きもちわるい動物を見かけることがある。
それは、何の前触れもなく、いきなりやって来る。
まだまだ寒い信州の三月、僕はホットカーペットの上に寝転んでいた。
背中が温められると、疲れが床下に逃げて行くようだ、いつしかうとうととまどろんでいた。
何かの気配を感じた。
僕の顔のすぐ傍らに、ねこの生首が置かれていた。
身の毛もよだつ恐怖、魂まで凍える体験というものを、知った。
ダイニングのローテーブルの下に、まあ座卓だけど、毛布があった。
だれか昼寝で使ったまま?
膝で押しやろうとしたら、にやと音が出た。
額を、狭くて狭くて、温める必要もないぐらいの額を温めている、
きもちわるい生き物が寝ていた。
顔を観察してみよう。
醜い。
美という人類の価値からもっとも遠い地平にある、その顔。
ねこは、おのれを写す鏡なのかもしれない。