その男、薮の彼方に消ゆ

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2013年 05月 04日

挫折討死無名稜線

この稜線に上がって、もう2時間近く。

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樹林帯の痩せ尾根には灌木、倒木が続き、容易に距離を稼がせてくれない。いやらしいアップダウンが繰り返される。石楠花が出始めて、これは突破できないから稜線の北側急斜面に貼り付いてトラバースを続ける。そんなことの繰り返しで、ようやく2,150高点を通過、続いて2,250mのコブを越えた。あと少し、あと少し....。


2013年5月3日。
僕は目の前に立ちはだかる無名峰2,467.0の直下、標高2,300m目前の地点で雪の壁を前に歯ぎしりしていた。また追い返されるのか? 事実、前回は薮に敗退しているのだ。

そして僕は今回もまた、退けられた。




■横通岳東方稜線

北ア・常念山脈の横通岳から真東に派生する長大な尾根に、名前はない。便宜的に横通岳東方稜線としておく。稜線は、ふたつの目立ったピークをもたげて尾根を延ばし、浅川山、富士尾山と高度を下げて最後は安曇野に没する。

このふたつのピーク、安曇野では「ふたつ耳」とか「烏帽子・大滝」などと呼ばれることもあるようだ。山麓から眺めれば常念岳・横通岳と並んで、もの凄い存在感で聳えている。
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この稜線上の2467峰(基準点・大滝)が気になってはや数年。2008年3月は偵察まで、同6月には笹が想像以上にはびこり敗退。三度目の正直なるか、と装備を整え訪れてみた。




■またしても、激薮

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安曇野の夜景、その向こうに雪の稜線がほのかに白く浮かび上がっているはずなのだが、見えない。ガスが巻いているようだ。自宅からカブで1時間、真っ暗な林道に突っ込む。長くうねる林道の終点近くなると、ヘッドライトに雪片の軌跡が浮かび上がる。ガスは雪雲なのかもしれない。


夜明け間近。林道の峠地形で、カブを停める。前回は6月だったため尾根は笹薮に覆われ、進路を阻まれた僕は1kmちょっとで引き返している。今回はこの教訓から、締まった雪の上を歩ける4月を狙った。しかし何故か肋骨をポッキリ折ってしまい、GWまで延ばさざるを得なかったのだ。

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準備を済ませ、すぐ背後の斜面に向う。



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ところどころ融けはじめているものの、まだ林床に雪がある。この雪が笹を押さえつけてくれている、いまの時期がラストチャンス。朝日にまぶしいダケカンバの森をゆっくりと登って行く。



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振り返れば雲海の上に、光が満ちる。安曇野は雲の下、夜明け前に見たあのガスの上に居る。



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高度を上げると、雪が深くなる替わりに笹が出てきた。地形的に南の風を受けるのだろうか。



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やばい。笹が...。前回の教訓が生かされていない。




■迂回

ここの笹の突破は、無理。
雪がある斜面を求めて、僕はいちど戻ることにした。


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途中から山腹を北側に巻くように移動すると、浅い谷にはたっぷりの雪が残されていた。



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それでも、もう5月なのだ。あちこちで雪面が割れている。やがて笹の支配が始まる。




行動開始から1.5時間、薮漕ぎせずに尾根の1972高点に到着。北から迂回したのは成功だった。

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帰路、尾根を直進してしまうとあの激薮に突入してしまう。直角に折れる箇所をマーキングしておく。もちろん帰りに回収。




■残雪の尾根

この先、尾根は痩せてくる。地形図でも左右が切れている様子がうかがえる。
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灌木がうるさい。石楠花が出てくる。

樹林帯だから高度感は皆無。しかし尾根の稜線上に灌木や倒木があると、北側をへつるように急斜面に貼り付いてトラバース。南側は笹が出ているためだ。



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早朝、雪は締まっていて歯も爪もよく効く。



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右手前方に、常念山脈北方の稜線がまぶしい。左が合戦尾根と燕岳、あの辺は賑わっていることだろう。一方、この尾根には僕独り。中央がケンズリ、餓鬼岳あたり。右の黒いのは有明山。さらに右には白馬から小蓮華の稜線も。



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目的地、基準点「大滝」の置かれた2467.0峰が見えてきた。まだ遠い。これも北側をトラバース中に撮っている。斜度はおおむねこんな感じ。疲れも出てくる。左手でピッケルを握っている時にアバラが折れた左の背中が痛み出す。



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柏草餅をほおばる。餅系の和菓子は凍りにくくて良い。



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大福も。痛み止めのロキソニンも飲む。



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途中、東沢乗越の奥に、劔が見えていた。不鮮明な画像で申し訳ないけど、本峰と長次郎のコル。



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2467.0峰までもう少し、2150高点に到着。ここから標高差350m、水平歩道のような尾根を来た身に、この登りが堪えた。身体を持ち上げる時に背中が痛んでたまらない。



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山頂下、2,270m付近だと思う。急なやせ尾根の登りで、左は日光に雪が腐って刺さったシャフトを支持できない。右奥には露岩の連なるほぼ岩壁。ちくしょう討死だ。

なんどか息を整えながらも、ここで退却を決める。





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退却地点からの前常念・常念岳の稜線。ましろき屏風のように、左側に立ちはだかっていた。うつくしく巨大、に尽きる。





■反省

GWでは遅かった。やはり4月に来るべきだった。雪が腐って不安定に登るリスクを取ってはいけなかったのだ。4月では林道がデブリに埋まっているのでもっと下から歩くはめになるが、夜明け前に歩いてくれば良いだけだ。

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それから、骨折を早く治そう。折れたままここへ来たのが、間違いだったのだ。




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やはり遠かった2467峰。
帰りに眺める。白いのは横通岳、目の前の谷は常念に発する一ノ沢。眼下はるか、写真中央付近に一ノ沢登山口の建物が見える。




■山麓
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安曇野でも田植えが始まる。田んぼに残雪の山々を写して、春は満ちていく。

今回またしても退却となってしまったげれど、僕自身はとても楽しむことができた。雪の上でも身体が動かせたこと(痛みは別にして)、ルートファインディングもそれ自体が楽しいものだった。

山の神さま、ありがとうございました。
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by yabukogi | 2013-05-04 09:15 | 北ア・前衛の山々


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