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その男、薮の彼方に消ゆ

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2010年 03月 03日

モヤシライフ、2010

人物は小さいが、胃袋はでかい。
そう言われ続けただけあって大食漢である。


ふだんの昼飯なら、カツ丼大盛りと大だぬき蕎麦がデフォルトである。それでも足りなくて大福を欲しがるだろう。かといって不惑を過ぎてこの食欲を維持するとなれば、僕の人生のピリオドが狂ってしまう? ピリオド? 僕は、自分の墓穴には自分の脚で歩いて行く、そう決めたのだ。だからこそ、あと20年、テントを担いで北アの稜線を歩き回るためにも、時には気合いの入った薮漕ぎに出かけるにも、今年の上半期に軽量化するしかないのだ。


まず、酒を減らす作戦に出る。ここは大きなハードルだ。以前にニコチンを断ってしまった僕としては、酒と食は譲りたくない。外堀ともいえる【煙への愛】は、あっさり諦めたのだから、それだけに内堀の【酒への執着】を簡単に明け渡すわけにはいかない。


しかし僕はこの1月に、「尿酸値」という忍者部隊の奇襲を喰らう。突然の関節痛を突きつけられては内堀を捨てて撤退するしか活路はないのだ。結果的には平日の晩酌をやめ、愛すべき琥珀色のウヰスキーとは週末だけの逢瀬となる。


さて、冒頭に書いた胃袋との折り合いである。内堀を捨ててまで逃げ込んだ本丸である。喰って食って喉まで詰め込んで、そうしてはじめて生きている喜びを噛み締めてきたのだ。いまさらここでは書かないが、世間様から悪し様に言われる程、美食と飽食を楽しんできたのだ。そう、腹いっぱい食べることは、僕の【欲望の本丸】なのだ。僕が生きている最後の撤退ライン。この本丸を明け渡す時、それは「城を枕に討ち死に」することなのである。ああ、そうですかと白湯でも飲むようにあっさりと捨てられるものじゃない。どうする?


ダイエット法にあるような、晩ご飯はお粥にフルーツだけ、などと制約されるなんて我慢ができない。本丸なのである。そのへんの砦ややぐらじゃないのだ。なにか方法はないのか? まんぷくに満足を掛け合わせたような満たされ方をして、かつ内臓脂肪を蓄えないもの。本丸に居座り続け、明け渡すことなく、ただし軽量化への道へと導いてくれるもの...


こうして僕は、モヤシと出会った。


安く売られているモヤシでは、しゃきしゃきの食感に飽きてしまって続かない。ここは価格面で5倍ぐらいの【豆モヤシ】をセレクトするのだ。それでも100円程度、毎晩2袋を茹でるのだ。

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▲塩だけで軽く湯がいた豆モヤシ2袋分、これで110kcal

これを好みのドレッシングでいただく。いろいろ替えてみる。ポン酢も良い。若干の危険を伴うが、醤油にマヨネーズ少量がたまらん。また、ソロ盛りが続くと、単調である。黒部から読売新道を、赤牛岳目指して登って行くかの如くである。残雪や高山植物といったアクセントをつけよう。






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▲ほかの野菜と組み合わせる



酒を飲む訳でもないのに、あれこれ野菜を使ってみる。

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▲塩だけで味付けしたエノキの梅肉和え

酒の肴にたまらんのだ、こういうのが。冷えたジャパンをくいっと飲りたいが、我慢。


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▲茹でオクラ

ざっと塩で湯がいただけのオクラに鰹節。鰹節は摂りすぎると尿酸値に影響するから要注意だ。ヘルシーだと妄信してかかると危険な目に遭う。核心部をクリアしたあとにセルフビレイを忘れるような油断と言えるだろう。



このモヤシライフは昨年から取り組んでいるのだが、白状するといささか食傷気味であった。そこで2月から投入された新アイテム、春キャベツ。


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▲キャベツは、毎晩半玉が基本!

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量にたじろいではならない。ガッツりいくのだ。ドレッシングもいいが、塩ゆでしてあるからシンプルに、素材を楽しむのも良かろう。




モヤシと春キャベツのノーマル・ルートを満喫したら、バリエーションに挑戦したくなるものだ。無名峰のピークがなんとなく気になってくる、あるいは地形図に気になる尾根が見えてくる... ならばこうしよう。

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▲大好きな青ばた豆(手前は旬の生わかめ、奥はブロッコリの芽)

これは乾燥豆でも入手できるのだが、質のいい国産ものの流通量が少ない。そこでやや値が張るが、茹で豆として市販されているものをゲットだ。薄い塩味に引き立てられて、豆というものがかくも甘いものであったかと認識を改めさせられる瞬間を迎えるだろう。マイナーピークに独り立った時、無言の感動が湧き上がるに似ている。


ああ、タンパク質の摂取は豆だけで良いのだろうか。僕には栄養学とかそう言う難しいのは駄目なんだ。だから素直に肉も喰おう。

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▲僕の蒸し鶏

粗塩と黒胡椒を擦り込んだ鶏胸肉を酒蒸しにするのだ。このあとは手裂きにしてむしゃむしゃ喰らう。蒸したときのスープが美味極まるのだが、プリン体が融け込んでいることを懸念しておこう。一見やさしそうな岩峰だからといって取り付いたら、嫌らしい逆層のハングが待ってるようなものだ。おのれの技量を見極めるのだ。




大地の恵みをあれこれ盛り込んで、できれば三食ともに食したいものだ。むろん、これらに海のものを加えるに如くはない。海のものは得てしてプリン体の宝庫であったりもするから、そこはわきまえて海草に徹しよう。超低カロリー、ファイバーの宝庫、また風味絶妙にして食感に感動を伴うものだ。

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▲沖縄産のモズク(ピントがだめ)


忘れてはいけないのが、わかめだ。春先だけに出回る旬の生わかめを食する機会があれば、ぜひお試しいただきたい。乾燥カットわかめとは似て非なる風味と食感のハー&モニー。あなたを魅了して止まないはずだ。(上から2番目のフォト、大皿にモヤシとともに、また上の青ばた豆と共に盛られている)




アレを書いてしまおうか...。写真の掲載がためらわれるが、やむを得まい。

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海に悪魔が居るならば、そのエラはこんな様子だろう。

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▲生めかぶ

お、おそろしいビジュアルだ。鮮魚コーナーでこれを手に立ち尽くしてしまうことがあるのだ。



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これを湯に投じた瞬間、あざやかな緑色に変じる。同時におそろしいねばねば吹き出し、まな板を、包丁を、そして僕を覆っていく。


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刻むのが、難しいのだ。


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2010年3月2日の夕飯の一部だ。これだけを胃袋に押し込んでやると、米飯が入らない。晩飯の〆に必須だったどんぶり飯など、問題外だ。しかも噛んで噛んで噛み切りながら食べるから、時間経過とともに満腹感はどんどんふくれあがる。食後のスイーツなんて、まさかだろ? 


さて、僕のモヤシライフは、軽量化にどこまで貢献できるのだろうか?

by yabukogi | 2010-03-03 11:44 | 喰い物のこと


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