一週間前に仕込んだ和歌山県産南高梅は、24時間を待たずに梅酢を上げてくれた。一番てっぺんの梅が梅酢に浸された瞬間、カビ発生のリスクは大幅に低減される。ここまでくれば梅干づくりは半分成功、あとは土用干しまで瓶の中に寝かせ、お陽さまを選んで干し上げてやるだけ。
僕はすっかり調子に乗ってしまって、さらに梅を漬け込むことにした。
近所の八百屋で求めたのは、群馬産の10kg。安いだけあって、痛んだものもあり、1kgはロスとなった。梅ジャムに挑戦してみようか?
小さな傷があるものが上段の方に漬け込まれると、梅酢が上がるまでのわずかな時間、空気に触れてしまう。これがカビを発生させる原因になるだろうと、難ありのものから下の方に並べていく。こうすれば、数時間以内に梅酢の中に浸され、カビから逃れられると思ったからだ。
丁寧にていねいに、すき間無く並べながら詰め込んでいく。体積を節約すれば、それだけ早く、梅酢に沈むことができるのだ。塩分量16%。吉と出るか凶と出るか。
樽を台所の隅に設置。重しには、2.7Lの水を4本、1.8Lを1本、その上に4.5kgの漬物石。合計17.1kg。これなら明日には梅酢が上がるだろう。
しかし、すこし前に
「ウイスキーをペットボトルで買うんだ」とカミングアウトして恥をかいたのだけれど、ペットボトルでなければならない理由に、こんな合理的な要素があったなどと、誰が想像し得ただろう。僕に死角は無い。