その男、薮の彼方に消ゆ

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2010年 08月 29日

豚骨アタック・2010

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少年時代を過ごした北部九州のある小都市。再開発という名の暴力が蹂躙した街に、そのラーメン屋はもうない。一龍軒。その記憶は、薄汚れた店構え、外れそうな看板、通りに漂い流れる豚骨臭、そしてどんぶりという小宇宙に詰め込まれた味覚。そのどれもが僕のたましいを震わせるほどに、熱く、遠く、切ないのだ。

決して再び手を触れることができないもの。しかしその面影は、意外に身近なところにあった。






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もとより同じものではない。しかしこのひと袋が、過ぎ去った30年という歳月を飛び越して、一龍軒のカウンタで泣きそうに呟いたあの言葉を、取り戻させてくれる。

ほんなごつ、うまかっ!


そのためには、労を惜しんではならない。いくつかの小道具を拵え、載せ、ともに味わうのだ。


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スープは、グリコ社から良い豚骨スープが販売されている。僕にとってはノスタルジックなテイストの、豚骨ペースト。なかなかにクリーミーでこくもある。香りも良い。デフォルトの粉末スープよりも、さらにリッチな味わいを求める時に使用する。試してみると、自宅の仏壇にお参りするのと、帰郷して墓参するぐらいの違いがある。ひと袋50〜70円ぐらいか。このプライスで帰郷が叶うならば、何をか言わんや。



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チャーシューは焼豚式ではなく煮豚式で。これは国産豚肩ロース肉を10ミリ程度の厚切りにし、生姜と砂糖を加えた湯で一度茹でる。ここで余分な脂と臭みを抜き、湯を替え少量のタマネギ、ニンジン、ニンニクなどと一緒に半日とろとろと煮込み、さらに醤油と味醂と蜂蜜、紹興酒で味付けしたもの。1キロぐらいを仕込み冷凍保存、ときどき取り出して味わっている。


半熟卵は、電子レンジでこしらえる。卵ふたつを(むろんひとつでも)舟形の皿に割り入れてラップ掛けして加熱、1分15秒から2分ぐらいの間で出来上がる。加減は何度も試してから好みのタイミングを計るのだ。僕は、白身の水っぽさが無くなって黄身が半熟とろとろの状態を最上としている。むろん、蒸し上げる本格温泉卵や、半熟味付け卵が理想的であるが、僕にはそこまでのスキルが無い。


高菜漬けを省くことはできない。信州で入手可能な高菜漬けは限られるが、市販品を刻み、ごま油で炒め、味を整えた。甘辛めにしておくことで保存性を高め、小分けにして携行可能な状態にしてある。そう、山にも持って行けるのだ。バリエーションとして、針に刻んだ生姜を加えることがある。各家庭でそれぞれの味があり、少年時代のちゃぶ台の想い出は、この高菜の味わいにつながっている。


ネギは、どんな過ちを犯したとしてもこれだけは間違ってはいけない。白いネギなど使ってはならないのだ。青く細いネギだけが、ラーメンどんぶりの上に舞い降りる資格を持つ。刻みたてを惜しみなく、盛るのだ。このために僕は、青ネギを畑に植えている。市販の青ネギの下半分をプランターなどに植えておくと、すぐに根付くのだ。やがて青く若いネギが次々と伸びてくる。ラーメンを愛するならば、守り続けたい習慣である。


胡椒は、銘柄は問わないが、これも間違っても黒い胡椒を降らせてはならない。稜線に降る雪と同じく、天空に続く雪渓に等しく、ラーメンに振る胡椒はあくまでもどこまでも、白くなくてはならないのだ。無いからといってブラック・ペッパーを代用するような行為は、厳に慎みたい。なお僕は長年GABANを愛用している。


最後に、僕はいま、信州の地に生きていることを確かめてみよう。善光寺御門前、八幡屋磯五郎の【七味ごま】ふりかけ。うん、いまの僕には、これがなくては。



...しまった! キクラゲと紅ショウガが無いではないか!
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by yabukogi | 2010-08-29 09:47 | 喰い物のこと


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