2011年 05月 11日

独活(うど)をきんぴらで。

春爛漫の宵。


笊にあけた独活(うど)の穂先、そして皮を眺めると、ぴしゃと舌なめずりを隠せない。
これをどのように仕立てて、今宵の酒を愉しもうか、ひと思案が始まるのだ。

天ぷらも、いい。
さくりと歯ごたえをたのしみながら、
くちいっぱいに広がる春の香りを堪能できるだろう。


いっそ、味噌でくるんで炙り焼きにしては、どうだ。
ほろ苦さが香ばしさをまとって、それこそ

「得もいわれぬ...」

味わいになることだろう。



掌の湯呑みの重みが消えて、最初の一杯を飲み干したことに気付く。
なみなみと注いだ安曇野明科の銘酒「広田泉」が、
いまは僕の胃の腑のあたりで鎮まっている。
たまらなく、美味いひと口だった。染み渡るような、味わいであった...。




きんぴらにしよう。
独活のこしらえが、この瞬間に決まる。


独活の穂先と皮。
前の日に伯父の畑を手伝った折り、ひとかかえも持たされた土産。
前夜は茎の太いのを選んでくるりと皮を剥き、
まっ白なその軸をわずかに流水にさらし、薄くそぎ切りにして酢みそで味わっている。

その際に残った皮と穂先が、いま、目の前にあるのだ。

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皮はややあくが強い。
千六本、昨今はこのような呼び方をしなくなったけれども、
燐火の軸よりやや幅広めに包丁を入れる。
刻んで流水に、しばらくさらす。
流し過ぎると香りまでが消え去って味気ない。
この加減が、難しい。
穂先はあくが少ないので、割るようにして太めに揃える。
こちらは水に、さらさない。



鉄鍋に胡麻油を敷く。
温まったところで、独活を放り込む。
火力は強いままがいい。

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油が回り、火が通る。ひとつまみを口に放り込む。
前夜、酢みそで味わった白い軸では及びもつかない、
野趣溢れる春の山の味わいが一瞬に弾け、理性が押しつぶされそうになる。


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たかのつめを投じる。


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砂糖を加える。
我が家には白い砂糖はなく、唐黍の色を残したものを使う。




火加減は強いまま、醤油で味を整える。香りに、目眩を覚える。

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小鉢に盛ったところで、湯呑みを携え、台所の隅に向う。
冷やした「広田泉」をふたたび取り出し、とくとくと音を立てて注ぐ。




窓の外は雨。
降りけむるように、続いている。
山の雪解けが、いよいよはじまるのだ。
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by yabukogi | 2011-05-11 13:42 | 喰い物のこと


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