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その男、薮の彼方に消ゆ

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2010年 05月 06日

春鳳凰の花の宴

テン場には、まだたっぷりの雪。
4月の後半のものに加えて、数日前の積雪。
深いところは股まで潜る。


快晴。数時間のハイクの汗を拭う間もなく、幕を張る。
幕を張り、ダブルウオールのものはフライを掛けるまで、飲まない...
いつしか不文律となった鉄の規律を思い出し、
小屋で買ってきたビアを雪に埋める者もいる。


ペグ、どうするだ? 
ガイラインは後でいいよ、今夜は風が吹かねえずら。
勝手なことを言い合いながら、我慢のふたが音を立てはじめる。
照りつける陽射しに、また汗が流れる。


ううう。しんぼう、たまらん!
ぷしゅっ。

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宴のはじまりだ。
思う存分、飲むがいい。
僕は下界からヱビスを持ち上げた。
ウイスキーは、角瓶1本分。



前夜から滞在して、すでに薬師・観音を往復してきたメンバー。
前前夜に入り、この日は鳳凰小屋を発って地蔵から戻るメンバー。
さらに、この時刻から夜叉神をハイクアップしてくるメンバー。


それぞれの行程ながら、ここに集う時間は、宴だ。
僕は信州牛のサーロインを分厚いステーキで4枚、880gを担ぎ上げたのだ。
腐敗せぬよう、自家製の青唐辛子味噌一年熟成ものを薄く塗ってある。
こいつを炙り、焼き、かぶりつき、味わう。





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鳳凰・南御室小屋のテン場に、山ではありえない肉の匂いが満ちる。
焼き上げ係だった僕は、シャッターを押していない。


お鶏さま、ウナギの肝、鮭トバ、つくね、すなぎも、木の実、ベーコン...。
それぞれが持ち上げた食材が、山海の珍味が、巡る。
工夫を凝らした飯が振る舞われる。


まるで冬眠を終えた熊が、日当りの良い沢のほとりに腰を下ろして
春の芽吹きや沢蟹を、音を立ててむしゃぶり尽くしているよう。
ああ、それは僕ですが何か。

春鳳凰の花の宴_c0220374_1585067.jpg

僕のランチは、アルファ米に【S&Bドライカレーの素】と厚切りベーコンを投入。


陽が傾く。
宴、たけなわのころ、斜面を駆け下りてくる縦走メンバーのコール。

ダスダスダスダスダスダス!

聖者の魂もとろけるような抱擁を交わし、宴は続く。
やがて後発組も合流して語らいは最高潮へ。
煌煌と照る月を杯に映し、山談義に花が咲く。
こころに残る山。失敗があった山。いつか歩く山。


いつしか眠りへと誘う心地よさに包まれて
それぞれが寝床に潜り込む。

山よ、仲間よ、グッナイ。


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今回もやすらかな眠りをくれたエスパース。ありがとう。


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一方、やすらかであったか否か、どうしても確信が持てないケース。
別なやすらぎ、永久(とわ)の眠りを連想してもいいだろう。


前夜の残りのベーコン・ブロック。
ふたたび担ぎおろすのもいまいましい。

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厚切りベーコンを軽くボイルし、
【クノール オニオンコンソメスープ】仕立てで味わうと、最高。
マカロニやニョッキ、あるいは切り餅を加えてもいいだろう。



陽が高くなる。名残を惜しむかのように、まぶしいひかりの中の撤収。
ザックを背に載せながら、山の神さまに、そっと心の中で手を合わせる。



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下山路では雪が消えた樹林帯をゆく。

長い下りだね。足が痛いね。温泉入れるかな。
風呂より先に、飯を喰おうよ。


おいおい、そんなことより、今度、いつ逢える?

僕は、しばらくの間、ひとり北アルプスを歩くのだ。
こうやって、仲間の背を眺めながら歩いたこの一歩一歩を
いつまでも忘れないようにしよう。




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最終のあずさに乗る。車両には、ひとり、ふたり。
もうこんな時間に移動する者とてないのだ。

帰り着いた松本の家で、クッカー類を洗って干す。
次回の山旅では、何を作ろうか。


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ハンワグのブーツも洗って、干す。
泥のこびりつきは、あの二日間で僕の心に残った出来事とは違って
力を込めてこすり落とすまでもなかった。


宴の後とは、よく言ったものだ。

by yabukogi | 2010-05-06 09:55 | その他の山域


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