泳ぎ回っていて、Wikiには「動物の陸上進出」とある。当然、槍も穂高も姿かたちも無く、この列島も大陸の「へり」だったころに造られた岩の名残だ。

もうひとつ、上高地温泉ホテルの裏に、ウエストン卿のレリーフがあるあの岩。あの岩は、発見した前述の原山先生によると「滝谷花崗閃緑岩」といって、地球上で最も新しい(若い)基盤岩だという。基盤岩というのは地球のかさぶたみたいな即席の溶岩とかじゃなくて、大地の骨格を造る岩のこと。約176万年前に出来て、それがこんな短期間に地表に露出した、という事実が、北アルプスの急激な隆起を物語っているそうだ。詳しい続きは、山と渓谷社から本が出てる(ISBN-10: 4635201015)。

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そういえば、このレリーフがある尾根の反対側を、西穂高の小屋に登るコースが付けられている。そこには隠れるようにヘリポートがあって、荷揚げの日には山小屋の関係者が下界からわんさか集まる。ラマやス-パ-ピュ-マの爆音がみんなの顔を明るくする。ヘリが飛べる、それは無事に荷揚げが進むことを意味するからだ。こっそり書くけど、ス-パ-ピュ-マのエンジン音は凄いよ。ラマはせいぜい1tしか積めないけど、ス-パ-ピュ-マは3t超えるぐらい運ぶから。こいつが飛ぶと、稜線の山小屋にはたっぷりの酒や食糧が届く訳だ。




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またまた、役に立たないネタだった。

でもね。
眺めのいい岩尾根のテラスで一服しながら、あるいは沢深く大滝に挑みながら、もしかしたら垂壁のボロボロのリスにナッツが効かないと悪態をつきながら、この岩は何億年前に生まれた岩なんだ、って撫でてみよう。撫でたところで、そのナッツががっちり噛んでくれる訳じゃないけど。
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by yabukogi | 2013-01-20 20:00 | 山の小ネタ
2013年 01月 10日

眠れぬ夜の三角点

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山の小ネタということで、お暇つぶしにどうぞ。



国土地理院が【基準点成果等閲覧サービス】というサイトを運用している。電子国土ベースに水準点、基準点などの個別な情報を提供してくれるものだ。水準点、基準点とは地図作りに必要な三次元上の「点」のことで、少し前に新田次郎の『点の記』が映画化されたことは記憶に新しい。



基準点とほぼ同義で使われる「三角点」の方が我々ハイカーにはなじみ深い。
上に書いたサービスでは、この三角点の個別の情報を見ることができる。

ただ、それだけ。


そう。それだけ。


たったそれだけなんだけれど、眠れぬ夜にMacのディスプレイの前に座って地形図を眺め、あの尾根この谷とハァハァ言ってる僕には、とても愉しいのだ。


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奥穂の嶺宮様の祠の辺りを探しても、三角点は無い。三角点の名前が【穂高岳】と名付けられているのは、前穂の山頂標識のすぐ南側にある、一辺18センチの花崗岩の石柱である。しかもこれ、一等三角点。そもそも三角点は測量のための基準点だから、別に最高地点の奥穂のてっぺんにある必要は無く、見通しとか角度とかそういう理由で設置場所が選ばれたのだろう。



同じことが、常念でも起きている。

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穂高のケースと同じように、一等三角点【常念岳】は常念のてっぺんには無く、前常念岳2661.8mのピークにある。ピークと言っても尾根の一角のようなところだ。ここも常念本峰ではなく、測量上ここで良かったのだろう。


べつに知ったからとて何の為にもならん話だけれど、ハァハァ眺めていると、「あれれ?」と思えるようなことも沢山出てきた。

裏銀座の稜線を眺めていたときだ。

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おぉ。
【烏帽子岳】の三角点は、北隣の南沢岳てっぺんにあるのか....。そういえば烏帽子のてっぺんはでっかい花崗岩の塊で、あの岩に石柱を埋め込むのは面倒くさそうだ。



そのまま針ノ木まで辿ってきて、また唸った。
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おや。針ノ木の三角点名は【野口】になっている。野口というのは大町の地名で、高瀬川のほとりにあたる。むかしから針ノ木峠が通じていたから、針ノ木岳は「野口村の奥の山」と捉えられていたと想像できる。



こんな風に、あの山この山と三角点(基準点)の名前を眺めていて、奇妙なこともあった。

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雨引山というのは常念山脈の前衛の山で、古くから雨乞いの山として祀られていたらしい。ここの三角点が、【唐沢山】と名付けられている。唐沢山はすぐ隣の山なのだけれど。

このためか、数年前まで道路地図やあちこちのネットの地図でも、ふたつの山の名前が入れ替えられて表記されていた。


北アのもっと北、朝日岳でも、ちょっと不思議なことが。
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朝日岳の三角点名が【雪倉】になっている。雪倉山というおやまはふたつ離れた別のお山。ちなみに雪倉山の三角点名は【六兵衛】。



地図が作られた当時、測量官が地元の案内人に尋ねたのだろう。
 「あの山は、なんと申す?」
 「へい六兵衛と申します、あの山に入る杣(そま=樵)の頭が六兵衛と申します」

そんなエピソードに思いを巡らし、ぼんやりと脳内の山旅を楽しむのも、悪くない。



あなたがこんど歩く尾根の無名ピークにも、歴史を秘めた名前が冠されているかもしれない。



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 あのさあ、マタタビの件だけど。




 おいよく聞け。眠れないのはマタタビ舐めてないからじゃない。
 おまえ、朝も昼も夕方も、ずっと寝てるじゃん。
 寝過ぎだっつーの。



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by yabukogi | 2013-01-10 18:51 | 山の小ネタ