その男、薮の彼方に消ゆ

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2010年 06月 29日

梅酢炊飯防黴観察録

梅のクエン酸は、ご飯の腐敗防止保存に働いてくれるのか?


世間一般では、梅干しのおにぎりは傷みにくい、というような認識がある。僕もそう思っていた。しかし友人のシェフに尋ねると、食品衛生業界では、梅干しがあるからと言って過信しないと言う。そういえばノロ(ウイルス)とか集団食中毒とか、過信が命取りになる世界だからシビアに捉えるのもうなずける。

僕としては、先日梅干しを投入して炊いた飯は美味かった、というような内容のことを書いたので、その延長で、梅酢で炊いた飯は保つか? を知りたくなったのだ。以下に、その辺の経緯を少しだけ書く。ご留意いただきたいのは、個人が好奇心から行った簡易な観察で、客観性のある測定や公正な比較を行ったものではないということ。結果はともかく、梅酢を使っての炊飯を推奨したり結果を保証するものではないということ、このことをご承知置きいただきたい。



【梅酢とは】
そもそも梅酢とは、梅干しを漬け込む時に生じる、しおっ辛い梅のエキスである。まぶした塩の浸透圧で果肉内部の水分が押し出され、容器の中に溜まる。クエン酸がたっぷり含まれるらしく、加えて塩分である。この液の中に梅を漬けておくことで、カビの発生や腐敗を防ぐのだと言う。

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漬け込み中の梅干しの様子。上に載せられた赤黒いものは赤紫蘇の葉。梅の実が浸されている赤い液体が、梅から滲み出てきた梅酢。これは本来はほぼ無色か淡いオレンジ色で、赤く染まっているのは紫蘇の色が移ったため。



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梅干しを入れて炊いた飯が美味なら、梅のエキス分である梅酢を使って炊飯すれば、さらに味わいも香りもよくなるだろう。ほんとうか?


まず、2合の飯を炊くにあたって、ナベに40ccの梅酢を投入する。水の量の設定にはいろいろなセオリーがあるのだけれど、今回は無洗米2合での炊飯に水350cc、梅酢40ccと設定した。おおむね、梅酢10%である。



【テイスティング】
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こうして炊き上がった飯は、炊飯中から胃袋がよじれるような香りの蒸気を吹き上げていたことから予感された通り、終末的なまでに美味を極め香り高く食感もよろしかったのだ。こんな朝食の全景だが、左上から時計回りに、信州産中粒大豆の納豆に庭の菜園の青ネギをトッピングしたもの、ハウス栽培のトマトを八百屋で購入したもの、せがれが食べ残したベーコンエッグの玉子のひとつ、地元の豆腐屋の木綿豆腐の汁に庭のネギを散らしたもの、で、南高梅大粒と10%の梅酢で炊いた安曇野コシヒカリ無洗米、中央は塩ますの焼き物エンドウ添え、塩ます横の黒いやつは庭の葉山椒の佃煮の残り。白米以外は本稿とは無関係なので詳細は割愛する。


さすがに朝飯で2合をぺろりとやると、苦しすぎる。わずかな飯が残ったので、カビは何時生えて来るだろうかと観察することにした。ようやく本稿の主旨である。連日の雨、高い気温と湿度、カビ菌の元気さは、想像するまでもない。そこへ、炊いたまましばらく空気に触れさせたご飯を、特に消毒もしないそのへんの皿に盛り、ラップをぴっちり掛けて、蒸れて水滴が着くのもそのままに、常温の屋内に放置する。



【観察開始】
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炊飯データは、2通りとなる。まず、「梅酢炊飯サンプル」であるが...
◆炊飯日時:2010年6月24日7時頃
◆炊飯条件:安曇野コシヒカリ無洗米2合+水道水350cc+梅酢40cc+南高梅干し1個
◆梅酢:梅酢は塩分18%で漬け込み中のもの
◆ラップがけの日時等:同日09時18分、室内気温22.3度
◆分量たぶん50グラムぐらい

続いて「通常炊飯サンプル」であるが、比較できないと意味が薄れると思い、あとから用意されたものである。条件としては梅酢を投入していない、および炊飯日時が10時間後(晩飯の分だ)である以外、大きな違いは無い。とにかく、この両者をラックに放置した。常識的に考えれば、保温保冷を行わないご飯であれば、24時間が限界だろう。


【経緯】
まる二日間、どちらのサンプルも48時間は外見上の変化は認められなかった。正確には梅酢入りのサンプルは60時間、変化は無かったのだ。が、72時間を過ぎる頃、6月27日の夕刻、通常炊飯分に「すえた臭い」というものが認められた。下の写真では左が梅酢、右が通常、はたして...


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06月28日12時15分。まる4日、100時間近くが経って、通常炊飯モノにびっしりと白いカビ、かつ数カ所の黒いカビが生えている。おお、やはり来たか! よく見れば、梅酢サンプルにも一カ所黒カビ。


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06月28日18時48分。通常炊飯サンプルは、どんどんカビが広がっていく。梅酢サンプルは、やや黒カビが大きくなったか... という程度。


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06月29日09時00分。今朝。5日目にして通常サンプルはべとべとした感じの腐ったご飯、という判りやすい状態だ。


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112時間後、羽毛のようなカビをまとった通常炊飯のズーム。


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122時間後、一カ所だった梅酢炊飯の黒カビは、近くに転移している。


【結果】
公正で客観的な答えは得られなかった。まあ、設定とか手順に問題があるから当たり前だろう。

が、主観に過ぎないが、72時間以上過ぎた「梅酢炊飯サンプル」には、カビも異臭もなかったことは確かだ。また左右並べた写真からも、時間的に不利な条件の「梅酢サンプル=左」の方のカビが少ないことは明らか。これを保存性の保証と考えてはならないが、ま、多少は保ちがよろしいかもしれん、そういうことに留めておこう。それでも、この香り、味わい、塩むすびにして携行しても、楽しいランチになるはずだ。


※推奨しない、と書いておきながらアレだが、梅酢は手作りしなくとも市販されているものを入手できる。調味料関係の品揃えが良いところでお探しあれ。通販でも【梅酢】で多数ヒットするようだ。

※後ほど思い当たったのだが、カビ以外の腐敗菌とか雑菌とかいろいろの菌のことは、素人には観察も検出も叶わないので、特に言及しなかった。当然大繁殖してるだろうから、カビが生えていないからと言って安全であるとも限らぬので、注意するべきだろう。
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by yabukogi | 2010-06-29 10:52 | 喰い物のこと


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