2013年 06月 10日

薮尾根の怪異

みなさん。

ひとりクルマを運転しているとき、なんとなく、後部座席に誰かが乗ってるんじゃないかって、そんな錯覚に抱きすくめられたことはありませんか?


あるいは、独り部屋の中に過ごしている時に、あれ誰か居る? って視線をめぐらしたような経験はございませんか?

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それは、いまからひと月すこし前。
北アルプス常念山脈から派生する、薮尾根を歩いた折りのことでございました。


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5月の連休の一日。
わたくしは、以前から気になっていた、ある尾根を歩いたのでございます。そこは、一般のハイキングコースはおろか踏み跡すら無く、さらに言うならば山菜が採れるような植生や標高でもなく、誰かが入ってくるような場所ではございません。


そんな無名の、道も無い尾根で、わたくしは奇妙な出来事に遭遇したのです。

ご承知のように、わたくしはきちんとした山岳会で鍛えられたわけではありません。ですが、同好会のそれなりに厳しい訓練は受けています。たとえば雪上歩行で足の置き方が悪いと、背後からピッケルでぶっ叩かれる、というわけです。そんなこともあり、足の置き方、雪面プレスの仕方にはかなり気を使うわけです。

ピストンする場合、往路のトレースから容易に自分の足跡を選ぶことができます。それぐらい、神経を配っていると言えるでしょう。


その日も、そうだったのでございますよ。

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石楠花などの薮がかった尾根歩きを途中で諦め、退却を決めた後でした。

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なんとなく、言葉にし難いような違和感を覚えたのでございます。先に書きました、クルマの中に... ってやつです。これが、短時間のあいだに3回ほど続きまして、わたくしは全身に鳥肌が立ちました。


やがて、気持ちを切り替えて、前後に「別なパーティーが入ってる?」そう考えてみることにしたんです。会話、熊鈴の音、そう言った気配を探してみたのです。


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この尾根に、積雪期に入ってある無名ピークを目指したパーティーの記録を読んだことはございます。ネット上でさんざん調べて、過去に3件。たった3件でございますよ。そのひとつはわたくしの尊敬するB氏で、彼は山頂を踏んで来ています。他のふたつは積雪期のラッセル&野営訓練みたいなもので、下の方で引き返しています。

林業関係、治山関係はというと、有り得ることなのですが、実はこの日でも、ここへ至る林道がデブリに埋もれ、何カ所も通行できなくなっています。なので、林業治山関係の線も薄いかなと。


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つまりですね、合理的に考えると、この時期に誰かが入り込むような尾根ではない、と結論づけられるんです。いえ、わたくしのようなへそ曲がりが他に居て、薮が雪に埋まった春を狙って踏破を試みた、という可能性は否定できませんが。


そんなことを考えながら、この違和感の正体を特定しようとしてたんですわ。

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ありましたよ。
足跡でした。

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こんなところに、今シーズン、誰か入ってきたのですね。驚きです。



うわ。なにこれ!


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もしかしてこども? それとも女性の小さめのサイズ?



いやいや、さっぱりわかりません。ますますわかりません。大きな山靴跡だけなら理解もできます。でもあの小さな足跡は何なのでございましょう。




春の日の、不思議な出来事でございました。
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by yabukogi | 2013-06-10 12:00 | 書くまでもないこと


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