その男、薮の彼方に消ゆ

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2010年 06月 21日

僕には梅干しがある。

庭の真ん中付近にやたら葉を茂らせる一本の樹があって、仰ぎ見れば実を付けている。


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そうか梅だったのか。そういえば三月にこの家を下見に来たおり、花が咲いていたっけ。近頃忙しすぎて、花が散り実を結んでいくような季節や命のいとなみを観察する余裕も無かったのだ。この樹の梅の実は少なくて、数も数えるほど。もう一本ある若い樹の実を合わせても、梅酒をひと瓶作れるぐらいしかない。うぅむ、梅干しを、作ってみたい。





先日、近所の浅間温泉へ湯浴み散歩に出掛けた帰り、田んぼの脇の無人販売所でも梅の実が売られていた。今だけ、出回っているのだ。自分で漬け込んだ梅干しの味わいを想像し始めると、もう身体が梅干しモードに入ってしまい、抑えが効かない。八百屋へ行くと、【南高梅】という果肉の厚い梅干し向きの品種も積み上げられており、手頃なものを選んで4キロ求めて帰る。



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瓶(かめ)を消毒して、焼酎で洗って塩をまぶした梅の実を詰めていく。重しをしておくと数日で梅酢が上がってくるのだ。梅干しというのは、この梅酢づくりの副産物で、梅酢を採っただしがらをその辺に放置しておいたら程よく天日干しになった、ということだそうだ。むかし、婆さまから聞いたことで真偽は知らない。婆さまの梅干し作りや味噌の仕込みの手伝いをさせられたのはもう四半世紀以上も前のこと。手順も、聞いた話も、きっと間違いだらけだ。


僕も自家製梅酢にはいくつかの企てがある。肉や魚の下ごしらえに使おうと思っているのだ。以前に親戚宅から届けられた梅酢は、豚肉に振っておくと臭みを消してくれるばかりか、かぐわしい花のような香りを添えてくれた。手羽先、ささみ、白身の魚などと相性がいい。


塩漬けにした梅を数週間後に上手く干せれば、梅干しとしては完成。僕は減塩などせずにきっちり18%で漬け込んだ。お盆の頃ちょうどいい具合になれば、夏の終わりの鹿島槍天幕ハイキングには間に合いそうである。赤岩尾根を上るのか、柏原新道からか、時間が許せば針ノ木から歩こうか。18%のしょっぱい梅干しをしゃぶりながら、あの稜線を歩くのだ。

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 ◆◇◆



そんなある朝、野良炊飯を始めようとして、思い当たった。

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あぁ...野良炊飯というのは、北海道のhamayoさんが名付けてくれた、僕の飯炊きのこと。ふだんはDUGのPOT-IIという黒いやつで2合炊き、家の中でやる。天気がいいと、庭の楢の木の下でやる。で、飯を炊くときに梅干しをひとつぶ、入れたらどうなるだろう、ということだ。



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梅をひと粒、ナベの中に入れてみる。トランギアのアルコールストーブが青い炎を上げてナベの底をあたためる。やがて沸騰が始まり、しゅうしゅうという音とともに蒸気を噴き始める。うわお、この香り、最高。



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炊き上がり、蒸らしを終えて蓋を取る。梅干しは、何事も無かったように白い飯の上に座っていた。ご飯は、ほのかに芳香の衣を羽織っていて、言われなければ気づかぬ人も居るだろう。美味い。箸が勝手に飯を取りに行く。せがれと一緒に2合炊きがあっという間に消えてしまった。



この後、昼にもう一度2合を炊く。梅干しを増やしたら? ということでふた粒にしたら、ちょうどいい。1合にひと粒ぐらいが程よいのだろう。こうして炊いた梅の香りめしは、クエン酸が染み渡って保存性に優れるかもしれない。これで塩むすびでも拵えて、傷み具合の実験をやってみよう。
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by yabukogi | 2010-06-21 05:08 | 喰い物のこと


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