その男、薮の彼方に消ゆ

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2010年 12月 21日

美味しい煮豚をつくるの記

煮豚をこしらえてみよう。

豚肉の塊はどんな風に煮豚になっていったのか、その変化はどのように進んで行ったのか、つぶさに観察してみるのだ。



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豚肉は【安曇野酵母豚・肩ロース】というものをブロックふたつ使用。粗塩を擦り込み、ラップにくるんで一晩休ませ、取り出して凧糸を巻いた。凧糸を巻くには理由があり、これは煮崩れ防止以上に、煮込み中に不用意に肉塊を揺さぶったり変形させたりしない、という狙いがある。事実凧糸を省くと、味は染みていくのだが肉汁が逃げてしまっている。煮込んでいるうちに押さえつけたり揺さぶられたりして、大切な旨味を失ってしまったのだ。逃げた旨味の多くは、浮いた油にも溶けたのだろうか。油の多くを取り去ったら、旨味の足りない煮豚になってしまった。しかし今回は何も妥協しない。






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肉塊は、一度焼く。炭火や直火で炙り焼きにしたり試してみたが、やはり油を敷いて焼くのが最適なようだ。油にはショウガ、ニンニク、長ネギを投じて香りを出しておく。この程度の香り付けは意味ないと思っていたが、完成した煮豚の表面には、香ばしいかおりが残っていた。



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肉塊をソテーする。火を通すのではなく焼き目を付ける。そっと向きを変えながら全面を焼く。



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このままかぶりつきたい。むしゃぶり尽くしたい。そんな誘惑のある姿。焼けた肉の表面というものは、なぜにここまで官能的なのだろう。



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さきに油に投じたショウガやニンニクは、煮汁の方に移動している。



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煮汁は紹興酒、日本酒、ザラメに水を少々。ここに粒胡椒、タマネギやニンジン、セロリの葉も入った。



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煮込みを始める。中火にかけ沸騰するまで絶対に目を離さない。浮かんでくる灰汁を丁寧に掬い取り去る。灰汁が出なくなってきたら、とろ火にする。この段階で、塩分は前の晩に擦り込んだ下味の粗塩だけ。ここから数時間、時おり立ち消えてしまう火のお守りをしながら灰汁をすくう。落としぶたを載せるがふたはしない。絶対にしない。水分が減りすぎたら湯を足す。酒でも良い。



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金串を静かに刺してみる。もう数時間煮ているから、抵抗なくすっと入る。確認したら、ここで初めて醤油を加える。

醤油を加えてさらに数時間煮た。理想的には炊飯器の保温だろう。あいにく我が家には炊飯器が無いため、寝るまでとろ火にかけた。表面には油が厚く浮かんでいる。これを掬わない。捨て去らない。




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絶対に省いてはならない工程に、完全に冷ます、という手順がある。冬の信州である。台所で2-3度まで下がり、むしろ冷蔵庫内が温かいぐらい。冷ますことで変化が起きる。煮込み中にはあまり肉にはしみ込まなかった調味料と野菜などの旨味が、肉に入るのだ。理由は知らない。まだある。冷ました後、鍋の中は真っ白な油に覆われる。肉の脂である。今度はこの脂を取り出してかまわない。余談だがこれには使い道があるのだ。冷蔵しておいて、チャーハンや炒め物に使うと美味い。もちろんラーメンにすこし加えても。


冷ました肉塊は、すでに煮豚である。しかしもうひと煮込み、かるく温めるような加熱を行おう。炊かれてゆるんでほぐれた肉の繊維に、もういちどぷるんとした張りが戻る。


取り出した状態で密閉冷蔵すれば数日保つだろう。企みがあった。多めにこしらえて、家族が居ない日を選んで、この半分、まるひと塊分を削ぎ切りにして熱い飯に載せる。ネギとショウガを刻んでタレに絡め、がっつり喰らう...。



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さて夕食時、これを取り出して薄く切る。肉汁がこぼれてくる。匂いを嗅ぎ付けた豆どもがやって来て、固唾をのんで見守っている。ごくりとのどを鳴らしている。



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鍋の煮汁はこうして煮詰めて、バルサミコ酢を隠し味に忍ばせて、盛りつけ後にかけ回す。



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あぁ...。このあとの写真が無い。皿には煮込まれたニンニクと貝割れが残るのみ、肝心の煮豚は、喰われてしまったのだ。粗塩を擦り込む下ごしらえから48時間、手間も神経も注ぎ尽くした僕の煮豚は、一切れしか、味見の時の一切れしか僕の口には入らなかった...。





ふっふっふ。煮豚は、2本煮たのだよ。


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ご近所のカワムさんからいただいた秘密のラーメン。これにトッピングして、うはは。いただきます。






【材料等】
豚肉=肩ロース、500g程度を2ブロック
香味野菜=タマネギ1、ニンジン1/2、セロリ少々、ニンニク数かけ、ショウガひとかけ、長ネギ1/2本
調味料=粗塩(分量外)、ザラメ40-50g、紹興酒1カップ、日本酒1カップ、醤油1/3カップ、バルサミコ酢少々、水かお湯適宜。
※醤油は少なめで味付けして、時間を置いて加減をする。
調理時間=実質12時間、下ごしらえ含め48時間
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by yabukogi | 2010-12-21 10:51 | 喰い物のこと


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