2010年 05月 19日

さんぽ式ストーブ(R)を検証する

朝から風が吹き荒れている。


庭を転がるバケツやブーツを眺めていたら、ふと思い立った。今のテント(エスパース・ソロ)を使いはじめて1年が過ぎるが、数回の使用機会では常に無風か微風。幸運なことに、強風下で設営したり撤収したりする機会が無かった。ならばこれは良い経験になるだろうと、すぐさま設営を試みる。ペグ打ちに手間取ったりしていると、強風に持って行かれたテントが生け垣に張り付くほどの風である。それでもなんとかかんとか設営を終えると、「ふむ。前室で珈琲でも...」 となるのは当然の成り行きであろう。ということであれば、先日手元に届いたばかりの【さんぽ式ストーブ】の燃焼実験を兼ねて、点火式を行うことに決めた。


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知りたいことが、いくつかあった。もとより加圧して渦を吹き出すサイクロンのストーブではない。ジェット噴流でもない。カーボンフェルトが吸い上げた燃料をちろちろと燃やし、クッカーの底を丁寧に炙ることをミッションとするストーブである。したがって徒にハイカロリーを競うアスリートではなく、まろやかな山のランチの演出家である。精妙に作られたアルコールストーブとして、「使う愉しみ」のような部分を抽出してみたいのである。それでも道具であるからには、一応、次のことを押さえておく。


(1)500ccの湯を沸かすために必要な燃焼時間。
気温は摂氏21.2度(屋内)。春の中級山岳、あるいは夏の稜線の日中の気温といえるだろう。汲み置きの井戸水を使用するため、水温は20度と考えて差し支えあるまい。この条件下で、何分でお湯が沸く?


(2)ストーブを満タンにした場合の、継続燃焼時間。
2オンスのアルコールが入る設計になっているが、継続してどの程度もえつづけるのだろう。珈琲程度か、ランチが可能か?


(3)火力調節の具合。
カーボンフェルトの【芯】を上下させることで火力調節が可能である。その絶妙な機構の、実際の様子を確かめてみたい。






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屋外で燃焼を開始して、大きな間違いに気が付いた。風が強すぎるのである。ハンマーが写っているが、これはアルミのペグで風防をペグダウンしてあるのだ。しかしぺらぺらのアルミ風防は何の役にも立たず、500ccの湯を貯えたナベが突風に吹っ飛ばされるという結末を迎える。


このとき、ストーブも転がるハメとなったが、カーボンフェルトのおかげですこしこぼれる程度、庭の芝が炎上するようなことはなかった。CFを最初に詰め込んだJSB師の叡智には、しずかに頭(こうべ)を垂れる思いだ。



気を取り直して屋内で実験を再開する。


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条件を記す。

■気温21.2度(屋内)
■水温、約20度
■容量、500cc
■燃料、【ケンエー燃料用アルコール】、満タン。
 (メタノール76.6%/エタノール21.4%/イソプロパノール0.3%)
■風力、屋内のためおおむね無風
■ナベ、DUGのPOT-I(アルミ・ハードアノダイズド)、およびSP焚(スミフロン)

ストーブの上端に水平に見えるのがカーボンフェルトの芯。液面をほぼこの高さまでの満タンとした。背景の緑色の物体は、ペグが風に負けたりしながらも強風に耐えているようだ。



■火力ミニマム状態

まず、カーボンフェルトの芯を引き出さず、上端のラインとツラで燃焼させる。

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点火から10分39秒。DUGのPOT-Iを満たした500ccが沸騰する。えらく時間がかかった、という印象は、逆に言えば「とろ火」が可能なことをあらわしており、炊飯や煮込みと言う可能性を広げてくれるものだ。


一度消火してから、今度はカーボンフェルトの芯を10ミリ引き出してみる。ただし、燃料の補給は行っておらず、最初に投入した2オンスの残りで燃焼させる。別に用意したSP焚(スミフロン)には同様に約20度の井戸水500ccが入っている。

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■火力マックス状態。

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なんと6分05秒で沸騰。体感的な火力は言うまでもないが、数字にはっきりと表れたようだ。この火力が僕の場合の屋外ランチ標準だろうか。ガスの方が早いは早いとしても、空を見上げて雲雀のさえずりを聞くような山の時間にはちょうどいい。

※芯の上げレベル10ミリを僕は勝手にマックスと設定している。クッカー底までの距離を考慮しなければ、20ミリぐらいは上げられ、それに伴って火力もアップするだろう。が、炎が立ち上がって収束するには、10ミリ程度が妥当だと思う次第。それぞれ実地にお試しありたい。


ここまでお読みになって「ん?」という方もおありだろう。

芯を引き出して使用した場合、火力は上がるが芯がストーブ内で「浮く」ため、ストーブ底の燃料を利用できないのでは? という点である。ここにその機構は書かないが、大丈夫、最後の一滴まで、燃やしている。





■トータル湯沸かし量

その後、6分半、炎は燃え続けて自然に鎮火する。消火と芯出しのために2分程度消えていた時間もあるが、25分間は継続燃焼できることも判った。その間に500ccずつ、2個のポットを沸騰させているのだ。



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つまりは、1リットルのお湯を余裕で沸かしたことになり、ふたりぶんのラーメン調理と珈琲までを賄えることになる。もっとも屋外では風の影響でロスも発生し同等の結果は得られないだろうが、実使用には問題あるまい。



■残った燃料は?

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もちろんスクリューキャップで、このまま携行も可能(制作者のさんぽ師匠はZip袋を推奨しておられる)。美しく軽く可愛らしいだけでなく、実に使えるストーブなのである。





【謹告】  2010/11/13追記
さんぽ式カーボンフェルトストーブの販売が始まりました。
Moonlight Gearのサイトからお求めいただけます。
軽さと美しさ、そして高機能を同時に手に入れたい方は、どうぞ!

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by yabukogi | 2010-05-19 16:28 | 山の道具のこと


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